いや、これはむしろ。
温度差っつうよりは、認識の違いか?
だってよ、普通な、そういう目的でラブホにわざわざ来てんだぜ?
ってことはよ。
まあ、することは1つだわな。
当然、ベッドじゃなく、そのシーンが風呂場に移ろうが。
そいつは、変わらねえもんなんじゃねえのか。
先に一発風呂で楽しむかって、そういうことにならねえか?
――オイ。
「わぁいv クロール〜v」
「こら、泳ぐな! つか泳げる広さじゃねえだろうが!」
「そうだけどー。でも普通のホテルのお風呂に比べたら、ずっと広いじゃん!」
「そりゃ、そうだがよ」
「うお、気持ちいーい! けど寝そべって、ばたばた出来るって。浅いね。このお風呂」
「あーあ、風呂に入りながら、いろいろできるようにな」
「いろいろ?」
「おうよ」
「ふうん?」
言っとくが。
少なくとも、クロールじゃねえぞ。
浅い風呂に俯せになって、嬉しそうに足をバタバタする銀次を横目で見る。
肩で落とす溜息は、もはや最大級だ。
なんでこうなる?
まったく。
一緒に風呂入るっつーのが、なんでこうエロくならず、健全ムードになっちまうワケよ。
銀次とオレが寝そべっても、まだ余裕があるそのハート型のピンクの浴槽は、えらく銀次の気に入りになったらしい。
まあよ。
それも、普通ならな。
浅い浴槽なんだしよ。
銀次は俯せてやがるワケだから、かわいいケツが湯の中にぽっかりと浮かんでる、至極目に愉しい姿なんかが拝める筈なんだが。
このバカ。
この期に及んで、腰にタオルなんぞ巻いてやがってよ。
これじゃあ、一緒に銭湯来てるのと何ら変わりねえだろがって。
いや、そんなこと言ってる場合じゃねえか。
このままじゃ、風呂上がっても、ビール飲んでテレビ見て、じゃあお休みーってなことになりかねねえ。
今のうちに、軌道修正しとかねえと!
「ねえねえ、蛮ちゃーん。ハート型でかわいいよね、このお風呂」
「あ? まぁな」
「ねえ、けど。ここんとこ、枕みたいに窪んでるよ? これ何?」
「頭置くのにちょうどいいようになってんだよ。横に手すりついてっだろ」
「あ、うん!」
「ソコに頭置いて、手すり、コッチの手で握ってな。オラ、握ってみろや。仰向けになって」
「―ん? こ、こう?」
「そうそう」
いい調子だ。
言われるままに、浴槽の縁のある窪みに後頭部を置き、ちょうどハート型の曲線部分の終わりあたりに付いている手摺りを握って、湯の中に横たわる銀次を、オレはにやりと見下ろした。
寄り添うにように隣に行き、そのまま唇を塞ぐ。
いつもながら、男とは思えねえぐれえ、やわらかくて甘い唇。
「…ん」
一瞬身体を緊張させたが、宥めるようにやわらかく口内で舌を絡ませると、あっさりとオレの腕の中に身を寄せてくる。
もともとキス大好きの銀次は、普段から、キス一個でナナメになった機嫌も真っ直ぐになるという便利なヤツで。
頬を手のひらに包むようにしてやさしく口づけると、それだけで琥珀の瞳がとろんとなる。
これがなかなかに色っぺえ。
片腕で銀次の肩胛骨のあたりを支え、キスを繰り返しながらオレのもう一方の手が、頬から首筋を伝って肩に降りていく.。
なんのかんの言いつつ、蛮ちゃん、めちゃめちゃヤサシイです。
思いっきり「銀次が可愛い、可愛い」と内心で惚気ております。
全頁まんべんなく、ラブラブです(////) はははは。←渇いた笑い。
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