■ 愛ノ イナズマ


「よかったね、蛮ちゃん! 久しぶりに奪還料、手に入ってさー!」
「おう、銀次! そーだな」
あまり大きくない仕事とはいえ、奪還料も無事ゲットでき、蛮の運転するスバルは快調に風を切って走っていた。
極貧生活もすっかり板についてしまったとはいえ、さすがに大のオトコが2日も水だけというのは、あまりにも貧しすぎる。
「これでやっと」
「やっとな」
「トロにありつけるね!!」
「ラブホに行けんな!!」
頭の中が食べ物でいっぱいで、しかも大好物のトロがその想像の中で微笑んでいる図(どんなだ?)さえ浮かんでいた銀次は、蛮の言葉に思わず固まってしまった。
「え・・・・えええええ〜〜〜!! ちょ、ちょっと待って!なんで、なんでラブホなの!?ご飯が先でしょうが!」
「アホ!今はコッチが先だ!」
「なんで、なんでえ!?そんなの後でいいじゃない!オレたち、2日もなんも食べてないんだよー! トロ食べたいよお、ねえ」
「うるせー! 食欲よか性欲だ!」
「性欲よか食欲だよお」
「だーってろ! 今日こそ、今日こそ、ヤルからなー!覚悟しとけよー!銀次・・!」
「・・・蛮ちゃん、窓全開で恥ずかしいこと叫ばないでよ・・」


本当に来ちゃったよ・・と、銀次が心の中ではぁ〜っとため息をつく。
お腹ぺこぺこで、しかも一応一般人相手とはいえ、バトルもちょっとはしたわけで。
よけいにお腹が減った後だというのに、なにも今しなくても・・。
そりゃあ、確かに今度お金が入ったら、ラブホでも行ってこの前の続きをしようとかなんとか、約束してたような気もするけど。
車じゃ、やっぱ狭いしね。
けど蛮ちゃんって、なんでそういうトコ、とてつもなく元気なんだろう。
でも・・・・。
ま、いいか。そんなトコも大好きなんだしv
「今日こそ」の意味を考えて、なんとなく恥ずかしくなったり嬉しいような気になったりしつつ、蛮の後ろについて部屋に入った。
ぱたんと後ろ手にドアを閉じるなり、くるっと蛮が銀次を振り返る。
「銀次」
「・・・・蛮ちゃん」
「わかってんな」
「・・・うん!」
「ここまで来て、逃げはなしだぜ」
「蛮ちゃんこそ」
「てめー、ナマイキ言ってやがると・・」
「・・・・ば・・・・」
銀次が呼ぶよりも早く、蛮が銀次の肩をぐい!と抱き寄せ、顎を上げさせるなり乱暴に口づける。
息をとめられそうな口づけに、一瞬意識がぼうっとなってしまう。
女の子とだって、こんなことほとんどした経験がない銀次にとって、蛮から与えられるそれはあまりにディープすぎる。
立っていられなくなり膝を折って落ちかけると、それを引き上げるようにされて、ベッドの上に転がされた。
(うわ・・・天井も鏡だし!)
「オイコラ、キスん時は目つぶれっての」
「だって・・・あれ」
「ん? ああ、鏡か。オレに何されてっか、しっかり見えていいだろ!決定的瞬間をしっかり目に焼き付けときな」
「ケッテイテキシュンカンって、何の? いてっ! もおー。ベッドでまで殴るかなー」
「アホ! おまえがこのオレ様のもんになる瞬間をだよ! いいか、わかってんな。銀次。ぜぇーっていに、<この前>みたいのはナシだかんな!」
「わ、わかってるよ、蛮ちゃん。オレだって、カクゴはしてるもん」
「じゃあ、最後までいい子にしてんだぞ・・」
「うん・・」
一抹の不安を抱えつつも、蛮がそっと目を閉じた銀次にもう一度口づける。
こうやって、キスをするようになったのさえ、考えてみればつい最近だ。
我ながら純情なガキみたいで、らしくねーとは思うのだが、どうも銀次に対しては今までオンナ(オトコもちょっとはあったけか?)に軽く手を出してきたようにはいかない。
銀次の方はいつの頃からか、「蛮ちゃんなら当然オッケーv」の構えがあるのに、コッチがこうも手出しできないなんて。
らしくなさすぎる。
唇を外して、酸欠になりかけている銀次の口に呼吸をさせて、耳の下から首筋のやわらかいトコにキスをすると、固くとじている瞼がぴくっと震える。
「感度良好・・」
低く笑いながら、片手をハーフパンツの上から銀次のものにふれさせる。
「蛮ちゃ・・!」
「こんくれえのことでビビるなって」
「だって! あ・・・!」
「早えな。もう、こんなかよ。キスだけでイケんな」
「は・・・・! あ・・・・あ・・・っ」
形を布の上からなぞるようにして弄び、切なげにぎゅっと眉間を寄せる銀次の表情を楽しむ。
心底惚れた相手が、自分の施す愛撫で感じている様を見るのは、たまらない快感だ。
そう思いつつ、ジッパーをおろして下着の中に指を潜り込ませると、銀次があわてたように上体を起こしかけた。
「あ・・・・!」
それをベッドに戻しながら、抗う言葉を口にさせないように、うるさくなる前にその口をキスでふさぐ。
直に固くなったものを蛮の手の中に包み込まれると、心臓を鷲掴みにされているような強い衝撃が走り、銀次は快楽に耐えるために膝をぎゅっと曲げて全身を強張らせた。
「は・・・・ぁ・・・・・ば・・・んちゃ・・・・ん・・・」
「力、抜け。銀次」
「あ・・・・。気持ち・・・イイ・・・・よぉ・・・・」
「だろ? もっとよくしてやっかんな」
にやりとしつつも、頬を上気させ息を乱して快楽に堪える銀次の顔は、とんでもなく挑発的だ。
もっと切羽つまった顔をさせたくて、手の中のものを扱く指を早めて、さらに追いつめる。
「や・・・やだ・・! 蛮ちゃん、も、で、出ちゃう・・・よ・・!」
「いいぜ、出せよ」
「だって・・・・・あ・・・!」
「銀次、ほら。素直に気持ちよくなれって」
言った瞬間、なんとなく、蛮の胸にイヤな予感が走った。
なんだか、今手の中に、びびっと電気が走ったような・・。
「だって、だって・・・。あ、もう、もう、で、出ちゃ・・・・・・!」
「どわあああああああああ!!!!」
突然、バリバリ・・・!!とすさまじい音を立てて電撃があたり一面を直撃し、部屋の壁に埋め込まれていた怪しげな色の電球がいっぺんに吹っ飛んだ。
当然、もろに電撃を放った銀次にふれていた蛮も、ジュウ・・と頭から煙を出している。
「銀次、てめえ・・・・」
「あ・・・ごめん。蛮ちゃん」
「だ〜か〜ら〜この前みてえなことはすんなってあれほど言っただろうがぁ!!」
「だって、気持ちよかったんだもん! 気持ちよかったら出ちゃうんだもん!電気!!」
「このアホがー!気持ちイイっつったら、普通出るもんがちがうだろうが!!」
「だってー」
「だってじゃねえ!くっそう、こうなりゃ、ムードもへったくれもねえ!ケツだせ、この!今日こそ何がなんでもイレてやる!!」
「うわあ、ちょっと蛮ちゃん!やめてったら!無理矢理はイケナイよ!レイプだよ、それじゃあ!」
「うるせー、こんなとこまでのこのこついてくる、てめえが悪い!」
「わーん、やめてっ」
バリバリバリバリ・・・・!!
「どわああ!!! てめえ、やりやがったなあ!」
「あ、蛮ちゃん! 天井にヒビが・・!」
「・・・・・・・え?」
振り上げた蛮の拳がガン!と天井に突き刺さり。
恐る恐る見上げる2人の姿を映しだしたまま、天井一面に張りこめられた鏡がパリン!ときれいに割れて、次の瞬間粉々になって天井から降り注いだ。
「だああああああ・・・・・・!!」


