君と願いと、そしてこれから。 (GetBackers/蛮×銀次) |
一月一日。 神社の境内は、初詣客で溢れ返っている。 そんな中、一際目立つ集団が、やはり初詣にと此処を訪れていた。 正月早々、暖を取るためにホンキートンクでくつろいでいた奪還屋の二人は、新年最初のコーヒーもそこそこに、いきなり店に入ってきたヘヴンに、無理矢理初詣に引っぱり出される羽目に陥ってしまったのだ。 ヘヴン曰く。 ここ2年ほどさっぱり恵まれないままの金運を、今年こそは大幅アップ!といきたいところなのだが、自分の金運を、それこそ地を這うほどに下げてしまった元凶をまずどうにかしなければ、自分だけが頑張ったところで埒があきそうにない。 つまり、貧乏神に好かれっぱなしの蛮と銀次を、先にまずどうにかしなければ――という結論に達したらしい。 そこで、"なぁんで、このオレ様が神サマなんぞに頭下げなきゃなんねーんだ!"と抵抗する蛮を、ずるずると引き擦るようにして、"いざ初詣!"と気合い充分に店を出たところ、たまたま年始の挨拶に訪れた花月と十兵衛、士度とマドカ、それに卑弥呼という面々とばったり出くわしたというわけなのだ。 かくして。 まったくもって、不本意ながらも。 同業者が見たら、かなりぎょっとしそうな顔ぶれの、大層目立つメンバーでの初詣が敢行されることとなったのだ。 「だ――! ああ、もう! だーから、こういうトコ来るの嫌だっつーんだよ! どこ見てもヒト、人、人でよ! うっとおしいったらねえ!」 「文句言わないの、蛮クン! 今年も一年中金運に見放されたくなかったら、しっかり拝んどいて頂戴よ!」 「なーんで、オレたちの金運をテメエに心配されなきゃなんねーんだよ、ヘヴン!」 「あーのねえ。アンタ達が金運ないせいで、一緒に仕事してるコッチまで最近お金に縁遠くなってくきてるんだからね!」 「縁遠くなってんのは、男運だろうが? ソッチの方をせいぜい祈願でもしとけや。ま、無駄とは思うけどよ」 「なーんですってえ!!」 「ま、まあまあ、蛮ちゃんもヘヴンさんも」 前後で激しく言い争う二人に、ついつい周囲の視線を感じて、銀次が困った顔で慌てて取りなす。 その後ろで、シャンと鈴の音を響かせて花月が言った。 音色がいつもと違うのは、きれいに結い上げられた黒髪の、その髪飾りについている鈴が奏でたものだからだ。 「そうですよ。カミサマの前に来てまで啀み合わなくても。それに、こういうのも悪くないじゃないですか、美堂くん。せっかくのお正月なんですから」 「あぁ!? つーかよ、絃巻き。なんだよ、その格好はよー! 新年仮装大会かってぇの」 「無礼だぞ、美堂!」 「まあまあ十兵衛。着物のことですか? 一応、しきたりですからね。風鳥院流の」 「きれーだよねえ、カヅッちゃん」 思わず溜息混じりに花月を振り返る銀次に、少しはにかんだように花月が笑う。 「ありがとうございます、銀次さん。もっとも、僕もお正月に、こうして着物なんて着るのは久しぶりなんですけど」 「そうなの? でもすごい似合ってるよ、さすがだねー」 「アホか、オメーは! 野郎の着物姿にうっとりしてんじゃねえ!」 「いたっ! もお、お正月まで殴るんだからー!」 「うるせえ」 店を出た時は隣にいたはずの銀次が、いつのまにか自分の真後ろにいるため、少々話しにくそうに蛮が肩越しに銀次を睨む。 銀次がそれに、無邪気に答えた。 「けどさ、お正月っていいよねえ、蛮ちゃん! 女の子の着物姿いっぱい見られてさ。マドカちゃんもヘヴンさんも、それに卑弥呼ちゃんも、すっごいきれいだしー。美人ばっかで、なんかオレたちやたらと周りの注目浴びてるもんね!」 「ばーか。