ゆめをみた。 『彼』は、戦っていた。 たったひとり。 休まず、眠らず、泣くこともなく。 ただ、ひたすら。 痛みも、孤独も、悲しみも、そこにはなくて。 ただ、あるのは、胸を突き破るような、凶暴な怒りのみ。 その怒りが、身体を満たして。 それがすべてになってしまうと。 『お前』はなくなる。 この世界から、消えてなくなる。 だから。 ――先に征け、今のうちに。 そう言って、 『彼』は、純白の丸い大きな卵の中に、 『俺』を匿い、 水底へと落とした。 深く、深く。 いつか、その時がきて。 もし、まだ、この肉体が朽ち果てずに在ったなら。 此処へ、必ず還っておいで。 必ず、きっと――。 還ってきて。 そう言うと。 『彼』は、泣いた。 ずっと待っていた。 羊水のような、あたたかな水の中に、浮かんで沈んで遊びながら。 時にそこは、灼熱のように熱く、凍えるように寒くなったりもしたけれど。 堪えて。 いつか、誰かが見つけてくれるのを、俺は待った。 …だれか。 だれか、どうか。 どうか俺を。 あたためて。 孵化させて。 どうか、お願い。 俺を、あたためて。 そして。 ――この世界に、孵して。 そうして。 随分と長い時のあと。 願いは叶った。 まるで羽毛にでもくるまれているような温かさに包まれて、 ほんの僅かに持ち上げた、睫毛の狭間から見えたものは――。 大きなあたたかい掌と、 そして。 きれいな。 とてもきれいな、紫の瞳だった――。 |