メッセ-ジありがとうございましたvv






「休日」




「ねえ、兄さん」
「どうした、瞬」


「神々との闘いが、我々人にもたらしたものって、結局何だったんでしょうね」


アルテミスが去り、平穏が戻った聖域を見つめ、瞬がおごそかに兄に告げた。
やさしい風が、瞬のさくら色の頬をかすめ、碧の細い髪をなびかせる。
振り返る視線の先で、兄が、弟の眩しさに目を細めた。

「さあな。そんな答えは誰にもわからんさ。だが」

一輝が歩み、神殿の前に出来た浅い水場に、白い足先を浸す弟に近づく。
足元で、ぴしゃりと水が跳ねた。
その様を、女神より美しい汚れなき微笑で、うっとりと瞬が見つめる。

「ただ1つわかることは。天地は万物の逆旅、ということだ。それは人だけでなく、神も変わらん。偶像化した神など、人にすら劣る。己らを忘れて、人が平和に楽しく暮らしているのが許せんのだろう。だから、闘いを起こしたがる」
「月に叢雲花に風、ですね。それは神も同じなのでしょうか」
「そうだな。そして、それを人が愚かしい所為とほざく。堂が歪んで経が読めぬ、というだろう。統治もせずに、人のせいばかりにして動かぬ神では、世が荒れてもいたしかたない」
「神に、もともと力が無いからだと? 千慮の一失、ではなく?」
「干天の慈雨を可能にしてこそ、有能な神と呼ばれるだろうが。それでも、桃李言わざれども下自ずから蹊を成す、だ。上に立つ者に、人だの神だのは関係ない」
「兄さんらしい」
「お前は、どうだ?」
「僕は、善と責むるは朋友の道なり、だと思っています」
「友人か、なるほど。神も人もなく共に歩むか。しかしな、瞬。それがために、他人の辿気を頭痛に病むというのは感心せんぞ」
言って、大きな手が瞬の少女のような頬に寄せられる。
瞬は、それに驚いたように瞳を見開くと、すぐやわらかな笑みに戻って、その手を細い指で掬い上げ、甘えるように自分の頬を押し当てた。
「そんなことは、ありませんよ?」
「そうか?」

「心配症ですね…」

それをおだやかな両眼で見下ろして、一輝が呟くように告げた。
「当たり前だ」
見上げる瞬が、花びらがこぼれ落ちるような笑みを返して頬を朱に染めた。


「兄さん…」















「どうでもいいけどさ、オレ、アイツらが何しゃべってるのか、ぜんっぜんわっかんねーんだけど!」
「お、オレもだぜ。星矢。アイツら、アレで日本語しゃべってるんだよな!」
「そ、そうだと思うぜ、邪武」
「お前たち、少しは諺ぐらい知っておいた方がいいぞ。よし、俺が中国故事を教えてやろう」
「はあ?! なんで中国なんだよ、紫龍!」
「いや、中国に古くから伝わる話で…」
「いや、もういいって!」
「小難しい話は、オレたちには向かないんだって!」
「まあ、聞け。星矢、邪武」
「いいってば〜、紫龍!」


「まったく、変わった奴らだぜ」



「「…お前が言うことじゃないと思うけどな。氷河」」










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