RAIN PAIN 雨は止むことなく降る 雨は古傷を疼かせる 今はホンキートンクに行く気分でもなかった だから2人でスバルの中でじっとしている この雨では出かける気のもならないから 蛮はその日気分が最悪だった 少し前に奪還の仕事で深い傷をおった その傷が今かなりジクジクと痛む 銀次は今日は銀次じゃない 雨に雷に呼ばれたのか雷帝と入れ替わっていた 「蛮・・ずっと肩を押さえているがどうかしたのか?」 雷帝は蛮の肩を指差した 「ああ・・これはちょっと前の奪還の時の傷が痛んでな」 「痛む?」 「ああ、痛いぜ」 そう蛮が返した後、雷帝は考え込んだ 「何考え込んでんだよ、雷帝」 「・・いや・・痛いってどんな感じだと思って・・」 「痛いって・・痛てーのは痛てーんだよ!!」 雷帝は難しい顔を返す 「蛮・・・それじゃオレには分からない・・・」 蛮はなにを真面目に考えているととも思ったがとりあえず説明した 「殴られたら血がすんげー出てヒリヒリするだろ?あの感触だ」 しかし雷帝は分からない顔を崩さない 「・・・・ヒリヒリするだろう?」 「・・・いや血が出るだけだ・・蛮の言うようなヒリヒリするということはない・・・」 その答えに蛮は少し考えたかと思うと雷帝のほっぺをいきなりつねった 「蛮・・何を?」 「痛いってどんな感じかって知りてーんだろ?これで何か感じねーか?」 雷帝は首をふる 蛮はつねった手を少し強めた 雷帝のほっぺたが少し赤くなるぐらい 「さすがに何か感じねーか?」 だけれども雷帝は顔をまたしても横にふる これ以上つねっても同じだと思い蛮は手を離す 蛮は手を離すとすぐに雷帝の赤くなったほっぺたはすぐもとの色に戻った 「もしかしてお前、痛いって感じたことないのか?」 「多分・・・」 「本当かよ!!」 「ああ・・・」 激しい雨音が外から聞こえる 「オレは少しおかしいのかもしれないな・・蛮・・」 雷帝は自虐的に笑いながら続ける 「オレは銀次のように痛がることができないから」 「・・・・・・・」 蛮は痛みが治まったのかもう肩から手は離している 今その手はライターを持っている 左手の方は外からの雨が入らないように少しだけ窓を開ける 「痛いって感じてぇのか?雷帝?」 「・・・・できれば・・・」 蛮は盛大にため息をつく 「痛いっていい感じじゃねーぜ、そんなのに憧れているんじゃねーよ」 雷帝は少し不服そうな顔をする すねているのかもしれない 遠くに雷の落ちた音がする 「テメーは『痛い』って感じられねーことで困ってんのか?」 雷帝はそう言われて考えをまとめてみる 困っているかと言われるとなぜか思いつかない でも何かないかと考えていると蛮が言葉を続ける 「別に困ってねーだろ?」 はいともいいえとも言えず雷帝は困った顔をますます強めた 「じゃあ気にすんじゃねーよ」 蛮は銀次にするようにくしゃりと雷帝の髪を撫でた その夜も雨は降っていた 振り返るともう蛮は夢の中だ まだ銀次も入れ替わってきそうにない 雷帝はふと外に出る まだ雨は降っている 雲はあるのだろうが闇にまぎれて見えない 「気にするなと言われても・・・」 だれに言うでもなく言葉が口についた 「やはりオレは蛮の痛いという気持ち少しでも分かりあいたいと思うのに・・」 雨は降る 銀次の心には雨は止んだ でも悩みの雨はまだ雷帝の胸には降っている気がした
|