「Escalation」







迸ったものをすべて飲み干し、蛮が上にせり上がると、銀次は頬を真っ赤に染めて、涙目になり、ぐったりしていた。

息がかなり弾んでいる。
そして、その息に混じる台詞がなんとも憎たらしいやら、可愛いやら。


「はぁ、はぁ…。もう、ば、ばか…っ!」


涙に濡れる頬にキスしようとして、蛮が眉間に皺を刻んだ。
「テメエなぁ…! ヒトにイかせてもらっといて、ばかばか言うな」
恨めしげな涙目が、蛮を見上げる。
「だ、だって…。口でされんの… 恥ずかしいから、ヤだって、言ったじゃん…」
「もう遅ぇつーの。それにテメエ、すげえ感じまくってたじゃねえか」
「う、うるさいっ! もうっ、ばかっ!」
「まだ言うか」


しかし反論もそこまでで、枕に片頬を埋めて、くたーっとなってしまう銀次に、蛮がそれを見下ろして心底困ったように笑んだ。



「…続き。いけそうか?」

その言葉に、潤んだ琥珀をゆっくりと動かし、銀次が蛮を見上げる。
もちろん、これで終わりじゃないことは知っている。
そのため、気遣われていることも。


「……ん」
「久しぶりだかんな、ちょっとキツいぞ」


髪をやさしく撫でてくれる蛮の手は、銀次を本気で心配してくれている。
ゲンキンなもので、銀次にはそれだけで充分に嬉しい。
だから、小さく笑んで応えた。


「……ん。平気」


肩を抱くようにされて、涙の溜まる眦にキスをされて、銀次が捩っていた上体を元に戻した。
真下から、蛮の紫紺を見上げる。


「銀次…」
「うん…?」
「なるべく無茶しねぇように、手加減はするつもりだけどよ」
手の平に、銀次の両頬が包みこまれる。

「蛮ちゃん…?」
「それも、ちっと」

戸惑い気味の、蛮の笑みと口調。


「無理っぽい、かもしんねぇ」


くす…と、銀次が小さく笑った。

そんな風に言われて、じゃあヤダ、なんて言う筈も思う筈もなく。
自制が効かなくなるほど望まれているという事実は、銀次を心から嬉しくさせる。


"ばかばか"言い過ぎたことは、一応、心の中で反省しておこう。