<怖くないから> 「ぎ、ギリギリだ……。中学生の身分で料金支払うのも大変だなぁ……」  と、私は独り言を漏らす。  場所は優しい暁の光で包まれている町の一廓、私はマク・アヌの橋の上で揺ら揺らと行 きかう小船を何となく覗いている。  味のあるデザインのこの乗り物は、普通の人ならば気持ち良さそうとか、優雅だと言う 感想を抱く所だろうけど。私は、やっぱり使用料いるんだろうなぁ……と、何よりも先ず 最初にこう考えてしまう。  発想の出所が違うと言えば聞こえは良いけれども、あまり嬉しくは無い。  貧乏性だなぁ、私……。  まぁ、リアルがあんまり裕福じゃないのは確かだから仕方ない事けど。 「来月どうしようか……」    最悪アイツに借りてでも……。私の脳裏に友人から少しだけ借りようかと考えが巡った。 が、すぐに思い直した。 い、いやだ、中一の身分で借金地獄なんて絶対嫌だ……。 そう、アイツはとんでもなく吹っ掛ける事で有名なのである。 そんな事を考えていた時だ、不意に背後から妙に気になる声が聞こえた。 振り返ってみれば、私よりも大分レベルの高そうな重斧使いが私と同じ様な格好をして 呟いていた。……多分パーティモードで聞こえない様にする事を忘れているのだろう。 「今月は残金無しか、来月払えるかな……。いざとなったらセレアさんに頼んで……。い、 いや、それはだめだ」  何だか凄く親近感が湧いた。 「ですよね! 料金払えないのは辛いですけど、知り合いに借りるのも厳しいものがあり ますよね!」  私は思わず手を取って熱く語ってしまった。  ゲームの中とは言え、同じ境遇の人と出会えたのが酷く嬉しかったから。最近の家庭は 皆裕福なので、こんな話題で盛り上がる事が出来なかったのが原因なのだろう。 「そう、そうなんだよ! 借りれないよねっ!? うちは両親に期待できないし、節約が 第一ってこの歳で悟っちゃった位なんだよ」  相手の重斧使いさんも私と同じみたいだ。凄い乗り気だし、何だか同じ匂いがする気が する。  類は友の呼んだのかな。 「やっぱり蛍光灯は一本抜きますよねっ!?」  一本でも十分明るいと自分を信じ込ませて。 「ああ、それに夜間電力で洗濯するよ?」  夜間料金は昼間より安いからと自分を叱咤して4時に起きる。 「うちもです!」 「君の所もか!」  ガシッ!!    何故だか知らないが友情が芽生えた気がする。  私達は意気投合してパーティを組むと、暫くパーティモードでお互いの苦労を語り合っ た。  マク・アヌ橋の上でお喋りとは中々お洒落かも知れないけど、話の内容は随分と現実的 だった。  この重斧使いさん……ウィールは、リアルでお父さんが冴えない印刷会社に勤めていて 給料が低く、しかもリストラを心配しているみたいだ。 私のとこは自営業だから大変なんだって思っていたけど、やっぱり大変な所は大変みた いだ。 私達はお互いの節約術の知識を交換してメモ帳で保存すると、ようやく自分達がゲーム をしている事を思い出した。 しかもウィールの方は待ち合わせをしていた事まで忘れていたのか、ハッとした顔をして いる。 「そう言えばアーザスと4時に待ち合わせてたんだ……」    因みに今は4時15分。 「丁度いい、アーサも手伝ってくれないかな? アーサと話していて遅れて来た、って言 えば(多分)アーザスも納得するだろうし」 「それは良いけど、アーザスって?」 「会えば分かるよ」 (………何で?)  まぁ、暇を持て余していた事は確かだし。私はウィールに付き合ってあげる事にした。  世の中助け合いなのだ、……特に貧乏人には。  ひょろりと背の高い少年の重斧使いと、外見の割には少しませた格好をした背の低い少 女剣士は、暫くの間マク・アヌの表通りを歩いた。  少しアーザスさんと、もう一人の仲間セレアさんの話しを聞きながら、街路を歩き続け、 行きかうPC達の間をすり抜けて、私達はカオスゲートが見えて来る辺りまで差し掛かった。  