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フランス旅行記4日目
8月23日(火)

明け方4時ごろ、またしてもCちゃんがいろんなものを踏んだり蹴ったりしながら、トイレに向かう音で目が覚めた。
戻ってきて、ダブルベッド(ヨーロッパではツインルームはあまり見ない。同性同士で旅行しないから)にドスーン!と飛び乗ったので、私の身体も一緒に跳ね上げられ、今度こそしっかり覚醒してしまう。
しかも、ついでに、とばかりに、毛布をくるっと私から巻き上げていった(T_T)
うぉおおおおおーーーいい!!

6時50分起床。

昨夜は遅く帰ったせいでお風呂に入ってなかったので、バブルバスにしてお湯に浸かる。うーん、優雅な気分だわー。
お風呂から上がり、準備して朝食を食べにホテルのレストランへ行く。
ここの大きな窓から、海と牧草地が見え、すごく素敵な雰囲気。
朝早かったからか、客はまだ私たちだけだった。
マダムがにこやかにサーブしてくれた朝食は、コンチネンタルながらも、すごく美味しかった。
クロワッサン、アップルパイ、チョコレートパイ、フランスパンの入った籠。
ノルマンディーらしく、リンゴジュース(普通はオレンジだよね)。ドライと生のアプリコット。コーンフレークに、ヨーグルト、バナナとフランボワーズのソース。それに、たっぷりのコーヒーとミルク。

ううう、しあわせ…vv

朝起きたときはぱらついていた小雨が上がって、青空が見えてきた。
今日は、素敵な一日になりそう…!

実は、今日23日は、私の**回目の誕生日なのだ。
朝から、親や妹、友達やボスから、携帯にメールがたくさん届いていて、嬉しくなった。
みんな、わざわざ7時間の時差を計算して、送ってくれたらしい。
私は幸せものだ。
美しい朝食を楽しみつつ、幸せにひたっていると、Cちゃんが、おもむろにバッグの中から小さな包みを取り出して、「gucci(仮名)、誕生日おめでとう」と言った。
お、お、覚えててくれたんだ…!!!(感涙)

誕生日の話をしたことはあったけど、まさか、それを覚えていてフランスで祝ってもらえるなんて…!!
包みをあけると、Cちゃんとおそろいのハンカチと、手作りのメッセージカード。
嬉しくて、ちょっと泣けてきた。
ありがとうCちゃん!!
静かに寝ろよーとか思ってごめん!!(笑)

朝食を済ませ、このかわいいホテルを写真に収めるため、カメラを持って付近を散策する。

本当に、おとぎ話か海外の時代ドラマに出てくるような農家だなあ。


チェックアウトのとき、予想外に金額が安かったので、安いですね!とビックリしたが、なんのことはない、予約のときに、予約金として半分がクレジットカードで事前に取られていただけだった(笑)残念!

このときフロントのおばさんと雑談して知ったのだけれど、フランスではドル=ユーロの感覚らしい。例えば、100ドル=100ユーロ。
これにはちょっとビックリした。
日本人の感覚では、100ドル=1万円ちょっと、100ユーロ=1万五千円。
このホテルは200ユーロ弱なので、ここに泊まるアメリカ人より一万円くらい多く払っている計算。
相場の違いって大きんだなあ…ドル建てで払えばよかった。

車に乗り込み、昨日のオンフルールの町へ。
町外れの駐車場に車を停めて、町を散策する。
本当に、ディズニーシーのような美しい町で、でも、人々がちゃんと生活している匂いがある。景観を壊すようなネオンや派手派手しい看板はなく、あるものは昔のまま、あるものは使いやすく改装して、美しく保たれている。
石畳って実はすごく歩きにくいし、疲れるんだけど、そこをあえてアスファルトにしないところがヨーロッパの素晴らしいところだ。
靴屋さんには歩きやすいゴムのソールのハイヒールが並んでいた。

ふらりと入った雑貨やで、このキーホルダーかわいいねーと物色していたら、店のおじさんに「日本人?こんな時間にめずらしいね」とフランス語まじりの英語で話しかけられた。
おじさんによると、日本人は大体お昼頃に団体でわーっときて、すぐにわーっと去っていくのだそう。
おじさんは、二階と三階にも女の子が好きそうなインテリアグッズがあるから、見ていってvと薦めてくれた。
その通り、上階は素敵なフレンチシックな雑貨が盛りだくさんで、全部買って帰りたくなった!!
あーここに買い付けに来たい…!!!

