ヒミツのコトをしよう。
             してはいけないトコロで、
             してはいけないコトを、
             してはいけないヒトと。


「ア・・・・・」
「声出すなよ・・・」
「だって・・・・ア・・・! やめて、ねえ・・・ ねえ、やめてったら・・・・う・・!」
「声、出すなって・・・・」
笑いを含んで言う言葉に、苦しげに眉を寄せてタケルが、自分の下半身を
煽る兄の指に自分の指を絡ませる。
「いつもは・・・出せって言う・・・・じゃない・・・・・っ!」
嫌味のつもりで言っているのに、兄は楽しげに微笑んでいる。
〈笑いごとじゃないよ・・・・)
胸中で呟く声すら、少しかすれている気がしてしまう。
「外に漏れたら、ヤバイだろ?」
「だったら、こんなとこで・・・・・・しなけりゃいいのっ・・・に・・・・・ああっ!」
下肢への強い刺激にタケルが叫びそうになり、ヤマトが口付けて、その声
を奪い取る。
「けど、なかなかスリリングだろ・・?」
夕やみのせまる、小学校の理科室で、タケルは、窓際の壁に背を預けて、
崩れそうになる体を兄の肩に掴まって支えている。
・・・そりゃあ、確かにスリリングだけれど、誰かに見られたら恥ずかしいのは
   僕なんだけど。
抗議するつもりの口を、深いキスでふさがれて、何も言えずに目を閉じる。
窓辺のカーテンに隠れるようにして抱き合って、立ったまま受ける愛撫は、
いつもよりずっと苦しくタケルを攻めたてるけど、それに本気で抗うことが
できずにいるのは、自分も少しそのスリルを楽しんでいるからかもしれない。
「はあ・・・・・」
やっと唇が開放されて熱い吐息を落とすと、その耳に、グラウンドでサッカ
ーをする子供らの声が聞こえてくる。
その中に、よく知っている声が混じっているのにふと気がついて、肩ごしに
振り返った。
(大輔くん・・・)
兄に気づかれないように、小さく肩をすくめる。
(こんなとこで、こんなことしてるって知ったら・・・きっと驚くだろうなあ・・・)
・・・驚くというより、軽蔑するかな?
考えて兄の方に視線を戻すと、自分を見つめる蒼い瞳にあってドキリとする。
「おい・・・・誰、見てんだよ・・・?」
顎をすくって、自分の方を向かせ、ヤマトが笑いながら、もう一度キスをする。
わかっているくせに。と思いながらも、軽くしらばっくれてみせる。
「夕日がきれいだなあ・・・と思って」
「・・・もうちょっと、マシな嘘つけよ・・・」
「ほんとだってば・・・・ん・・・」
「嘘つくと、舌抜かれるんだぞ」
「知ってるよ。閻魔さまに、でしょ?」
「違うよ。・・・・・・俺に」
言うなり、口付けが激しくなり、本当に舌を絡めて抜かれてしまいそうな勢いに、
タケルが少し脅えて体を震わせる。
立ったまま開かされた足の間で蠢いていたヤマトの指がふいにそこを離れて、
両手でタケルの細い肩を抱き寄せた。
そして、耳の下の窪みに唇を寄せる。
「ん・・・・・っ」
ぴくっと反応を返す肌が、キスの跡で薄く朱に染まる。
タケルの首筋は、まだ幼い頃のままに白くてやわらかくて、ヤマトはそこに唇で
触れることが好きでたまらないが、微かなキスでもあっさり跡がついてしまうから、
タケルはつい、そこへのキスを拒んでしまう。
「もう・・・・跡、つけないで・・・・ったら・・・」
言いかけて、くっと息をつめる。タケルのシャツをたくし上げたヤマトの指が、その
胸に這い上がり、あらわになったそこに唇を寄せて吸い上げる。
タケルは大きく身を反らせた。
「やめ・・・て・・・・・あ・・・ア・・・っ」
言う声が、艶っぽくかすれる。
窓の枠に後ろ手に体を支え、再び下着の中に潜んできたヤマトの手に、先ほど
から煽られては放っておかれるということを繰り返されていた体が、今度こそという
期待に満ちて激しくわなないた。
指先で捕らえられ、もう今にも泣きだしそうになっているそのやわらかな先端を擦り
り上げる。
「アアア・・・・・っ!あ・・・・んん」
眉間を寄せて、頬を染めて、恍惚の表情を浮かべる弟の、その下肢を膝まで露に
して視野に晒すと、幼い性についばむような口づけをおくる。
「・・く・・・・・・・っ・・・・・ああ・・・」
“欲しいって言えよ”といつもなら、散々催促されて、それでも恥ずかしさに何度も
拒否して、それからもうどうしようもなくなって、やっと蚊のなくような声で哀願する。
そんな言葉が、今は言われてさえいないのに、口をついて出そうになる。
けれど、兄はそんなときに限って意地悪く、それを促してさえくれない。
「お・・・・兄ちゃ・・・・ん・・・・」
「なんだよ?」
「もう・・・・・・」
もう、立っていることすらつらい。
そしてそして、少しでも早く、この熱を解放してほしい。
「もう・・・・・ 欲しい・・・」
「何をだよ?」
聞かれて、唇を噛みしめる。
やっとの思いで言ったのに、とそう思うと、涙が苦しそうに一筋頬を伝った。
「・・・・・しょうがねえなあ・・・・・」
呟いて笑みを浮かべ、ヤマトがあっさり負けを認める。
どうせいつもこうなのだ。
追いつめて攻めこんで、逃げられないように腕に捕らえていたはずなのに、気が
つくと、いつもこちらの方が不利になっている。
泣くなんて卑怯だぜと思うけれど、その涙にはどうしたって勝てはしないから。
ヤマトは、早々に諦める。
ヤマトの熱い息が下肢に触れ、いきり立つタケルの性に唇でなぞって、ゆっくりと
含んでいく。
あたたかな粘膜に誘いこむようにされて、タケルがびく!と全身で震えを返し、ヤマト
の肩に腕をつっぱるようにして背をのけぞらせる。
もうわずかな刺激すら堪えられなくて、限界を迎えた膝が、激しくがくがくとわなないた。
「ああ・・・・・あ・・・あ・・ん・・・・・う・・・・っ」
ヤマトが先の割れ目に舌を差し入れ、吸い上げると、幼い体は一気に上りつめ、しどけ
ない声をあげて兄の腕の中で崩れ落ちた。



