猛->(時は現在……より1週間の過去) 猛->(相変わらずのバイトの激務にクタクタになって帰宅する少年の姿があった。……辺り はすでに暗い) 猛->この時期命綱一本でビルの窓拭きとか、あり得ないだろ……あああ思い出したくねぇ 猛->(作業服のまま自転車をこぐこの少年の名前は浅野猛、紫格高校に通う三年生である) 猛->……さて到着、と。ただいまー 猛->(『ガタッ、バキバキバキッ!』といつものように立て付けの悪い引き戸を開けて玄関 に立つと……彼はとんでもないものを見つけた) 猛->(即ち『差し押さえ』とか書かれてる、赤い札。そしてそれの貼り付けられてる数少な い我が家の家具たちである、……玄関に纏められていた) 猛->………な、なんですかコレは 猛->卓>あ、オカエリー兄ちゃん。………ああこれね、ついに父さんがリストラされたんだ って 猛->卓>時間の問題だろうと思ってたけど、今日になるとはね…… 猛->いや、それはまぁ納得できるんだけど(できるのか) ……だからってなんでいきなり 差し押さえなんだよ。普通リストラでも退職金ぐらい出るだろ? 猛->卓>ああ、それは……(遠くを見つめて) 母さんがリストラって聞いてやけになっち ゃってね、競馬で『アキアララ』に借金してまで大金注ぎ込んじゃったんだよ 猛->…………… 猛->………(同じ方向を見て)……バカ両親……… 猛->卓>で、今は加奈に尻を叩かれて再就職先探しに行ってるってわけ。……まぁ大変なこ とになっちゃったけどさ、兄ちゃんも疲れてるだろ? 取り合えず夕飯にしようよ 猛->期限切れたカップめんは夕飯とは言いたくないなぁ…… 猛->卓>じゃ、食べない? 遠慮なく貰うけど 猛->食べないとは、言ってない 猛->(そんなこんなで、彼の貧乏生活は限度を超えてしまった……) 猛->(バイトの量も1.5倍に増え、もはや高校にさえ行けないかと考えていた……そんな 時だった) 猛->(一通の手紙が、彼のもとへと届いたのは) 猛->「……あ、あぶねぇぇー……だ、だだだ誰だよっ矢文なんて射りやがったのはっ!?」 (股の間にスコーンッ!と狙ったかのように刺さっている、矢) 猛->ったく……(と言いつつも読んでみる) 猛->(そこには深夜3時、1人で公園に来いと書いてあった。……借金を返済する手段を伝 える、と添えられて) 猛->(怪しいと思った猛だが、藁にもすがる思いで深夜……そこに行った) 猛->(そこで待っていたのは。……黒スーツの男達に囲まれたジェントルマン風(サングラ スかけてる上にマッチョだが)の装いのスキンヘッドの男だった 猛->………ド、ドチラサマデショウカ?(か、帰りてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ) 猛->??>失礼、私はこういう者です。以後、お見知りおきを。(野太い声と共に渡された のは、『株式会社エレニック・代表取締役・斉藤獅子』などと書かれた名刺だった) 猛->エレニック? ……って、あの車とか電化製品とか作ってる? スゴイナー(絶対ウソ だろって顔で) 猛->獅子>(指を鳴らす獅子、トランクケースから出てきた大量の札束、十字を切って「… 信じます」と誓う猛。この間12秒) 猛->獅子>突然だが、君に会いに来たのは他でもない。君の非凡なる才能をぜひとも活用さ せて欲しいと思い、スカウトに来た 猛->非凡? ……俺が? まっさか 猛->獅子>それは次期に分る、我々に協力してくれればだが 猛->……君は、悪魔という存在を信じるかな? もし信じるならば、―――悪魔祓い(エク ソシスト)になってみないか 猛->エクソシスト……おいおい、確かに金は欲しいけど、そんな怪しい言葉が信じれるわけ ないじゃないか 猛->獅子>……例えば、君の母親が『強欲』を司る悪魔に取り付かれてると言ったら。どう するかね? 猛->………ウソ、じゃないのか……? 猛->獅子>契約書は渡しておこう、そこに電話番号も控えてある。自分の目で確かめ、その 気になったら再度連絡して惜しい。 猛->獅子>夜分遅くに失礼したね、……それでは、失礼 猛->……… 猛->獅子>もし協力してくれるならば……無論報酬は用意しよう。例えば、契約金として君 の借金は消えるだろう。……もっとも、選択は自由だがね 猛->(サングラスをかけなおすと、男は去っていった) 猛->………俺が、悪魔祓い? 