ウィールさんの話ではカオスゲートの前で待ち合わせをしているので、そろそろ見えて きたあの二人がそうだろうか? 待っていた内の一人は腕組をして目を閉じている(寝てる?)黒い服に黒いマントを着 た色黒の体格のいい弓使いさん……多分この人がアーザスさんだ、と。 手をおしとやかに前で交差させている(聖母さん?)アーザスさんとは対照的に白を基 準にしたゆったりと長いローブを着ていて、腰まである金髪が綺麗な美人なPCが立ってい た。多分この人がセレアさんなのだろう。 二人とも誰かを待っているような仕草をしていて、案の定コチラに気付くと手を振って くれ……。 「遅刻するとはいい度胸だウィールッ!!」  この距離でも問題なく会話できるみたいだ、アーザスさんは。  だけど私では、多分ウィールさんでも声が届かないので、私達は近くまで走っていった。  勿論この上なく一目を引いたみたいだけど、それは取り合えず無視する事にした。 「ゴメン、つい話し込んじゃって……」 「そう、私が呼び止めてしまったんです。だから、その……、大声で怒鳴るのはよしてあ げて下さい」  大声で怒鳴るは言い過ぎたかな……、逆に怒らせてしまったかも。  ああー……、口下手な自分が恨めしい……。 節約の話題だとあんなに喋れるのが不思議だ。って言うか何でだろう。 兎に角、私はアーザスさんが怒鳴るのを止めて欲しかった、多分あの声はマク・アヌの 半分くらいの人に聞こえただろうから。 「そうね、さっきのは流石の私も耳が痛かったわ」 「セレアまでそう言うか、しかたねぇなぁ……」  そう言ったアーザスさんの口調は凄く残念そうな感じだったけど、何故か口元は笑って いた。  そしてアーザスさんはそのまま私とウィールを順に見比べる。………何でだろう? 「あの、すみません、突然変な事を言って……。あ、私はアーサです、弱いですけど剣士 をやっています」  ああーーー、順番が無茶苦茶だーー!  何やっているんだ、私〜〜。  内心は混乱と羞恥で一杯になってしまったけど、何とかそれは外に出さないよう頑張っ た。けど、直ぐに割れて溢れて出てしまいそうだ。 「そうか、さっきは悪かった。俺はアーザス・ファルクだ」 「私はセレア・フレイス。アーサ、宜しくね」    はぁ……。 私の中で一気に緊張が抜けた。 怒鳴ってたから凄く短気な人かと思ったけど……、どうやらアーザスさんは地声が大き いだけ(だけかな?)みたいだ。 セレアさんもこの上無く良い人みたいだし、良かったぁ……。 私が安堵の表情を浮かべてセレアさんを見ると、セレアさんは「気にしないで」っとば かりに微笑んでくれた。 絶対良い人だ、うん。  アーザスさんはチラリと私の剣に目を向けると、直ぐにウィールに向き直った。……何 だか、心なしか楽しそうでしょうがない様な表情だ。  色んな表情が出来るんだなぁ、The Worldって……。  私は場違いだけど感心してしまった。 「な、何? アーザス、ゴメンって!?」 「女ずれとは隅に置けねぇなぁ、ウィール」  ほえっ? 「ふふ、そう言えば仲が良いのね、二人とも」  えええっ?  そう来ましたかっ!? 「ちょ、ちょっと二人とも……」 「そんなんじゃないですよー。節約の話をしていただけですって」  一応私達は弁解してみたけど、セレアさんは兎も角アーザスさんには効果が無いみたい だった。  何だかメモ帳取り出して何かを素早く書き止めているみたいだ。  因みに説明書に寄れば最近追加された新機能だそうで、簡単に文章を作成して『紙』と して保存できるらしい。  何となくだけど、アーザスさんが何を書いているのか判った気がする。 「なるほど、ウィールはロ………」 「あ゛あ゛っ!? 閉じろっそのメモ帳!! 今直ぐ、絶対保存するなっ!」  やっぱり。  