<思い出の鍵> 握らされた一つの鍵、ただギュッとしまい込み、振り返らずに旅に出た 私はいつか帰るために旅する、土産は元気な笑顔にしよう ……そう決めて 目指す場所は鍵穴のある場所、何処かも知れぬ未踏の地 意味もなく風が同伴した その友を連れて旅路を歩む 何度も挫折した 雨振る荒野は何故こんなにも寂しいのか 何度も諦めた 雪降る岩山はなぜこんなにも悲しいのか 何度も、なんども 宿場町で暮らしてしまうのも悪くは無い けれど、ふとポケットに手を入れては思い出す 小さな鍵を見て思い出す 何よりも大切なあの町を 送り出してくれた人々のあの声援を 『頑張って行って来い!』 小さな、小さな鍵を握り締め、 ―――また、歩き出す 遙か遠くの鍵穴を目指して 目に浮かぶ静かな記憶と 遙かな旅先に見た景色が重なった。