■夏コミ新刊「JINX」の一部。
お話のタイトルは「COLD RAIN」です。
「手ぇ離せ」
「ばん・・・ちゃん・・・?」
それは、銀次が初めて見る蛮の顔だった。 凶暴で獰猛な野獣のような、鋭く残忍な・・・。 いや、初めてじゃない。 過去に見たことがある。
初めて会った無限城で、蛮はこんな目をして、ロウアータウンの男どもの首をへしおっていた。
『雷帝を!』と助けを呼ばれて立ち、人の波がわっと銀次の目前で分けられた時。 自分の血まみれの右手を持て余すようにして、蛮はそこに立っていた。
血の匂いを全身から漂わせ、残忍で冷酷な色の瞳をして。
「・・・ば・・んちゃ・・・ん」 「離せっつってんだろ!」
怒鳴りつけ、もぎ取るように銀次の手をシャツから離させ、勢いにまかせて振り払う。 銀次はその力に、背中からサイドシート側のドアにぶつかった。 と同時にガチャと運転席のドアが開かれ、蛮が雨の中に出ていく。
バン!とドアの閉まる音にびくっとし、スバルの前を通る蛮を見開いた瞳のまま追って、それが銀次の扉の方に近寄ってきた時、銀次はもうここでこの山中に捨てられるのだと咄嗟に覚悟した。 それほどに、蛮の怒りはただごとではなかったのだ。
助手席側のドアが開かれ、その手に腕を捕まれ、乱暴に車外の雨の中にひっぱり出される。
ドアを蹴飛ばして閉じ、そのまま銀次の腕を掴んだまま、蛮は銀次の顔も見ずに道路の脇から山の中へと入っていった
蛮ちゃん、と呼ぼうとするが、蛮の背中は銀次の全てを拒絶しているようで、つらすぎて声も出ない。
雨は叩きつけるように降りしきり、銀次の心は足元のぬかるみに深く重く沈んでいくようだった。
どうして、こんなことになっちゃったんだろう・・・? ずっと、 ずっと、一緒にいられると信じていたのに。
「ずっと=永遠」ではないことなどもう、無限城で育った銀次は子供の頃から身をもって知っている。 望んではいけないことで、望んでも決して叶えられるはずのないこと。 でも、それでも、それだからこそ。 蛮との未来に、それを信じたかった。 事実、本当にもうそれを、信じ始めていたかもしれない。 それほど、日々は満ち足りていて楽しかった。 明日の不安など微塵も感じさせないほど。 疑うことすら出来ないほどに。
山中の木々の挾間に少し開けた場所を見つけると、蛮はゆっくりと銀次を振り返った。 肉食獣が狩りをする時のような瞳だ、と銀次は思った。 蛮はまさか、自分を殺そうとしているのだろうか・・。
そう何の根拠もなく、漠然と思ったとほぼ同時に、捕らわれていた腕がひっぱられ、力まかせに放り出される。
蛇咬を繰り出す腕で投げつけるようにされて、銀次の身体はぬかるんだ地に叩きつけられた。 「蛮、ちゃん・・?」 慌てて上体だけ起こして、震える瞳で蛮を見上げる。 雨で視界が遮られて、蛮の瞳が正しく見えない。
ニヤリ・・と残忍な笑みを浮かべた口元だけが、やけにはっきりとその瞳に映った。 「何・・・するの・・?」 「何、だと?」
「蛮ちゃん・・。オレ、謝ってすむんなら、何度でも謝るよ・・・! だから、そんな事言わないでよ・・。オレ、蛮ちゃんとずっと仕事続けたいよ・・。だって、ゲットバッカーズの”S"は・・」 「おうよ。1人じゃねえって意味なんだよなぁ・・?」
不気味なニュアンスを以て語られる言葉に、銀次が嫌な予感に全身を総毛立てる。
「文字通り。1人じゃなく、してやるよ。一個の身体になって混ざり合えば、1人じゃねえって痛いほど実感できっぜ?」 ”どういう意味・・・?”とは、恐ろしくて問えなかった。