と言うかウィールもそこまでリアクションしなくても……。  私嫌われてるのかなぁ……。 ちょっと心配になって来た。 「まぁ、何だ、頑張れよお二人さん!」  ウィールのメモ帳を引っ手繰ろうとした手を、何の苦労もなくヒョイと交わすと、アー ザスさんはそのまま転送されてしまった。 「あ……、しょうがないわね。私はアースを追うから…………二人とも頑張ってね?」 「セレアさんまでっ!?」 「冗談よ、また会いましょう」  そう言うとセレアさんも転送されてしまった。  残ったのは微妙な表情で立ち尽くしているウィールと私だけだ。  ついでに言えば野次馬もいた気がするけど、それは金輪際無視する事にしよう。 「ふぅ、仕方ないなぁ……。アーサはΔでレベル上げしてるんだよね? 折角だから一緒 に行こうか」 「はい、お願いします!」  んーー、まぁ、アーザスさん達の事は置いといて。 ウィールが居ればΔで負ける事なんて無いだろうし、これで良いよね。多分。  私には恋愛経験と言うものは無かった、だからそれは置いておく事にしよう。  分からない事で色々と考えても、結局答えは出ないものだから。 「ワードはアーサが好きに決めて良いよ。俺は何処でも大丈夫だし」 「分かった、じゃあ……『Δ咲き誇る 水辺の 草月花』!」  またまた趣味丸出しなワードを決めてしまった。  しかも転送前にレベル確認するのも忘れてるし……。  成長しろよ、私……。  そんな事を思っていても転送は止まる訳もなく、私は黄金の輪の心地良い旋律を聞きな がら転送を開始した。  ふと横を見てみると誰かがカオスゲートから帰って来たらしく、私の輪と少し重なった 気がする。しかしそれを確認する時間も無く、私はマク・アヌから消え去るのだった。 「さーて、到着だね。きっと綺麗なワードだから楽園みた…………」  エリア属性:『闇』  天候   :『雨』  レベル  :『20』 「………」  辺りは一面ギリギリ手前20m見える位に暗く、BGMが全く流れない中でザァザァと雨 の音だけが聞こえる。  凸凹の多い地面には泥濘が沢山有って、歩くたびにチャプチャプトと音がする。  しかもグラフィックチームの汗と涙の結晶なのか。ご丁寧に、PCが濡れると確りグラフ ィックも濡れた物に変わるみたいだ。 「……ねぇ、そう言えば雨の音以外に何か聞こえない?」  私は一瞬ウィールが気を利かせて嘘を言ったのかと思った。しかし聞き耳を立ててみる と、微かにだがPCの声らしい音が聞こえた。  何を喋っているのか分からないけど、私は何故か駆り立てられる思いがして、直ぐにそ の音がする方向にバシャバシャと走り出す。 「やっぱり気になるよね」  ウィールも重斧使いなのに直ぐ私に追いつくと、同じくバシャバシャと水を跳ねながら フィールドを駆けた。  途中幾つか魔法陣を開いてしまったけど、そんな事は気にせずに突っ走っていく。  ……やがてモンスターが追ってこなくなった頃、私達は『そこ』に到着した。  無残にもPCがPCによって串刺しにされている場所に。  串刺しにされているPC、双剣士らしいそのPCはまだHPが尽きていないらしく、苦し げにもがいている。 だがそれは串刺しにしている方のPC、重剣士らしいPCがシュビレィを使って動きを封 じている為に上手くいかない。    相手が死に掛けて、もがき苦しむのを楽しんでいるのだ。 「何か言えよ……、今の気分とかさ?」 「………」 「だんまりか、……それも良いかな。別に」  その光景を、初めて見た本当に邪悪な笑いをするPKを見て。私は怒りを通り越して、殆 ど殺意まで抱いた。  そしてそれは、既に抑えられない所まで来ている。  抑える必要は無いと思った、相手がPKを何とも無いと思っているのなら、コチラもそれ を全部叩き返してやろうと思った。  私は、………ッ! 「待って、君が行ってはダメだ……」 「でもっ!」  