「Symmetry 2」
(一輝v瞬+蛮銀パラレル)






「あ、蛮ちゃん! 蛮ちゃんこそ、どこ行ってたんだよー。オレ一人じゃ、地下の入り口なんて、どこにあるかワカんない…」
「だーかーら! ここでちっと待ってろって言ったろうが! わずか5分ぐれえが何で待てねえんだ、このアホは!」
「えー、だって、オレ時計持ってないしー」

拗ねたような口調になる銀次をちらりと見上げながら、瞬がその前の青年と見比べる。

なるほど、これが"蛮ちゃん"?

切れ長で、深い綺麗な瞳の色をしている。
まるで吸い込まれてしまいそうな…。
一見冷たそうだけど、きっと根はやさしいんだろうな。
だって、この紫紺の色は、少し暖色の方が強い。
"銀次さん"を映している時は、そういう色をしているもの。
あ、もしかして。
映す相手によって、その色彩が変わるのだろうか。
そう思い見つめていると、ふいに瞳の青色が濃くなった。


その視線が"何だ"というように剣呑として自分に向けられても、まだじっとその瞳にうっとりと魅入っている瞬に、蛮の方が少々当惑したような顔になる。
小さく舌打ちすると、フッと視線を逸らした。
瞳を覆い隠すように、サングラスを右手の中指で少し持ち上げる。


銀次と同じく、真っ直ぐに自分の眼を見つめてくる稀な存在がなんとなく気にはなったようだが、ゆっくり関わっていられるほど、そんな悠長にしていられる時間はないようだった。
肝心なことを思い出した、というように、やおら銀次の腕を掴む。


「ああ、そーだ! もう、時間ねえんだ! オラ行くぞ!」
「うん! って、蛮ちゃん! どしゃ降りなんだけど〜! 傘は!? ねえ傘は?!」
「んなもんねえっての! とにかく、地下の入り口まで走れ!!」
「え〜〜。もうー! どうせだったら、傘持って迎えにきてくれたらいいのにー!」
「文句抜かすな! んな暇ねえっての! おら、さっさとしろ!」
「は〜い」

口を尖らせつつ返事を返し、どしゃ降り雨の中に引っぱり出されると、顔を顰めながらも少し走って、銀次がくるりとまだ雨宿りをしている瞬を振り返る。
「じゃ、ごめん! これ必ず返すから! 悪いけど、名刺に書いてる店に来てね! 絶対だよ!」
「あ、ええっと、でも…」
困ったように返事を濁らせる瞬に、行きかけた銀次がまた振り返る。
「あ! 名前聞いてなかった!」
たぶんもう会えないだろうから、別に教えることもないかなと思うのに、その笑顔と言葉の勢いにつられて反射的に唇は名を答えていた。
「え…。あ、瞬です」


「んじゃ、瞬くん! またね!!」


雨に負けない、太陽のような笑顔でそう答えて手を上げ、"さっさとしろ!"とせかす蛮の背を追いかけて、銀次が駆け寄っていく。
隣に並ぶなり、蛮にぽかりとやられるのを、瞬がくすりと微笑みながら見送った。

蛮が、前を開けた自分のコートの裾を広げて銀次の頭に掛け、雨から守ろうとするようにその身体を抱き寄せる。
それを見るとはなしに見てしまい、瞬が思わず、ぽっと頬を赤く染めた。
見てはいけないものを見てしまったような、それでもあまりの仲睦まじさに、微笑ましいような気分にさえなってしまう。


――また、会えるかな…。


思い、手の中に大事に握っていた名刺に視線を落とした。







…ふいに。

その上に、背の高い影が落ちてくる。


思わず、驚いたように上げられた視線は、一瞬で、ふわあっとやわらかなものとなった。
大輪の白い花びらが開いたような、そんなはなやかな微笑が瞬の口元を彩る。
呼ぶ声は、殊更に甘かった。





「一輝兄さん…」
















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