何デレデレしてやがんだよ、ったく! それにしてもまあ、他のヤツはともかく、オメーのはまるきし七五三みてえだなー」 蛮にニヤリとされ、その隣から、着物姿の卑弥呼が怒ったように声を荒げる。 「ちょっとお、蛮! 七五三って何よ!」 「なんだよ、本当のことじゃねえかよ。ま、馬子にも衣装ってことも無理すりゃ言えなくもねえけど?」 「失礼ね! だいたい何よ、アンタこそ! ちょっとはお正月らしい格好でもしたら?!」 「なんで正月早々、テメエとチンドン屋の真似事しなきゃなんねえんだよ!」 「誰がチンドン屋よ――! このお、火炎香っ!」 「うわあちち! 何しやがる、このアマ〜〜!」 「フンだ、いい気味よ! ばーか!」 「あ、あの…。蛮ちゃ〜ん。卑弥呼ちゃんも。みんな見てるよ、ねえ〜」 「うるせえ!」 「うるさいっ!」 止めようとした銀次が、二人の剣幕に肩を落とし、はあ〜と思わず大きな溜息をつく。 「だーいたいアンタこそね!」 「イテっ! 足踏んづけんじゃねえよ! このじゃじゃ馬が!!」 「知らないわよ! 人が多いんだから、しょうがないでしょ!!」 「あーもう、喧嘩しないのよ、二人とも! ったく、新年早々仲がいいというかさー」 「バカ言ってんじゃねえぞ、ヘヴン!」 「そうよ! アタシとコイツのどこが仲いいってのよ、仲介屋!!」 「だってさ、アンタ達って、結構息が合ってるっていうかさー。ねえ、銀ちゃん」 「え…! う、うん! そうだよね! 本当になんか、息ぴったりっていうか…」 ヘヴンにいきなり話を振られ、銀次がちょっとぴくりとしつつも、慌てて同調する。 言葉は、少々尻窄みになってしまったけれど。 「テメエまで、何言ってんだよ銀次!」 「そーよ! だいたいねえ、アタシはこのバカのせいで…! きゃ…」 「誰がバカ… おい!」 ちょうど神殿の前の石段を五段ばかり上ったところで、卑弥呼が片足を踏み外してぐらりと背中から倒れかかる。 バランスを崩して転落しそうになるところを、蛮の両腕が伸ばされ、寸でのところでその身体を抱きとめた。 「おっと」 「あ、ごめん…!」 蛮の胸に顔を埋めるカタチになって、卑弥呼の顔がみるみる真っ赤になっていく。 蛮は、卑弥呼の両肩を掴むようにしてしっかり立たせると、"…ったく"と拳でコンとその額をこづいた。 「慣れねえモン着てくるからだっての、バーカ。…大丈夫か?」 「う、うん。ありがと、蛮…」 先ほどとは別人のように、頬を染めてしっとりと蛮を見上げる卑弥呼に、その数段下から二人を見上げていた銀次の胸がちくりと痛む。 ――ワカっては、いることだけれど。 「蛮ちゃんと卑弥呼ちゃんってさ。こうして見ると…。お似合いだよね、なんか、さ…」 「そうねえ。ま、喧嘩するほど仲がいいとも言うしねー」 「うん…。そうだよね」 「ん? どうしたの銀ちゃん?」 「え? あ、うん。何でも。本当にそうだなあって」 「うん。あ! そんなことよりも金運金運! ここ商売繁盛のカミサマだからね! みんなしっかりお願いしておいてよ、御利益のあるようにね!」 「ああ!? おい! まさかその分、テメーの仲介料もアップしようってんじゃねえだろうな?!」 「あったりまえでしょー! 大きい仕事取ってきて欲しかったら、仲介料ぐらいケチんなっつーの!」 「何言ってんだよ! テメーの取ってきたロクでもねえ仕事のせいで、いっつもオレらは死にかけるんじゃねえかよ! これ以上、仲介料ふんだくられてたまるかっての! なあ銀次!」 「――え?」 「銀次?」 「え、ああゴメン。なんでもない」 「どうしたよ?」 「あ、うん。なんか人が多くて、ぼうっとなっちゃって」 「ったく――。ボケっとしてっと、テメエまで石段転げ落ちるぜ?」 「ちょっと、アタシが転げ落ちたみたいに言わないでよ」 「オレがいなきゃ、落ちてたじゃねえかよ。感謝しろっての」 「あーん、もういいから! 