目の前にてが有った。 私を止めようとする左手、ウィールの手……。 「俺ならチートキャラ相手でも、あのPCを引き離す事くらいは出来る筈……」 「……分かった」  私は二人分のアプドゥを掛けると、ウィールが動くのを待った。  そして待つ必要は無かった。  ウィールはギリギリ見通す事の出来た20mを全力で走り抜けると、その勢いの付いた 体で重剣士に体当たりをぶちかました。  体重の無さそうなウィールだけど、Ωサーバーに行けるほどレベルが高いだけに重剣士 は見事に吹っ飛んだ。見晴らしが悪くて気付かなかったのも原因なのだろう、吹っ飛んだ 際に受身が取れず、そのまま串刺しにしていたPCを放り出し事になった。  ウィールは空かさずその双剣士と重剣士の間に割って入り、反撃の隙を与えずに連続し て重剣士を攻撃。威嚇を兼ねた強力な斧の連続攻撃で後退させる。  私はその隙に双剣士さんを抱えて戦闘から離れると、ありったけの癒しの水で回復に専 念する。  それ位しか出来ない自分が悔しかったけど、それ位をの事が出来る自分が誇らしくもあ った。  極小さい声だけど、「有難う……」と言われた気がした。 「うあっ……!」 「残念、チートキャラは強いだろ?」  戦況はまるっきり逆転していた。  さっきは不意を突いて押していたウィールだけど、現在は頻繁に回復アイテムを使いな がら攻撃を捨てて防御に専念しなければならないみたいになっている。行ってしまえば、 気を抜くと一瞬でゲームオーバーと言う所まで押されている。  これが私だったら最初の一撃で間違いなくゲームオーバーだっただろう。私はウィール の判断に感謝しつつも、何も出来ない自分を悔しく思った。何処までも。 「に、逃げてアーサ……」 「………く……。わ、……分かった」  私は唇を噛み、『私も戦う!』と言いたいのを必死で押さえつけながら。  何とか返事をした。してしまった。 「ありがとう……」  何でウィールが言うんだよ……、間違ってるよ……それ。  そう、言うのは私の方なのに、先に言わないでよ。馬鹿……。  私は泣きたかった、でも、泣く訳には行かなかった。  私よりも更に年下のような幹事の双剣士さんは、無言で泣かずについて来てくれていた から。  泣くのは、安堵する時の嬉し涙だけだと、私は自分と誓った。 ……そして、走った。  泣かないように、泣けないように。    後ろには反撃しようと必死に凪いだ斧を簡単に折られてしまったウィールの姿が、三人 称視点の中で見えてしまった。  私は視点を一人称に変えて、ただ走った……。  だけど、その走りも、まだ『戦闘終了』の表示が出る以前の段階で止まってしまった。  走っている途中で、何か黒い物にぶつかってしまったのだ。その拍子に双剣士さんも立 ち止まってしまう。 私は思わず目を瞑って走っていたから、不覚にも障害物にぶつかってしまったのだろう。 それと暗い闇のエリアなのも原因だろう。 「よう、冷やかしに来たぜ」  その障害物は喋った。 「あ、あのっ、ウィールが……」  数コンマ空いて、私はそれがアーザスだと知った。  そして言いたい事を伝えようと口を動かすが、何から言って良いのか分からなくなって しまう。 こんな時にまで喋る事を邪魔するこの口を今ほど恨んだ事は無かった。 「上手く喋れねぇのに、無理するなって」 「そのウィール君からメールが届いたから来たのよ? もう安心していいわ」  良かった……、でも、ウィールは大丈夫だろうか?  私は後ろで繰り広げられているであろう戦闘に目を戻した、ウィールは何とかまだ持ち こたえているみたいだ。  しかしゲージがギリギリまで減ってからしか回復しない所を見ると、回復アイテムはも う殆ど残って無いのかもしれない。  早く助けに行って貰わないと、危ない。 