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ベルギー・オランダ旅行記8日目

4月1日(土)

7時半に起床してシャワーを浴びる。
今日は、旅行最後の日、日本に帰国する日だ。

用意をして、朝食時間の9時を待って、キッチンに降りる。
今朝はテーブルに先客はなし。
椅子に座ると、隣の家から愛想のないアジア人の男性がとんできて、サーブしてくれる。
ツーブロックの髪型とひょろりとした体型、やや浅黒い肌の色から、タイ人と推定。もちろんタイにゲイが多いからっていうのもあるけど。
ちなみにもちろん彼は、昨日会った背の低いアジア人、ジェイソンの恋人らしい。

クロワッサンはまだ温かく、ハムやチーズも美味しくて、朝っぱらからたくさん食べてしまう。
ヨーグルトを食べていると、上の部屋から、身体の大きなアメリカ人の男性が「…おはよう」と降りてきた。
昨日のおしゃべりなイギリス人夫婦とは違って、あんまり話しかけてくれるなよ、というかんじ。
ムキムキの筋肉(&脂肪)、レスキューと書いたTシャツ、顔の下半分がヒゲ、にもかかわらず頭にはほとんど毛がなく、おおお、ワイルドだねおっちゃん!(笑)

おっちゃんはこのひょろりとしたアジア人に「おぅ、おめぇ昨日見たときと雰囲気違ってるな」とか話しかけている。
すると、アジア人「うん、昨日髪を切ったんだ」。

おっちゃん「どこで切ってきたんだ?」
アジア人「そこの角にアイリッシュがやってるヘアサロンがあるんだ。腕は確かだよ」
おっちゃん「ふーんなかなかよさそうだな」

アジア人「あなたもそこでヘアカットしてもらったら?
(もう一度言いますがこのアメリカ人、ハゲてます


するとおっちゃん、「いや、俺は自分で切ることにしてる


もー、gucci、吹き出さないようにするのに必死!
Rちゃんを見ると、同じく下を向いて笑いをこらえている。
真面目な顔で、なんつー面白い会話をしてくれるんだーーー!!!

アメリカ人はさっさと朝食を済ませ、じゃあな、と部屋へ戻っていった。

私たちも朝食を終え、宿代を清算して、チェックアウトする。
荷物を細い階段で運び降ろし、一階の玄関ホールに預ける。
ブラッドが現れ、「ワオ!ナイスな赤いスーツケースだね!」と褒められる。相変わらずテンションの高いひとだ…(笑)
ちなみに、私のスーツケース、リモワというドイツ製のもので、デザインもいいけどとにかく軽いのでお気に入り。去年フランスに行くのに使ったスーツケースは、かわいいけどあまりにも重いのに辟易して、一回使っただけでひとにあげてしまった;

ケンにB&Bの鍵を返すと、玄関ホール用の鍵をひとつ渡され、荷物を取りにきたときにテーブルの上に置いて行ってくれればいいから、と言われる。



トラムに乗り、国立美術館へ。
チケット売り場には長い列ができている。ようやくチケットを買って中へ入る。


Rちゃんはガイド(電話の子機みたいなやつ)を聞くというので、近くのゴッホ美術館も見たかった私は、待ち合わせ時間を決めて別れ、サクサクと見て回る。
レンブラントやフェルメールが見られて嬉しかった。両方とも、光と影の描写が特徴的だ。




(ちなみに上はフェルメールの2作)


貿易が盛んだったオランダらしく、船の模型や絵画もたくさん。これは、きっと貿易船の舳先。


こんなところに満腹ふとる…

小さな館内はすぐにまわることができ、私はどうしても見たかったゴッホ美術館へ向かう。
(ちなみにジモティはゴックと発音していた)

ゴッホ美術館はさらにすごい人だかり。
カラヴァッジオ展もやっていたからだろうか(もちろん私はカラヴァッジオを見に来たのです(笑))。
道路にまで人があふれていて、チケットを買うのに30分。
12時半までに待ち合わせ場所に戻らなくてはいけない私は、あせるあせるあせる…。

中に入ってまたびっくり。人人人…!

まずはカラヴァッジオ展へ走るも、人垣が絵の前に二重三重四重になっていて、とても絵の全体像を見るどころじゃない。しかも、結構デカイ絵が多いのに。

人波を押し分けて、絵の前まで行ってみたけど、首に剣が食い込むところを描いた場所しか見えなかった。それがまた生々しくてゲッとなる。

↑唯一、全体像を見ることができた絵。なぜなら、すごく小さい絵だったから。

もーいーや、とにかく、豆映画に出てくる絵だけ見れれば!と満員電車のような会場をジリジリ進み、横目で絵の上の部分だけ(下は人垣で見えない)を見る。
結果、

 豆 絵 、な か っ た …!

私の苦労を返せ…!!

がっくりしながら、せめてゴッホだけでも!とゴッホの部屋へ。

ここもすごい人・人・人…
絵から絵に一列に人が並んでいて、順番を飛び越そうものなら、全員ににらまれそうなかんじ。
列は一歩一歩ジリジリと進んでいる。
ま、待てるかこんなもん!!
列から離れたところから、隙間から見える絵の切れ端を鑑賞する(T_T)。
あっあ〜、あの絵、美術の教科書で見たことあるよ!たぶん。
絵は、時系列にそって展示されているので、だんだんゴッホが精神を病んでいく様子が感じられて、興味深い。