喧嘩してないで、さっさと拝むのよ。ほらっ」 「はいはい。わかったわよ」 「銀ちゃん? 大丈夫?」 「あ、ヘヴンさん。――うん、平気」 大鈴の前に並んでいる人の後につき、銀次が小さく溜息をつく。 なんだか、心が重い。 理由は明白。 まいったなあ。お正月早々――。 自分を誤魔化すこともできないくらいに、はっきりした思い。 でも、それは嫉妬とかじゃないと思う。少し違う。 卑弥呼は蛮にとって、妹のような大切な存在で、守りたい人で。 でもそれは、自分にとってもそうだと思う。 妹とかいう、親密な関係ではもちろんないけれど、守ってあげなきゃならない人だって思っている。 それは、蛮にとって大切な人だからとかそういうことでなく、銀次個人として。 いつも一人で気を張りつめている風な彼女を、放っておけないと思っている。 自分に守られることは彼女にとって本意じゃないと知ってはいても、たぶん、自分はそれでも卑弥呼を守ろうとするだろう。 特に理由を問われると、自分でもわからないのだけれど。 どこか、蛮や自分と、似たようなものを背負っている気がするから。 ――だから。 ただ…。 彼女と蛮を見ていると、どうしてだか、少しだけ自分の自信が揺らぐ。 蛮の隣にふさわしいのは、もしかしたら自分じゃないのかも、とか。 一緒に歩くべき人は、他にいるんじゃないか――とか。 (それが卑弥呼であるとか、そういう事ではないのだが) ああ、もう。 まだまだだな、オレ――。 「銀次さん?」 「え? ああ、カヅッちゃん」 「鈴、鳴らさないんですか?」 「ん? ああ、そうか。えーと、お賽銭投げて、と。…それにしても、どうして鈴なんて鳴らすのかなあ」 「ああ。昔から鈴の音には"邪悪なものを祓う力"があると言われているからでしょう。それと、"心をひきつける力"と」 「心?」 「澄み切った鈴の音で、神様の御霊をひきつけ、御神徳を得ようと考えられたようですよ」 「そうなんだ」 その言葉に、何か励まされたような気分になって、銀次がしゃきっと顔を上げる。 よーし! しっかりしろ、オレ! いきなり、パァン!と両手で自分の頬を叩くなり、ガラガラと勢いよく鈴と鳴らす銀次に、左右で拝んでいた人がぎょっとしたようにそれを見る。 二拝二拍と、教えられた通りにやってみた。 心の中で、願いごとを告げる。 蛮ちゃんと、ずっとずっと一緒にいられますように。 そして、自信をもってその隣にいられるように、オレがもっともっと強くなれますように。 ………。 そう願ってから、あ、間違えたと思い直す。 いけないよね、なんか、そういうのって。 ええっと、なんて言うんだっけ。こういうの。 タレキホンバン? あ。他力本願だっけ。 訂正できないのかな? やりなおしとかは…。 ま、いいや。 とりあえず、やりなおそう。 オレ、もっともっと強くなりますから、蛮ちゃんとずっとずっと一緒にいますから! 自信もてるように頑張りますから! そこからどうか、見守っててください!! ――って。 ん? …なんか、微妙にお願い事じゃない気もすっけど。 まーいいか。 こっちのが、やっぱ、オレらしいし! 「さあって、と」 すっかり商売繁盛なんてことは忘れ、個人的な誓いを立てただけで、最後にぺこりと一礼してそこを離れ、銀次がくるりと踵を返す。 長々と拝んでいたせいで、皆から大幅に遅れていることに気づき、慌てて石段の下で待っていてくれる皆のところまで、人の波に押されながらもやっと辿りつく。 「わー、ごめん! みんな、お待たせ!」 「行くぞ!」 銀次が追いつくのを待って、蛮が再び先頭をきって歩き出す。 その横に卑弥呼、後ろにヘヴン。さらにその後に花月と十兵衛が並び、一番後ろに、来た時と同じく士度とマドカがいる。足下には、盲導犬のモーツァルト。 