しかし、残念ながら荷物になるので、泣く泣く碇型のキーホルダーだけを購入。
この店の近くに、お洒落でかわいいアンティークショップなどもあり、その道のマニア垂涎のアイテムがゴロゴロvv
しかも、日本で売ってるものに比べて、ばかみたいに安い!!
アメリカ人や現地のフランス人のマダムたちが、手にとってためつすがめつしていたので、私もつられて入ってみると、お店のマダムが「かわいいでしょう?全部アンティークなの。奥にもあるから、見ていってね」と優しく言ってくれた。
なんだなんだ、オンフルールの人たちはみんな親切で優しいなあ!vv

しばらく歩くと、かわいいお土産物やさんを発見。
ジャムや、ノルマンディー特産のソルトクッキー、塩キャラメルやカルヴァドス(リンゴの蒸留酒)、シードル(リンゴの発泡酒)が並んでいる。
お姉さんに薦められるまま、味見をし、ミルクジャム(甘〜いv)やルバーブジャム、クッキーをしこたま買い込む。
お、重!!

腕が攣りそうな重い袋を抱えつつ、ウインドウショッピングしたり木造の教会を見学などしていると、

楽しくて時の経つのを忘れてしまい、気づくと昼の一時を回っていた。
しまった、今日はモンサンミッシェルまで行かなくてはいけないんだった!

慌てて車に乗り込み、一路、高速道路でモンサンミッシェルへ。
途中、SAに寄り、給油とカンタンなランチ。
スモークサーモンのサンドイッチと、ジュースを買って、車の中で食べる。
なんでこんなところにアジア人が…という視線が痛い。

2時間弱で遠くにモンサンミッシェルが見えてきた。
これには、私もCちゃんも大興奮!
Cちゃんがナビをしている(ふりを)していたが、ここまでくればもうナビもいらない(ていうか高速なので標識だけ見て走ればいいのだ)。
ひたすらモンサンミッシェルを目指して進む。
そうして、ようやく、海の中にたたずむモンサンミッシェルへ続く長い道路を渡りきり、駐車場にたどり着くことが出来た。

駐車場は、すごい数の車でいっぱいだった。
フランスでも有数の観光地なので仕方がない。まだ週末でなかっただけマシというものだ。
少し離れるが車を停めることが出来、そこからモンサンミッシェルの寺院を目指して干潟を歩く。
この寺院、世界遺産にもなっているし、天空の城ラピュタのモデルにもなっている。テレビや雑誌でもおなじみの姿なので、二人とも感動して、ちょっと寺院が近づくたびに立ち止まって写真を撮る。

中へ入るまでにずいぶん時間がかかってしまった(笑)

城壁沿いに上部まで上がり、そこでチケットを買って中へ。
修道院を見学し、窓から干潟を散策している人たちを眺めて(この干潟、潮が満ちてくるスピードが速く、ガイドナシで歩くのはとても危険とか。昔はここに巡礼に訪れた修道士がたくさん海に飲み込まれて死んだらしい)出口へ。
他の多くの城や寺院と同じく、この寺院も、外から見てるほうが素晴らしい、というジンクスを逃れ得なかったようだ(笑)中はどこでも大体同じなのよねん…

帰りは城壁でなく、参道のような細い坂道を下って帰ることにする。
両側に小さな土産物ややレストランが並ぶ参道は、満員電車のような人ごみで散策どころではなく、押し合いへしあいしながら城壁の外へ抜け出た。
あとで思ったのだけれど、あの参道はどうも、善光寺の参道を思い出すな(笑)
道の両側で、そば饅頭やなんかをふかして、試食させてるかんじ。

駐車場に戻り、今日の宿、Chateau de Bouceelへ向かう。

モンサンミッシェルの島の中や、対岸にもたくさんホテルがあるにはあるけど、どこも観光地観光地していて、古かったり団体客ばっかりだったりと気に食わなかったので、今回は、モンサンミッシェルからは少し(18キロほど)離れるけど、安くて素敵なB&B(民家が部屋と朝食を旅行者に提供するシステム。日本でいう民宿?フランスではシャンブル・ド・オートという)にした。

だんだんと日が暮れる中、小麦畑やぶどう棚が広がる細い田舎道を走る。
もうミシュランの地図では道が載っていないので、私がサイトからプリントアウトしてきた詳細地図と小さな標識を頼りに進んでいく。
しばらくして夕日をバックに、小麦畑の丘に、大きな風車がたたずんでいるのが見えた。
なんてきれいなんだろう…!

道の端に、ちいさな看板が見え、フランス語と英語で、ナントカ風車と書いてあったので、地元のひそかな観光名所だったりするのかもしれない。が、すくなくとも、日本のガイドブックと、ミシュランのガイドには載っていなかった。
寄りたかったけど、これ以上日が暮れると宿にたどり着かなくなるかもしれないので、断念。
いつか、絶対に、あの場所に戻ってみたい…!