一瞬気を失って、背中の冷たさにはっと我に返る。
気がつけば、兄の手によって、上体を実験用の広い机に寝かされていた。
下半身は何も身につけておらず、すべてをさらけだした状態で、ヤマトの手に膝の裏を
持ち上げられようとしている。
やめて・・・といいたいけれど、声が出ず、されるがままに足を大きく開かせられた。
タケルは恥ずかしさにかたく目を閉じて、次の事に堪える用意のように息をつめる。
ヤマトの唇が開かれた下肢に息を吹きかけ、ぞくりと身震えする体を押さえつけ、ヤマト
しか知らない無垢な蕾に舌を這わせる。
「・・・・・く・・・っ」
小さく声を上げて、白くなるほど唇をかみしめる。丹念に濡らされて、逃げ出したい羞恥
にかられるけれど、体は逆に、わずかな快楽さえ逃がさないと、ヤマトの愛撫をねだる
ように机の上をあやしくのたうつ。
指がその周囲を撫でて、ゆっくりと体に入ってくると、タケルは快楽に抗うように首を強く
打ち振った。
髪の先から汗の粒が舞う。体の奥深いところで、本数を少しずつ増やしてうごめく指が、
そのやわらかな内壁を広げながら緩やかに突き上げると、タケルの口から吐息に混じっ
て甘い声が漏れる。
その指が前立腺まで達すると、強すぎる刺激に体中が跳ね上がるように反応を返した。
「あああああ・・・・っ!!」
思わず漏れてしまった声に、ヤマトが少し慌てたように体を伸ばして、手のひらでタケル
の口を塞ぐ。
「声、でかいって・・・・」
指摘されて、思わず羞恥に頬を染める。
その時、廊下の向こうから走ってくる数人の足音と話し声がして、ヤマトはとっさにタケル
の体の上に覆い被さるように体を寄せた。
抱き合うようにして息を殺してじっとしていると、足音と話し声はドアのすぐ前までき、それ
から何事もなく通り過ぎた。
それがだんだんに遠くなっていくのを確認して、二人そろって、はあ・・・・っとため息をつく。
それから顔を見合わせると、思わず笑いがこみあげてくる。
「あせったな・・・」
「どうなることかと・・・思った・・・」
「けど・・」
「スリリングだったろ?・・・なんて言わないでよ」
呼吸を整えながら、タケルが少し怒ったように言うと、ヤマトが“参った”という顔で肩をすくめる。
「だいたい、覆い被さってきてどうするの。余計やバイよ、それって」
「いかにもヤってますって感じだからか? しょうがねえだろ。おまえの下半身が他のヤツ
の目に晒されないように守ったんだぞ、これでも」
言われて、言葉の内容のすごさにタケルがぼっ!っと火がついたように真っ赤になる。
「お兄ちゃんてば・・・」
恥じらうようにして視線を反らす弟に、ヤマトが目を細めてやさしく笑んだ。
反らせた頬に手を添え、自分の方に向かせると、その唇にそっと口づける。
「もしも、誰かに見られたら、俺が無理やり襲ったって言うよ・・」
ヤマトの言葉に、タケルが睨むようにして言う。
「そんな事言ったら、僕だって、僕がお兄ちゃんを誘ったって言うから」
「・・・おまえにそんな事、言わせられるかよ・・」
「僕だって・・・お兄ちゃんに、そんな事言わせたくない」
合間合間に、甘く口付けながら、交わす言葉に切なさが混じる。
「どっちにしたって・・・親不幸だよね・・・」
「そうだな・・・」
泣きだしそうな瞳を見つめて、その目じりに、泣くなよというようにキスをする。
うん・・・と小さく頷くくなり、唐突に兄の激しい口付けに唇を奪われて、タケルはしがみつく
ようにその背中に手を回した。


