■ DOUBLE DESTINY 4




蛮ちゃん…と、うっとりと形取られようとした唇は、だが、次の瞬間、真一文字に結ばれた。
瞳が突然に、キッ!ときつくなる。



「蛮ちゃん! どいて!!」

「――あぁ!?」


言うが早いか、蛮を押し退けるようにして、その背後の空に跳び上がる。
そして、即座に電撃を放つ銀次に、蛮が面食らったように肩越しにそれを見上げた。


「コラァ、てめぇ! どいてはねえだろうが、どいてはよ―!
 いったい誰のおかげで生き返ったと思っ…!」
「あんがとー! 蛮ちゃん! またその話は後でゆっくり!」
「あー?!」



それだけかよ?



ボーゼンと、駆けていく銀次の笑顔を見送り、まあいっかと易々と許し、溜息をつく。


しょうがねえ。
止めたって、どうせ聞きやしねえ。
まあ、ソッチのが銀次らしいしよ。


「ったく。あンの、はねっかえりのカミナリ小僧が!」
軽く舌打ちして、フッと笑む。
 

「ルナ!!」
「――!」
銀次の叫びと、突然現れたその姿に、ルナが驚きの余り、攻撃の手を止めた。
「おやおや、今度は正真正銘の"天野銀次クン"ですか?」
言いながらも、間髪も入れずにルナに剣を振おうとする赤屍に、銀次が、その間を電撃を放ちながら駆け抜ける。

「どけェ、ジャッカル!!」
そこに飛んできたメスを、ルナを抱き寄せるようにしてかわし、銀次が猛然と赤屍に挑んでいく。
「大丈夫!? ルナ!」
茫然としているルナを振り返り、言う。
「助けにきてくれたんだ! ありがとう!」
その笑顔に、ルナがさらに固まった。
「……っ」
「うん、わかってる! 心配してくれたんでしょ? けど、もうオレ、全然何ともないから!」
「……」
それでも物言いたげなルナに、銀次が"だーいじょうぶv"と片目を瞑って白い歯を見せた。
「ちょっとお腹すいてっけど、無限城の中だから大丈夫!
フルパワーで行っちゃうかんね―! うおおぉぉお…!」
両手にプラズマを携えて赤屍に向かっていく銀次の様子に、蛮がやれやれまったくと肩を窄める。

「あの野郎。張り切りすぎだってのー」

呆れたように腕を組んで、空中でやりあう銀次らを見上げる蛮の横に、いつのまにそこにいたのか、鏡が立つ。
すっかり存在を忘れていた、という顔で見ると、鏡もまた皮肉げに返した。
「天野銀次の生還か―。ところで、おや、そちらは? もう休憩かい?」
鏡の言葉にじろりとその澄ました顔を睨み、軽く返す。
「真打ち登場を、高見の見物ってヤツ―。テメーは? 観察通り越して、今回は『傍観』か?」
「なかなか意義深い"観察"は出来たけどね。それも、そろそろ終局かな。計画はどうも失敗に終わりそうだし」
「終わりそう、じゃねーだろが。もうとっくに、終わってんぜ?」
そして、皮肉をたっぷり込めた眼で嘲るように、祭壇の前で赤屍と銀次の闘いを見上げているアリスを見やる。

どうせ、このままじゃ終わらねえつもりだろうが。
だが。
ひとまず今回の件は、今更どうしようもねえだろう。
このザマじゃあ―な。








銀ちゃん復活! ラブラブは後でたっぷりとv