両手を雨を含んで色の変わったズボンのポケットに突っ込み、値踏みするように蛮が少し前屈みになって銀次を見下ろす。
尻餅をついたような体勢のまま、心より先に身体が危険を察知して、銀次はずるずるとそのまま後退さった。 「蛮ちゃん・・・ やめて・・・」 「何をだよ?」 「やめて・・」
肉食獣が小動物を追いつめた時のような嬉々とした蛮の顔に、言葉の意味は計り知れずとも恐怖を感じて、銀次がゆっくり首を振る。 「何をやめて欲しいんだよ? ええ? 銀次ィ?」 「蛮・・・・ちゃ・・・」 蛇を宿した手が伸びてくる。 ゆっくりと。
立ち上がって走れば、逃れられるかもしれないと錯覚させるような、緩慢な動きで。 だけども、銀次は知っている。
逃げようとしたその瞬間にはもう、蛮の腕は相手の喉を掴み、引き裂いているだろう。 逃れる術はない。
観念したかのようにぴくりとも動かない銀次に再びニヤリとすると、唐突に凄まじい速さで動いた蛮の両手がガッ!と銀次の肩に食い込み、背中からぬかるみの上にバシャアッ!と勢いよく押し倒した。
と、同時にビリビリ・・!と布の裂ける音がして、Tシャツが引き裂かれる。
え?と思う間もなく、ジャケットさえも左右に開かれ、バッ!!とその腕に脇の辺りから引きちぎられた。 「蛮ちゃ・・・!」
何をされるのかわからず、それでもただならぬ気配に銀次が驚いて抗おうとすると、蛮が嬉しげにその身体の上にのしかかって嗤う。 「さすがに、大人しくヤられんのは嫌かよ」 「え・・?」 「まーだ、わかってねえみたいだな?」 「な・・何・・を?」
「テメエは、ここでオレに犯られんだぜ? オンナみてぇに、足、思い切りおっぴろげてよ・・」 「何、言ってん・・の・・・?」 「テメエを抱いてやるって言ってんだよ」 「・・・・う・・そ・・・」 驚愕に見開かれた瞳が、恐怖に震えた。
言われている意味はやっと理解したが、それをどうして今、蛮が自分にしようとしているのかわからない。 だけども。 横たわる自分の身体を跨いで中腰になっている男の目は、本気だ。 本気で、自分を・・。
察した途端、逃れられないと覚悟したはずなのに、本能なのか、身体をばっと俯せて地に片膝をついてそのまま身を翻して走り出そうとする。 そこからは、まるでスローモーションのようだった。
ぬかるみに足をとられバランスを崩した所を、背中から再び両肩を掴まれ、思い切り表替えされて引き倒される。
後頭部がぬかるみに落ち、金色が泥にまみれたと同時に、バックルが抜き取られハーフパンツの前をはだけられた。 「や・・・!」 「オラ、もっと暴れろよ」 「やめて・・! 蛮ちゃん!!」 「そんなじゃ、逃げられねえぜ?」 「やめて! いやだっ!!」 「へへ、活きがいいじゃねえか。そう来ねえとな・・!」
蹴り上げてくる片膝をなんなくかわし、上半身を覆い被せていきながら蛮が片手で器用に、下着とハーフパンツを同時に膝まで引き下げる。
露にされた白い尻が蛮の手に撫で回され、銀次は泣き声を上げた。
というわけで、「COLD RAIN」から一部抜粋でした。
蛮ちゃんがこうするには一応カレなりの理由があるわけで・・。(汗)
とてもとても銀ちゃんを愛しているの、本当は。
そ、そのへんは、本読んでやってくださると嬉しいです〜
これで1ページ半くらいの内容なので、まだこの前後あわせて、残り36P分くらいあります。長くてスミマセン・・。
ちゃんとハッピーエンドで、らぶらぶもありますのでご安心をv
・・しかし、こんな字だらけの本、誰が買ってくれるのでしょう・・(涙)。
不安。
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