もしも・・・・
いま、この教室の扉が開かれて、誰かが入ってこの光景を見られたら。
生徒だったら、兄が一瞥をくらわせて追い払ってしまうだろうが、それでもきっとその子は
職員室に行くだろう。
そうしたら僕たちは呼び出され、大人たちの視線の中に引き出され、校内でそんなふしだらで、
不道徳なことをしたと、よってたかって責められるだろう。
しかも、兄弟で、神をも恐れぬ行為をするなど、気が狂っているとしか思えない。と。
そして、さんざん汚い言葉でなじられて、僕らは二度と会えないように引き離されるのだろうか。
学校も退学になって・・・・
あ、でも『ギムキョウイク』だから、退学はないか。
だったら、引越しをして転校かな。
お父さんには顔の形が変わるほど殴られて、お母さんは気が変になったように泣くだろう。
育て方が悪かったから、とか、離婚なんてしてしまったからとか。
そんな、僕らにとってはもう、どうでもいいようなことを悔やみながら。



「何・・・考えてる・・?」
「ううん・・・何も」
「嘘つきはな・・・」
「お兄ちゃんに、舌抜かれるんだ・・・」
「・・・・・・正解」
「あ・・・・」
魂を奪うほどの激しい口付けの後、足が抱え上げられ、体を割られて、キスだけですでに熱く
なっているタケルの体にヤマトがゆっくりと入ってくる。
背中をきれいに弓なりに反らせて、その圧迫感に打ち震えながらも、いつもよりもなぜか柔軟
な体は、なんなくそれを受け入れる。
「あ・・・・あ・・・・・」
ヤマトの律動に合わせて漏らされる声に、ヤマトの手の平がそっとその口を覆う。
こんな場所で、冷たい机の上に体を引き倒されて、苦しげに眉間を寄せ、兄の手に口を覆われ
て叫びを奪われて。
そして、体の奥深くをいたぶられている様は、まるで、それこそ本当に、兄にレイプされているかの
ようで、それが、なお一層の興奮と欲望をタケルの中に呼び起こす。
「ンーーーーー・・・・っ!」