猛->(……後日、彼は契約書にサインすることになる。悪魔の姿を、その目で見たのだから ……) ジロー->(2025年、春――) ジロー->(都心のとあるアパートに、一人の青年が段ボール箱を運び込んでいる) ジロー->ひぃふぅみぃよー…よーし、これで全部運んだ(荷物の数を数えて、一人頷く) 猛->(バババ、バ、バ、バ……ッ!!!!! と、そこに窓ガラスが割れそうな凄まじい音 が鳴り響いた。聞きなれた音ではないがテレビではたまに耳にする、ヘリの音だ) ジロー->(部屋に一人しか居ないのに、にんまりと笑っているこの青年は曽根崎 ジローと 言う) ジロー->んー?何の音かなー?(にんまりしたままドアの外に出る) 猛->(そう気付いた直後に、目も開けていられないほどの強風がジローの体を襲い。中身が 空になったダンボールなどは容赦なくぶっ飛んでいった) 猛->(軽く悲劇である) 猛->(そんな状況にお構いなくなのか……アパートの上空をホバリングしているヘリから、 ツゥー……と一本のロープがたれ。それを伝ってレスキュー隊のような動きで降りてくる 影がある) ジロー->(容赦のない強風に襲われ、玄関で思いっきりこけてしまう。しかも後頭部強打 だ!) 猛->(黒スーツ姿のそれは、完璧なビジネススタイル、……なのに何故か絶対に堅気に見え ないサングラスとスキンヘッド。そんな男は体を揺らして手すりに手をかけると、ヒラリ と降り立った) ジロー->………あはは、痛いやー…(後頭部を押さえながら起き上がる) 猛->獅子>……おや、失礼。驚かせてしまったかね? (ネクタイを直しつつ、ジローとは 限りなく別種の不適な笑みを浮かべた男が立っている) ジロー->…どちら様ー?新聞の勧誘はお断りですけどー(軽い悲劇を体感しながらも表情は 崩さす、スーツの男を見て話しかける) 猛->ハハハ、勧誘は間違ってない。……ただ、私は新聞よりいいものを君に持ちかけ来た。 さて、先ずはコレを(名詞を渡す獅子) 猛->ミス)獅子です 猛->(軽く悲劇である) 猛->(そんな状況にお構いなくなのか……アパートの上空をホバリングしているヘリから、 ツゥー……と一本のロープがたれ。それを伝ってレスキュー隊のような動きで降りてくる 影がある) ジロー->(容赦のない強風に襲われ、玄関で思いっきりこけてしまう。しかも後頭部強打 だ!) 猛->(黒スーツ姿のそれは、完璧なビジネススタイル、……なのに何故か絶対に堅気に見え ないサングラスとスキンヘッド。そんな男は体を揺らして手すりに手をかけると、ヒラリ と降り立った) ジロー->………あはは、痛いやー…(後頭部を押さえながら起き上がる) 猛->獅子>……おや、失礼。驚かせてしまったかね? (ネクタイを直しつつ、ジローとは 限りなく別種の不適な笑みを浮かべた男が立っている) ジロー->…どちら様ー?新聞の勧誘はお断りですけどー(軽い悲劇を体感しながらも表情は 崩さす、スーツの男を見て話しかける) 猛->獅子>ハハハ、勧誘は間違ってない。……ただ、私は新聞よりいいものを君に持ちかけ 来た。さて、先ずはコレを(名詞を渡す獅子) ジロー->(名刺を受け取り)…エレニック…(聞いた事あるけど何処だっけ?とか思ってる) ジロー->まぁ、立ち話も何なんでどうぞ〜(名刺を懐に入れ、中に入るように促す) 獅子->(時間はないがここで目立つのも悪いだろうと考え)……では、お言葉に甘えて 獅子->(※すでに十分目立ってます) ジロー->で、社長さんがオレに何の用ですか?(さっきの強風のせいで中は散らかり放題だ が気にせず空いてるところに座る) 獅子->(ビジネスマナーを完璧に守って座ってるのに、何故かヤクザの親分があぐらかいて るようにしか見えない) 獅子->ふむ、率直に言おう。君には特殊な『能力』がある。……他でもない、君の眠れる才 能を我が社で活かして見ないかと私は勧誘しに来たのだよ 獅子->……君は、悪魔という存在を信じるかな? もし信じるならば、―――悪魔祓い(エ クソシスト)になってみないか 獅子->君にはその『能力』がある ジロー->……いいですよー?(即答、迷いもなくあっさりと) 獅子->それはありがたい、……が、本当に即答に決めてしまっていいのかね? 悪魔との戦 いは、生死をとした物になるのだが……(サングラスの下から、真剣な目が見据えている) 獅子->(本気か、否かを一瞬で見抜いてしまうかのような鋭い眼光が……) ジロー->今…大変な事態なんでしょ?