細い農道を進むと、ようやく、 Bouceel と書いた看板と白い門が現れた。
そのまま車で門をくぐると、さらに門から道が伸びており、はるか先に大きな大きなお屋敷が見えた。
すごい…まさに貴族のお屋敷だ(Bouceel家は12世紀から続く家柄。このお屋敷は1763年に建てられたもの)。かつては今通ってきた道に、馬車が乗り入れていたに違いない。

(写真は翌日に撮ったもの)

エントランスに車を停めると、玄関から、すらりと背の高い上品なおばあさんが出てきて、完璧な英語で「日本から来たgucci(仮名)さんね?道はわかった?」とにこやかに迎えてくれた。
スーツケースをおろし、早速お部屋に案内してもらう。

広々とした玄関ホールに面した階段を上ると、壁面にはさまざまな時代の衣装を身にまとった肖像画が飾られていた。

あとで聞いたところによると、この家にある肖像画は、全て、このお屋敷に住んでいたBouceel家の人々のものだそう。
それを聞いて、素晴らしいと思うと同時に、ちょっと背筋がゾクリとした。だって、何百年ですよ…

石造りの階段をあがると、2階は木製の床。
ながーーい廊下の左右に、ドアが並んでいる。
明かりは左右の大きな窓と、壁にポツンポツンと並んだ小さな真鍮の電灯のみ。
もう夕暮れがせまっているので、廊下はかなり暗い。
きっと、昔はここに壁掛けの燭台があって、灯がともっていたのだろう。

ぎしぎしいう廊下を進み、おばあさんが古めかしい金属の鍵を取り出して「Nelly」と書かれたプレートのあるドアを開けて、入って行った。
私達も中へ入ると、天井の高い広い部屋にベッドがふたつあり、天蓋がついている。

暖炉や、

文机、

大きなクローゼットもある。
全て、この屋敷で使われていたものとのこと。

おばあさんは、さらに奥のドアを開けて、バスルームを案内してくれた。
さらに驚くことに、バスルームの奥にもうひとつドアがあり、そこを開けると、4畳ほどの小さな部屋が現れた。
そこにはシングルベッドがひとつと小さな机が置いてある。
どうやら、小間使いの部屋だったようだ。
この部屋を使ったBouceel家の令嬢が顔を洗いたいときや世話が必要なとき、ここにいるメイドを呼んだのだろうか。
おばあさんは、ここもあなたたちの部屋だから、よかったらここに寝てもいいのよ、と言ってくれたが、ちょっとそれは遠慮したい…なぜって、それは、
怖 い か ら 。

ホントに、怖いのだ!
おばあさんが出て行ったあと、二人して部屋の中を探検したが、まず、部屋の中の肖像画。
3歳くらいの女の子、16,7歳の若い女の子、胸の開いたドレスを着た20代の美しい女性、帽子をかぶった中年の女性。
よく見ると、目鼻立ちが似ている。どうも、全て同じ人物を描いたもののように思える。
きっと、この女性の名前が「Nelly」に違いない。
どうみても100年くらいは前の人間に思えるこの女性は、この館で死んだんだろうか。もしかして、この部屋で…?

Cちゃんが文机の引き出しの中に、小箱を発見。
開けてみると、中には古い古い手紙の束が。
イタリアと思われる風景画や、人物の白黒写真も混ざっている。中身はフランス語なので読めないが、あて先を見るに、Nellyに送られたもののよう。
消印はやはり100年くらい前になっていた。


全部を開けて広げたがるCちゃんをたしなめて、丁寧にたたんで箱に戻す。
なんだか、Nellyに見られているみたいな気がした。
ベッドサイドのテーブルには、雑誌が積み重ねてあり、それも、よく見るととんでもなく古いもの。
戦闘機の絵が表紙になっていたりする。
これはきっとNellyのものではないと思うけど、この家で読まれたものなんだろう。
このお屋敷の歴史に感動しつつも、人や家具の思念のようなものに圧倒される。
なんだか、鳥肌がたちそうな…
と、突然Cちゃんがデカイ声で言った。
「なんか怖いね!!」

も、も、心臓止まるから、やめてくれ…!!!!