その後ろに追いつくと、士度が振り返って言った。 「えらく熱心に拝んでたな? 銀次」 「え、ああ、まあね」 「しかしな。お前が、いくら一生懸命拝んでもよー。美堂の浪費癖が直らねえことにはな。金運もそりゃ逃げていくさ」 「え? ――あ゛」 「ん?」 「金運のコト、お願いすんの忘れた…」 「は?」 がっくりと肩を落とす銀次に、士度があきれたような声を出す。 「もう、ホント。オレって今年もドジ…」 「何かわからねえけど。まあ、そう気を落とすなって」 「うん、ありがと。士度」 「…ああ、それにしても、なんかえらく人が多くなってきやがったな。マドカ、オレの腕に掴まれ」 「はい、士度さん」 確かに、来た時も大層な人出だったが。 帰りはその倍以上に、人が多くなった気がする。 人の波をうまく歩くのがもともと苦手な銀次には、どうにもこうにも歩きづらい。 いつも蛮と歩く時は、前からきた人に肩をぶつけられ押し戻されそうになるのを、たえず蛮の腕が気遣って助けてくれるのだが。 今日は、そうもいかないから。 とにかく、士度たちから遅れないようにと頑張るが、まるで溺れでもしているかのように、銀次は前方からの人の流れに揉まれて押し戻されてしまう。 蛮の背中は、遙か前だ。 呼ぼうにも、これでは声が届きそうにない。気が焦る。 うわ。どうしよう。 置いてかれちゃう…! 思った途端。 先頭を歩いていた蛮が、ぴたりとその歩を止めた。 「わ、どうしたのよ、蛮くん! いきなり立ち止まらないでよ!」 その背中で、思いきり前につんのめったヘヴンが不平を漏らすが、そんなことはお構いナシに、蛮が遙か後方を睨むようにして振り返る。 大声で呼んだ。 「銀次!!」 周囲の参拝客が一瞬シン…となるほどの迫力に、銀次がぎょっとし、焦ったように返事をかえす。 「え…! は、はいっ」 その返事にカブるように、さらに蛮の怒号が飛んだ。 「後ろでちょろちょろしてんじゃねえ!」 「あ、ご、ごめん!」 驚いて、わたわたと謝る銀次に、コートのポケットに両手を突っ込んだまま、蛮が振り向いたまま苛立たしげに溜息を一つつく。 そして、コートから右手を出すと、真っ直ぐに銀次に向けて差し伸べた。 「さっさと来い!」 「え…っ」 力強い声に押され、サッと人の波が二手に割れ、銀次の前に道をつくる。 何が起こるのかと向けられる、好奇の目をものともせずに蛮が怒鳴った。 「気になってしようがねえだろうがよ! テメエは前に来い!」 「あ、あの」 「早くしろ、銀次!」 「あ、うん―」 "す、すみません!"と恐縮しつつ、銀次がその人の間を擦り抜け、蛮の差し出された手に自分の手を差し伸べる。 その手が蛮の手の中にぐっと捕まれ、強い力で引き寄せられる。 えっ?と思う間もなく、空いている方の手が銀次の頭をぽかりと殴った。 「このバカ!」 「いてっ!」 思わず首を引っ込める銀次に、蛮が表情をやや崩したため、とりあえずは何でもないのかと判断したらしい人の波が、またゆっくりと動き出す。 「ったく! ただでさえ迷子になりやすいんだからよ、テメエは! 一人で後ろに行くんじゃねえ!」 「う、うん」 「行くぞ」 そう声をかけ、銀次の手を掴んだまま、蛮が大股に歩き出す。 「あ、あの。蛮ちゃん、手…」 手を掴んでいるというよりは、どう見ても、しっかり繋いでいるようにしか見えない状況に、銀次が気恥ずかしさに頬を染め、上目使いに蛮を見る。 それに、にべもなく蛮が答えた。 「こんな人込みの中でテメーに迷子になられちゃあ、探せもしねえだろが! このままで構わねえから、しっかり握ってろ!」 「…う、うん」 確認のように、蛮の手の中でぎゅっと手を握られ、銀次がさらに頬を赤らめる。 大きくて、あたたかな手。 人前で手を繋いだことなど、当然無いが。 