エレニックの社長さんが直々に勧誘に来るぐらいだ し。あんたの目は相当真剣そうだし。何より… ジロー->――面白そうだしねw(にんまりと、笑みを深める。本気のようだ 獅子->ならばその言葉、ありがたく頂戴させてもらうとしよう。……全く、君のような若者 ばかりなら私も苦労しないのだがね(相貌を崩し、軽く笑みを浮かべ) 獅子->……さて、コレが契約書になる。心が決まったらここにサインして欲しい(紫色の、 なにやら簡素な紙を渡す) ジロー->(契約書を受け取り、ざっと目を通して…) ジロー->ま、楽しくやっていきましょーやw(また、にんまりと笑うのだった) 獅子->(内容には『指令を受けた時は如何なる場合で現場に急行し、悪魔を滅すること』『定 期的に支部所に報告に来ること』『振込みについて』……などなどがが書かれている) 獅子->君が楽しめると言うのなら、それが一番だな。……ふふ、かく言う私も心から楽しん でいるよ(意味ありげに笑う獅子、その笑みには60年近い重みが感じられた) 獅子->それとこっちが『メンバーズカード』となる、報酬はコレを通して引き落とせるよう になってるので無くさないように。(そう言って、ジローに青いカードを渡した) ジロー->(カードを受け取る) 獅子->……では、私はそろそろ失礼するとしよう。次の仕事が待っているのでね ジロー->はーい、お気をつけてー(手をぷらぷらと振る) 獅子->(颯爽と玄関を越えて、更にその先の手すりまで飛び越え、先ほどのロープに飛んで 掴まる獅子。風で揺れるロープに一発で掴まるって何者だろうか) ジロー->(獅子を見送ると、部屋を見回し)…さて、ペンと印鑑を探さないとねぇ(腕まく りし、気合を入れるかのように) 獅子->フハハハハハッッッ――――――!!! (彼は意味不明な笑い声だけを残し、片手 ではしっかりと手を振り替えしながら去っていった) ジロー->……楽しくなりそうだね、ホントに 獅子->@刑務所なのか……そんなところにまで現れる獅子っていったい 戒人->@獅子だし(ぉぉ)ではいきますー 戒人->(舞台は――アメリカ。アメリカ合衆国所属テキサス州。 特 A ラ ン ク 犯  罪 者 収 容 所 ≪ ブ ラ ッ ク ・ ペ ン タ ゴ ン ≫) 戒人->(名の通り、五角形を模した建物に収監されるのは何れも特Aと呼ばれる犯罪者達。 並の犯罪者が幼稚に見えるほどの者達の監獄である此処には、オリンピッククラスの肉体 を持つ者も多数居る) 戒人->(政治犯、思想犯、殺人犯。様々だ。此処には、本当に様々な、漢達が存在(い)る。並 の人間では、到底辿り付けない位置に居る男達が、存在(い)る) 戒人->(其れ故の、私語さえ禁止する徹底した管理体制、世論を唸らせかねないほどの監視 体制、即発砲許可――) 戒人->(此処を脱獄することは、特Aと呼ばれる彼等さえ出来ない。其処は、荒野に佇む≪ 不自由の砦(ブラックペンタゴン)≫) 戒人->(……其の、刑務所の一角。一切の無駄無き施設に、一切が無駄な部屋がある。奇妙 な、部屋がある) 戒人->(先ず、普通の通路からは其処へ行けない。そこに行くには、そこへ辿り付く為だけ の別途の扉を通る必要があり…) 戒人->(次に、扉を開ければ。そこは空調の効いた、高価(たか)そうなカーペットをはじめ。 美術館かくやと言わんばかりの品が並ぶ通路。それを通り…) 戒人->(更に、意匠を凝らした重い扉を開けて辿り付く其処は≪VIPルーム≫。そう、呼 んで差し支えない部屋だろう) 戒人->(ホテルの一室、スウィートルームさながらのその部屋の名は、そこもまた、 ≪ 監  獄 ≫ だという) 戒人->(そして其処に収監…いや、棲(す)む男が居るという――) 戒人->(世界最拘束の刑務所を自由に出入りする、労働も、服役も、罪を悔い改めることも しない世界最自由の ≪ 囚 人 ≫ ――夾 戒人) 戒人->(和名とは程遠そうな欧米色が強い顔。色素の薄い茶髪に、灰色の瞳を持つ男は今も また。自由に振舞っている) 戒人->(今日は、古い友人が、訪ねてきた…上等なコニャックと、それに良く合うブルーチ ーズが置かれた机を挟んで座るのは、勿論、戒人…そして、その対面の相手は……) 獅子->(ドカリ、とここでは礼儀など無用だと知っているのか……その男。