もしも・・・・
もしも、これが誰かに見られたら・・・・
この秘密が誰かに漏れてしまったとしたら。
・・・・・永遠の別れと、この愛の破滅が、本当にこの身にやってくるのだろうか・・・

それがわかっているのに、どうして・・・・
どうして、僕は、この愛をやめられないのだろう・・・・
どうして、そんな哀しい事を考えている今でさえ。僕はこんなに・・・・
僕はこんなに幸せで、
そして、イイ気持ちでいるんだろう・・・・?


「ア・・・!」
腰を強く叩き入れるようにされて、タケルが兄の手を抜けて叫んで、身をよじらせる。
快楽にのたうつ足の先が、ヤマトにさらに高く抱え上げられ、宙に美しい弧を描く。
はあっ、はあっと規則正しく吐き出される息はさらに温度を上げていき、ヤマトがよりいっそう
強く激しく突き上げると、痙攣したように全身を震わせて、兄と同時に一気に高みへと上りつ
めた。




乱れた衣服を軽く直して、冷たい床に寄り添って坐る。
もう暗くなってきた教室の中、汗に濡れたタケルの前髪を,ヤマトやさしく掻き上げた。
疲れきって動けないタケルが、兄の汗ばんだ胸元にそっと身を寄せると、あたたかな手が
そっと肩を抱いてくれる。
「おまえ、さっき、つまんねーこと考えただろ・・?」
「・・・・・うん」
小さくうなずいて、兄を見上げると、やさしい青い瞳が包み込むように見つめている。
「もしも、誰かがおまえを傷つけようとしても・・・・俺が、絶対守るから。
誰にも傷つけさせたりしない・・・」
その瞳を見つめ返して、タケルが微笑む。
「じゃあ、僕は・・・ 僕を守って傷ついたお兄ちゃんを、守ってあげる。
もう誰にも傷つけさせたりしないように」
その瞳の潔さに、ヤマトが驚いた顔をして、
そして愛おしげに、弟の頬に、自分の冷たい頬を寄せた。



誰を、どんな人を、どれだけ傷つけたって・・・・
この人だけは、譲れない。
離したくなくて、離れたくなくて、そして離れられない。
どんなにこの愛が罪でも、禁忌なものでも、たとえ神様に咎められたとしても。


でも今は、誰をも傷つけたくはないから、
やはりこれは秘密の恋にしておこう。
二人で持つ秘密の、この幸福の前には、禁断の恋すら格別に甘い。
罪も甘くて、背徳さえも密の味だ。
きっと、二人で流す涙も、砂糖の味がするだろう。

そのうち、きっと神様も根を上げる――。
兄は弟にキスをして、そう言って笑った。






「やっぱり誰かに見られた方がよかったかも」「なんでだよ?」「だって、これに味をしめて、きっとまた学校でヤろうって、
お兄ちゃん言うに決まってるもん」「あ、それは言えてるな」「ほら〜;」
と、まあ、あとは勝手にやらせておいて、『風太さん、密会の蜜の字が違いマス!』・・・いいんです、わざとです。こういう
アテ字みたいなの好きなもので。『秘密』と甘いという意味の『蜜』をかけてます。はい。それだけなんですけど。
しかし久々の裏更新で嬉しいですv学校はさすがにヤバイかなと思ったんですけど、理科室なんて、結構萌えません? 
机広いし、水道もあるし、解剖するにはもってこい・・・え? 保健室が、ベッドもあるしいいんだけど、人の出入りがある
から、ちょっとね・・ とにかく楽しかったですv
このお話は、実はもうあげちゃった後なんだけど、謹んで、大好きなかわしまさんにvvv もらってくださいませませませvvv 
ええ、ヤマトにいただかれちゃった後のタケルで、すみませんが・・・手つき後でよければ・・・ はい(笑)
もーちょっと、ヤマトをワイルドにしたかったんだけどなー。また修行いたしますわv(風太)

                                                          
ura topにモドル

 蜜 会