「アーザスさ……」 「もう行っちゃったわよ」 「はや……」  ここに来て初めて双剣士さんが口を開いた、けれども私は殆どその事を気にも留めずに アーザスさんを目で追う。  成る程、確かに物凄く早い。もうウィールの5歩前まで走りこんでいる。 殆ど拳闘士並だった、……あれで本当に新職業の弓使いなのだろうか? 「るあぁっ!!」 視界が悪くなる程の闇だ、アーザスさんの肌まで真っ黒な格好は全然見えなかった事だ ろう。 助走をつけたアーザスさんの強力な拳の一発が、さっきまでウィールを完全に圧倒して いた重剣士を爽快にぶっ飛ばす。 チートして限界以上に高い防御力が全く考慮されていないかの様に、重剣士は吹っ飛び 地面を抉りながら斜めに強かに体を叩きつけられた。そして恐らく1000を超える大ダ メージを被ったようだ。 弓使いは矢が無くなった時の為に、拳闘士程ではないが拳でもある程度攻撃出来るよう になっている。この攻撃はその延長線上の物なのだろうか? 「漆黒の荒鷹……」  と、重剣士が呟く。 しかし、既に重剣士の言葉を聞く耳を持った者はこの場に居なかった。 「てめぇに射る矢なんて無いなっ!」  何かの決め台詞だろうか?  アーザスさんは、その顔を見て抵抗を諦めたらしい重剣士に一瞥を渡すと。  容赦なく闇を闇を持ってして切り裂くような鋭い蹴りを叩き込み、有無を言わさずに、 多分PKKと言う事をやってしまった。 「アース、ご苦労様……」 「ゴメン、俺がもう少し強ければ……」  各自から労いの言葉を受けて、さっきまでPKが居た場所を見つめていたアーザスは振り 返った。  そして、ニカっと笑ってみせる。 「この漆黒の荒鷹の熱き拳に、敵なんて者は無いっ!」 「………」  豪快に高笑いをしているアーザスさんに、双剣士さんが遠慮がちに近付く。  さっきから何か言おうとして口をパクパクさせているけど、言葉に出来ないようで『…』 と表示されている。  きっとお礼を言いたいんだ。と、私は思った。  同じあがり性で口下手だから良く分かってしまうのだ。……この双剣士さんの方がレベ ル高いみたいだけど。 「あ、……ありがとう、御座います……」  蚊の鳴くような声だ、しかも雨が降る音で殆ど聞こえない。  だけどチャットウィンドウには確りと表示されている、今度はハッキリと伝わった事だ ろう。  私は雨の中で、さっきまであんな事が有ったのに、思わず微笑んでしまった。  微笑んだついでに気が緩んで涙が出そうだった、雨だから誰も気付かないよね? 「礼には及ばねぇな、俺はただ呼ばれて頼まれた事をやっただけだぜ? 礼を言うんなら 直に行動したこの二人に言ってやんな」  そう言われると、その双剣士さんは律儀にもこっちに向き直ると、ちょこんとお辞儀を した。  ま、まさか自分がお辞儀される側になるなんて思いもしなかったけど。そのお辞儀は心 が篭っていて、ゲームの中だろうと確りと気持ちが伝わってきた気がした。いや、伝わっ て来た。  凄く、嬉しくて。 気持ちが良かった。 「ねぇ、名前、教えてくれるかな?」  私はまだ名前も知らない双剣士さんが顔を上げるまで待って、聞いた。  文字だけならチャットウィンドウに表示されてるけど、まだ直には聞いていなかったか ら。 「僕は………、大地」  私達は、その後3つもダンジョンを廻った。 アーザスさんは一言一個行動を伴って面白いし、それに振り回されるウィールも可哀相だ けど面白かった。 大地も、その時は一緒に笑ってくれた。 セレアさんも暖かく微笑んでくれる。 笑顔が絶えないって、良く表現するけど。 良い事だ。 私は自信持って言い切れるよ。 ―――――――――――――――――――――――― プロットの段階で長くなる事は予想できましたが、これ程とは……。 申し訳無いです、最後まで妥協せずに書いたらここまで遅れてしまいました! 実際3時間で書いたのは半分位です、………次回は絶対間に合わせないと。