斉藤獅子という 男は我が家のように腰を下ろした)Good evening. Wonderful convict. 獅子->(訳:こんばんわ、とんでもないな受刑者さん) 戒人->……もしかして、そんな皮肉めいたこと言うために、そこまで勉強したのか?(日本 語でいいと言ったのに…と、呆れたような、感心したような笑みを浮かべながら…) 獅子->相変わらずの暮らしっぷりだな……(ゴクリ、とカップを傾け)……ここまでいい酒 が揃ってる監獄は他にない、色々な監獄を見てきたがね 獅子->今時のビジネスマンは英語ぐらい話せんとな(軽く肩をすくめ) 戒人->≪世界最自由(アンチェイン)≫が棲(す)む場所だからな。とは言え、最近、酒の質が 落ちているのは残念だが… 戒人->…3年前まではさっぱりだったくせに。で、今回は、そのビジネスかな?(足を組み ながら、グラスを手に取り) 獅子->ならば是非日本に来ることをオススメしよう、国外不出の日本酒の味を教えてやろう。 ……無論、ビジネスさ、お前にとってはこの横文字は『戦い』と訳すのだろうがね 獅子->(そういうと、獅子は徐に厳重に鍵の施されたトランクをテーブルの上に置き、開く) 戒人->……ショウチュウとか?(首を傾げてから)…まったく相変わらず失敬な。戦う以外の ビジネスもしているというのに…(トランクへと目を落としながら…) 獅子->(………中には、異様なまでに『銀色』に鈍く光る金属であしらわれた一対のグロー ブが入っている) 獅子->せっかくの訪問だからな、”土産”を用意してきた。……コレが何か分るか? 戒人->…………(眼を細め…)…人や獣を殴り飛ばすためのモノじゃないな。 獅子->(軽く頷き、口の端を釣り上げる笑みを浮かべる)……そう、これは“この世に存在 しない物”を殺す為の武器だ。そして今回のビジネスにおける“商品”となる 獅子->……お前は、悪魔という存在を信じるかな? もし信じるならば、―――悪魔祓い(エ クソシスト)になってみないか 戒人->……。…最近、悪魔というモノが流行っているらしいな。知っている、知っているさ …ここは、世界の闇が集まる場所の、一つだからな。 戒人->もしかしたらと嫌な予感がしていたが。全く、か弱い受刑者にまでこんな話を持って くるとは…(やれやれ、と大げさに溜息をつき… 獅子->相変わらず情報が早いな。ならば話も早い、悪魔(マルバス)は実在する……。なに、 受刑者生活にもそろそろ飽きてきたころだろう? 獅子->どうだ、今回の敵は簡単には壊れんぞ………お前でも、幾分か楽しめるかと思ったの だがね。(コニャックを傾け) 戒人->……ついでに、人や、熊をぶん殴るのにも飽きてきた頃だ。…オマエがそう言うなら、 間違いは無いのだろうな。 戒人->…今の世の中…私が思い切り殴れるものがあまりに少ない。良かろう、いい暇潰しに なる。そろそろ、帰国中の≪葵≫に会いに行かねばと思っていた頃だ 獅子->なに、儂も今時分そいつらを壊すのに凝っておってな。(片手を伸ばすと、サッと黒 服が巨大なパイルバンカーを渡す)……こいつで、遊んでいたところだ。(壮絶な笑みを浮 かべる) 獅子->なるほど、彼女も帰国中だったか。ならば今度のディナーには是非とも2人には招待 状を送っておかねばな 戒人->クク。オマエが遊べるというなら、それこそタノシミだ…(獅子とはまた別の、しか し鬼のような笑みを浮かべながら…) 戒人->あぁ。そうだな。ついでに、鷹坊や、話しに聴くリース嬢とやらにも遭って見たいこ とだし。是非。 獅子->ハッハッハそれは期待しているといい、あいつらなら期待は裏切らんからな。後悔は するかも知れんが(意味深な笑みを浮かべ、さてと、と席を立つ) 獅子->そのときは、気に入りの一本を紹介してやろう……。さて、もう次の仕事か 戒人->…相変わらず忙しいようだな。しかし、ま、私も荷物を整えたらすぐに行こう。楽し い旅行に、準備は欠かせんからな…… 獅子->忙しいときほど楽しい性分なのは相変わらずでな。では、Moreover, let's encounter it.  (上着を翻し、黒服を従えて彼は去っていく) 戒人->……(目線だけで見送ってから…実に楽しそうな笑みはそのまま。己もまた、身を翻 す。楽しみに、思いを馳せながら…) 獅子->フハハハハハハハッッッ―――(意味深なのか、無意味なのか、笑い声だけが響いた)