結局、部屋の弁償に奪還料は消え、二人はおなかをすかせたまま、ヤることもできないまま、スバルに戻ることになってしまった。
「ちくしょー。今度こそ、絶対ヤってやる」
煙草をくわえたまま一人ぶつぶつ言う蛮に、銀次が隣のシートで思わず肩をすくめてため息をつく。
「蛮ちゃーん、おなかへったぁ」
「うっせー!おまえが電撃なんかしやがるから!」
「だから、ホテルよりも先にご飯にしようって言ったのにー」
「おまえが大人しくイレさせねーからだろ!」
「トロ食べたかったなあ・・・・」
「しつけーぞ、てめー」
「だって蛮ちゃんがさー」
ガン!
「もう、痛いなぁ! あ。でもオレ、別にエッチしなくても蛮ちゃんのこと大好きだよ。ねー、蛮ちゃんは・・・いててててっ!!なんで殴るんだよー、もう!!」
いきなりガンガンと殴られて、銀次が頭を押さえて助手席にうずくまる。
照れてるんだと思いながら、ちらっと見るなり、蛮がぎろっと銀次を睨み付け、やおらぐいっと胸倉を引き寄せると噛み付くようにキスをした。
「んん〜〜〜〜っ! ば、蛮ちゃん、運転! ま、前みて、ったら、前! あぶないよ、危ないったら、ねえ! 蛮ちゃああん!」
蛮の運転するスバルは、蛇行運転をしつつもどうにか前を行く車をやり過ごし、クラクションの嵐の中、どうにか目的地である「ホンキートンク」に辿りついたのだった。
(と、とりあえず何か食わしてもらわねーと・・。銀次とヤル前に飢えて死んでちゃたまんねーからな・・!)



つづく・・








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蛮ちゃんだったら、かーなーり下品なことを言わせたりさせたりしてもオッケイかなvと思っている私なのですが、ど、どうでしょうか?
なかなか最後までいけない蛮ちゃんですが、こういうのもすごく楽しいので、このパターンでまた続きを書きたいと思っていますv