お屋敷の探検もしたかったけど、そろそろ夕食にありつくレストランを探しに行かねばならないので、身づくろいをして階下に降りる。
玄関ホールにさきほどのおばあさんがいたので、この近くにオススメのレストランはありますか?と聞くと、ちょっと待って、息子に聞いてみるわ、と奥へ入って口ひげをたくわえた威厳あるかんじのおじさんを連れてきた。

このおじさん、同じく完璧な英語で、どんなレストランが好みかな?と早口で聞いてきたので、ちょっと威圧感を感じつつ「え、ええと、フランスの料理で…」と答えると「当たり前だろう?ここはフランスなんだから!パリならともかく、こんな小さな田舎町にはフランス料理しかないさ!そうじゃなくて、高級なものか、中級か、リーズナブルなものかってことだよ!」。

そ、そうなんですか。
だってだって、日本じゃどんな小さな町にだって中華料理やもハンバーガーショップもおすし屋さんもあるだもん!…と言いたかったが、ここは黙ってたほうが得策と判断し「す、すみません、中級なレストランをおねがいします、サー!」と直立不動で答える。
あのときの気分、まさにウェルズリーの前に立ったシャーピーでしたとも…

おじさんはサッと奥へ入って行って、コピーした地図とレストランのパンフレットを持ってくると、テキパキと行き方を説明してくれた。

「このレストランはね、窓からモンサンミッシェルが見えるんだ。今日は天気もいいし、とても美しい夕焼けが見えるはずだ。ロマンチックだろう?きっと気に入るよ。このレストランのオススメはね、プレ・サレという羊肉のステーキで、この羊はモンサンミッシェルの干潟に生えた草を食べて育つから、ちょっと潮の香りがしてとても美味しいんだ」
おじさんは、私たちのために、レストランに予約を入れておいてくれた。

おじさんは、帰りが遅くなったときのために、と玄関の電子ロックの開錠コードをメモした紙を地図に貼り付けてくれた。
もし開け方が分からなくなったら、遠慮なくベルを鳴らしてくれればドアを開けに行くよ、とニッコリ。
話し方は威圧的だけど、なかなかどうして、親切なおじさんだ(笑)

もらった地図のとおりに細い農道や小さな村をくねくね進むと、ふいに視界がひらけ、延々と続く干潟の向こうに、夕焼けをバックに浮かぶモンサンミッシェルが…!


思わず、息をのむ。
ほどなく、ツタの絡まるオーベルジュ(ホテルレストラン)、manoir de la roche torin に到着。


入り口で、シャトーからご予約の方ですね、とウエイターが迎えてくれた。
テーブルにつくと、座ったままで大きな窓からモンサンミッシェルを黒く浮かび上がらせて沈んでいく夕日が見える。なんて、素晴らしい眺め。

フランスで最もポピュラーな食前酒、キールロワイヤルの当店風、というのを頼み、一番安いムニュを注文した。
前菜はムール貝と魚のスープ、

メインは(宿のおじさんがオススメの)プレ・サレ、

チーズの盛り合わせ(とはいってもブルターニュ地方でチーズといえばカマンベールなので、カマンベール三種の盛り合わせ)、

デザートはタルトタタンのカルヴァドスがけ。


雰囲気は最高で、味もよく(プレ・サレはマジうまかった…!)、量もたくさん!
すっかり満腹になってしまい、だらだらしていたら、あっという間に22時半になってしまった。
外は真っ暗。
車で来た道を引き返してシャトーに戻る。…が、あまりに田舎なので、シャトーまで街灯が全くない!(もちろん民家なんて当然ない)
頼りは、自分たちの乗る車のヘッドライトのみ…
中世に、森に住む魔物の話がたくさん生まれたわけがわかった気がした。

シャトーに着くと、窓の明かりは全て消えていた。
もちろん、玄関の明かりもない。
ふつふつと湧き上がる恐怖を押し殺しつつ、平静を装って「皆を起こさないように静かに入らなきゃねv」などとCちゃんにささやく。
と、先に車から降りたCちゃんが、ちょっと!と突然叫んだ。
「な、な、なに!?!」
ビクビクビクゥッ!とする私に、Cちゃんは上見て、上!と叫ぶ。
なんなのよ、もうーと言われるままに空を見上げると、そこには満天の星。
思わず、言葉を失うくらいの。

どれがどの星座、なんて判別できないくらい、たくさんの星が瞬いている。
私は大学時代の数年間を信州で過ごしたので、キレイな星空なんて見慣れていると思っていたけど、これは、レベルが違う。
まるで、プラネタリウム。ミルキーウェイまではっきり見える。
星の明かりで本が読めそうだ…

もちろん実際には文字なんて読むことは出来るわけもなく(笑)、どうやってメモされた電子ロックのキーを判読するか悩みつつ玄関の方に歩いていくと、突然玄関の明かりがついた。
どうやら、なにかのセンサーが感知して、電気がつくようになっているらしい。
コードを打つと、鍵が開いた。
これであのおじさんを起こさずにすんだ、と一安心(笑)

玄関ホールも、ひとりでに明かりがついた。
足音を忍ばせて部屋に戻り、部屋の肖像画を見ないようにしつつ、就寝。