二人でいる時、特にスバルの中にいる時などは、照れくさそうに、こんな風に繋いでくれることがたまにある。 ただ手を繋いでいるだけなのに。 なぜだか、銀次はそれだけで、嬉しくなって。 すごく、安心できてしまうのだ。 この世で何一つ、心配することはないのだと。 こうして二人でいられるのなら。 怖いものなど何もないのだと、本気でそう固く信じられもする――。 無言で歩いた蛮が、ぼそりとこぼすように言った。 「つまんねーことに気ぃ回すな。このボケが」 「…蛮ちゃん」 突然の言葉は核心をついていて、銀次が驚いたように瞳を見開いた。 その表情を見ず、前を睨んだまま蛮が言う。 「テメエが選んで、此処にいんだろ?」 「え?」 「オレの隣に、よ」 「――うん」 「だったら、ずっと此処にいろ!」 「蛮ちゃん」 「テメエが此処にいる限り、誰も隣にゃ並ばせねえ」 言って、それからゆっくりと銀次に視線を映す。 「だからテメエも―。オレ様に断りもなく、誰かに此処を譲るなんてぇのは、絶対許さねえからな!」 「蛮、ちゃん…」 そして――。 言いたいだけ、言うと。 恐ろしくやさしい目をして銀次を見、最後に告げた。 「オレも、テメーがいいんだよ。隣がテメエじゃねえと、どうにも落ち着かねえ」 蛮の言葉に、銀次の眦が赤く染まってくるのを見つめながら、蛮が繋いでいる銀次の手をぎゅっと握る。 「だから。手、離すな」 「ん…!」 「離すなよ」 「うん!」 なんだかぶっきらぼうな言葉だけなのに。 胸の奥がじんと熱くなって。 涙までこぼれそうになって。 それはさすがに、唇を噛みしめて、どうにかこうにか堪えたけれど。 それでも何か話そうとすると、ふいにこみ上げてきてしまいそうで。 だから、伝えたいことがたくさんあるのに、どうしても言葉には出来なくて。 銀次はただ答えのように、ぎゅっと強く、蛮の手を握りしめた。 その懸命な瞳に、蛮が包むように笑む。 そして。 "ああ、わかった…"と、耳元でそっと囁いてくれた。 お願い事は――。 やっぱ、ずっとこの手を繋いでいられますように、にしたらよかったかなあ。 あたたかい手に心まで包まれている気になって、銀次が蛮を見つめて微笑む。 「ああ、それにしてもよー。テメーのせいで、金運がどーたらっつーの、拝み損ねたじゃねえか!」 「あ。じゃあ、何お願いごとしたの? 蛮ちゃんは」 「知るか。賽銭投げて、鈴鳴らしただけだ。願いごとなんぞ、ハナっからする気なんかねえしよ」 「そうなの」 「オメーは、ちゃんとしたのかよ」 「あ! でも、オレも…。金運とか商売繁盛のコト、お願いし忘れちゃったー」 「――あ゛?」 「あ、あはは」 「ってことは――。今年も、ビンボー決定ってか、オレら」 「そ、そうかも…」 やれやれと頭を抱え込む蛮に、すこぶる嬉しそうに銀次が言う。 「ま、いいじゃん! ビンボーでもさ、幸せのがいいもんv」 「アホ、"金があって幸せ"が一番だろうが!」 すぐさまそう切り返したものの、蛮に手を繋いでもらっているというそれだけで、もう嬉しくて嬉しくてたまらないという銀次の顔を見るや。 大きく息を吐き出しながら、目を細めて蛮が笑った。 「ま、いっか―。確かに、金じゃ買えねえモンもあるからな――」 END ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ なんのかんの言いつつ。ラブラブな二人(笑) ひさしぶりにこんなにたくさん一度に主要キャラを出してきたもので。 台詞書くだけで、結構大変でした。 でも、二人っきりの話もいいけど、こういう他の目があるなかでいちゃつくっていうのも、 また書いてて快感でした(v) 楽しかったvv そして、卑弥呼ちゃん…。すまぬ。 ブラウザのバックでお戻りください。 |