真夏の昼のキス     by.松雪笙(さま)

夏の暑い日ざしから逃れるように、校舎の陰に隠れて、口づけを交わした。
 2人で一緒の夏の日に、学校に忘れてきた教科書を取りに行こうと、追いかけっこをするように、陽炎の上るアスファルトの上を走り回って、汗をかいて。
 それから隠れるように校舎の隅にたどり着いたときに、一緒に口づけを交わした。
 遠くから、どこか水を含んだ喚声が聞こえるから、おそらくあれは水泳部の生徒達がこの夏の一時を体一杯に味わっているのだろう。そして、カーンという高い音は、この炎天下の元で、なにを好んでか白球に戯れている球児たちの息吹か。
 もっと遠くから聞こえる笑いさざめく声は、それは校舎の中から。試すような楽器の音がするから、吹奏楽部が個人練習でもしているのか?
 そんな音を聞きながら、暑い夏から少し隠れて口づけを交わす。
 そう言えば天気予報で「今年一番の猛暑になる予定」と言っていたけれど、そんなことは構わない。
 まずは確かめるように唇と、唇で触れて。
 それから啄ばむように交わして。
 そっと舌を出すと自分よりは少しばかり大きい舌に、乱暴に絡めとられた。
 瞳を閉じて、ただ唇とその舌の感覚だけで相手を味わう。
 深く、その体温よりも暖かい口腔内に引き込まれて、やっぱり暑い日には口の中も暑いのかもしれないと、ぼんやりと考える。
 体を痛いほどに壁に押し付けられて、顔の両脇を痛いくらいにぎゅっとつかまれて、首は無理にあお向けるような角度で、そして口腔内を暴かれる。
 上からのしかかられるような角度だから、実は苦しいのだけれど、そんなことには構わなかった。
 それでも鼻から苦しそうな溜息が漏れたら、僅かに顔を離されて、そっとその下唇を食まれた。
 そのくすぐったさと甘さに、思わず笑い声をもらす。
 その震えが唇から唇に伝わって、今度は軽くその白い歯で噛み付かれた。
 ずっと瞳は閉じたままで。
 そのほうが相手をより近くで感じられると知っているから。
 真夏の暑い中での口付けなんて最低、最悪だと思っていたけれど、実際は違った。
 こんなに暑くて、そして最高のものはない。
 だから何度でも、どこでも、ただ口づけを交わして。
 汗がだらだら垂れる日に、自分の体温さえも鬱陶しいくらいだと思うけれど。
 それでもキスは好きなんだから、しょうがない。


 男同士だからとか、兄弟だからとか、そんなことは、この幸せの前には無力だ。
 短い人生、幸せになったもん勝ちだってみんな分かっているはずだから。

 だから、諦めて。
 真夏のキスも、好きなのも、その相手が実の兄だということも。










                
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コメント:松雪笙さまv
『何ででしょう? 本当に、ショートショート。
こんなものでも「気に入った!くれッ!」と言ってくださった、風娘さまに捧げますv
本当に、気に入ってくださって、ありがとう!という言葉以外、ないですよv短い上に、あまり内容は内容だし(…)すいまちょん。オヤジギャグ。てか、コメントのつけようがないので、本当にありがとうと言うことと、こんなもんを飾ってくださって、感謝感激という言葉以外、ございません。これからもそうやって、優しい言葉で私を天狗にさせてくださいv(爆笑)』

                
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ありがとうございましたvvv なんだかもう、このお話が好きで好きで、松雪さんのサイトの裏SS掲示板に書かれた時からすっごく好きで、その掲示板を外されてしまわれた時からずっと実は狙っておりました! 松雪さんのサイトに出されないんだったらください〜;と泣きついたらば、快く承諾してくださってv ああ後光が・・。裏の掲示板に書かれてたものだから裏サイトにアップさせてもらったけど、よかったのでしょうか? しかし、キスだけでこんなにえろいなんて、素晴らしいですv
「男同士だからとか、兄弟だからとか、そんなことは、この幸せの前には無力だ。」というところが、すごく好きですv 本当に素敵なお話をくださってありがとうございましたv(風太)



                                
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