12時半になり、慌てて国立美術館前へ。
Rちゃんと合流し、トラムに乗ってB&Bに帰る。

スーツケースを引き取り、駅に向かう。
もう一泊していくRちゃんとは、ここでお別れ。またね!
駅の自販機にはオランダ語しかなく、切符を買うのに苦労していたら、障害者風の男が近寄ってきて、スキポール空港に行くの?なら、こうやって買うんだよと教えてくれた。わーい、親切な人だ!
無事に切符をゲットし、ありがとう、と去ろうとすると、男はおずおずと手を出してきて、small changeをくれ、病院に行きたいから、という。
そういうことか…と、がっくり。

まあ確かに助かったし、もうユーロもそれほど必要じゃないし、と切符を買ったおつりの1ユーロ20セントをあげた。
しかしなんか悲しいな…。

スキポール空港行きのホームに行き、ちょうど停まっていた電車に乗る。
発車してから、しまった、これはタリスだ、と気づいたけどもう遅い。検札が来たら新たに切符を買いなおそう、と覚悟していたけど、来なかった。ホッvおかげで予想よりも早く空港に着くことができた。

早速チェックインを済ませ、ゲートの中の広い広いショッピングゾーンへ。
残りのユーロを使ってチーズやソーセージを大量に買い込む。
ジュースの缶くらいの太さのソーセージや、トムとジェリーに出てきそうな黄色のチーズ。マスタードスープの缶詰。
とりあえず、全部重い

腕が千切れそうになりながら飛行機に乗り、アムステルダムからパリへ。
ほんの一時間ほどで到着してしまう。EU加盟国同士なので入国審査もないし、ほとんど国内線のノリだ。
チェックインをして名古屋行きの飛行機を待つ間、コーヒースタンドで飲み物を買う。

搭乗案内のあと、飛行機に乗り込むと、スッチーに「gucci様ですか?」と声をかけられた。
どうやら、二人連れの客が席が離れてしまい、一人で搭乗した私の席を譲ってもらえないかということらしい。
特にこだわりもないので了承すると、スッチーはエコノミーの一番前の窓際、しかも、隣の空いてる席に案内してくれたvv
ラッキー!
ここなら足も伸ばせるし、隣に肘もつき放題。かなりラクできそう!
いやあ、情けは人のためならずv

足を伸ばして離陸を待つ。
…と、そこへ、スタッフのような格好をした男性が息せき切って飛び込んできた。
もうすぐ離陸だってのに、なにがあったんだ??
と思ったら、その男性、まっすぐ私に向かって走ってくる!
そして、その手を差し出して、

「カードが落ちてました、マダム」。

見ると、手には私のクレジットカードが……・・・

ぎゃああああ!ナンデ?ナンデ?とうろたえる私に、男性は「I don't know.でもコーヒーショップの店員から預かりました」と…

わーすーれーてーたーーーーーー!(汗)
確か、小銭が足りなくてカードを出したんだった…
男性は、ボンボヤージュ!とさわやかに飛行機を降りて行ったけど、私は離陸してからもかなりあとまで心臓バクバクでした…;

ところで、離陸してしばらく経った頃。
折角空席だった隣の席に、フランス人の若い男性が「ここ空いてる?じゃあこっちに移ってこよう」とちゃっかり座ってしまった。
いわく、「僕、背が高いからあっちの席だとつらくてさ〜〜」。
うう、わかる。すごくわかるけど、折角肘を伸ばして休めると思ったのにぃー(T_T)

このフランス人、日本に行けるのが嬉しいのか、それとも日本人が好きなのか、やたらとちらちらこっちを見て、話しかけたそうにしている。
そしてついに、機内食が配られたとき「イタダキマース!」と両隣(窓際の私と、通路側のおっさん)に日本語でご挨拶。ついでに、コップを掲げて「カンパーイ」!
通路側のおっさんは苦笑い。

gucciはといえば…こういう状況でこういうひとをほっとけないのよね…かわいそうで、っていうか恥ずかしくて(笑)
諦めて、「日本語上手ですねえ」と話しかけてあげると、「スコシダケ!」と超うれしそう…。

拙い英語で(お互い様だけど)語ったところによると、彼は絵描きで、日本には個展を開きに行くらしい。
僕の本もあるよ!とバックパックから取り出して見せてくれた画集(?)は暗い雰囲気のイラストがマンガのコマわり風に並んでいて、最初からみていくと、ストーリー仕立てになっている。セリフのないマンガってかんじ?
正直、私はあまり好きな絵ではなかったけど、へえ〜いいね!と言っておく。
彼は、日本人は大好きだ、芸術に理解があるし、僕みたいな無名のアーティストにもちゃんとした個展を開いてくれるんだから!と言っていて、思わず、それはあなたが欧米人だからじゃないかなあと言いそうになったけど、彼の中のいいイメージを壊さないように、黙っておいてあげた(笑)
ちなみに、もらった名刺にあった彼のサイト

日本には大阪や東京で個展を開くために、何ヶ月か滞在する予定だけど、お金がないから移動はバスで、しかも泊まるところは旅先で知り合った日本人の友達のところに転がり込むらしい。
フランス人のアーティストくんは、機内食を完食したあと、「実はこれが今日最初の食べ物なんだ。お金がなくてなにも食べてなくて…もう一個もらえないか聞いてこよう」とスッチーにフランス語で話しかけて「ありません」と英語でピシャリと断られていた(スッチーはイギリス人だった)。
な、なんかアーティストっていうか貧乏美大生?(笑)

彼は、そのあともまだ話したりなそうにしていたけど、私は映画(三丁目の夕日)の続きが観たかったのでさっさとヘッドホンをつけて集中する。
頑張れ若造。

飛行機は無事に中部国際空港に到着。
こうして私のベルギー・オランダ旅行は幕を閉じたのでしたvv

これにて、旅行記・完!
今回も長々とお付き合いくださってありがとうございましたvv





おまけ。



美術館前の売店にいた、食べられるために自ら準備するソーセージ。哀れ。