「はなばたけ」 『ひ、ま、………。うわ、死にそうだ………』  私は一人、聴くものが居ないパーティチャットで愚痴を溢していた。勿論、口のグラフ ィックは動いているかもしれないが声は外に漏れていない。  そして、今度は遠慮なく溜息を漏らす。  その位暇だった。  昨日はレインさん達と遊んでいたから良かったものの、いざ一人になってみると手持ち アドレスの少なさが身に染みる。少ないと言うか、レインさんとリースを除けば殆ど何も 無い空欄だ。 『やっぱり初心者は色々と苦労する物なんだね……』  と、又もや私は『独り言』を漏らす。……どうやら癖になってしまったみたいだ。  やな癖が付いたものだ。などと考えつつ、私はマク・アヌの落ち着いた町並みを練り歩 く……。  ここでは全てのPCが楽しそうに会話し、仲良くパーティで歩いている事が多い。多分こ の町のゆったりとしたBGMや、思わず懐かしくなるような背景のお陰なんだろうと、私は 思っている。  ここは人々の心の傷を癒してくれるような…… 「夢見てんじゃねぇぞっ!!」  ………癒されてる?  私は町の雰囲気お構いなしな声を聞いて、自分の考えを疑問に思ってしまうのだった。 他にも『ストーカー』や『ばかシーサー』等の単語が聞こえる。  一体何が起こっているのだろうか? 「ゆ、ゆうっち……。シーサーじゃなくてシーザー……」  バタリと誰かが倒れる音が聞こえた。  なるほど、癒されない人も居るものだね……。  でもチョッと楽しそうだな。   『リースに剣貰ったし……、ソロでレベル上げでもしようかな?』  私は先程見た光景は完璧に忘れる事に決めて、独り言を言いながらマク・アヌのPC通り が多い橋を渡る。そして、ふと昨日リースに貰った杖の事を思い出した。  貰い物の剣とは、この<Coronal>と言うレベル20のレアな剣の事だ。リース曰く、 Coronalとは『花冠』と言う意味の言葉で、偉大なる森の力が宿ったレアな剣らしい。確か に、ほんのり薄く緑に輝く刀身はレアな感じがして凄く綺麗だ。  やんわりとした細身の長すぎない刀身、片手で持ちやすく控えめだけど綺麗な装飾がな されている柄。何となく、大きなリボン結っている以外目立つ所の無い私のPCにも合って いる気がする。 ……因みに他にも強い剣が有るのにわざわざレベル20の武器をくれた理由は、自分の レベルと合わない武器は仕様によって装備できないから………らしい。  そうこうしている内にカオスゲートの前まで歩いてきてしまった。こんな事考えていて も仕方ないし、早速レベル上げにでも行こうかな。  兎に角私はそのCoronalが有るから大丈夫だろうと、適当に『Δ降り注ぐ 幸陽の 大 草原』と言う、いかにも趣味が分かりそうなワード入れて転送するのだった。  金色の輪が何本も上がって来て、私を包み込む……。私はこのドキドキした幻想的な瞬 間が好きだったりする。  ………あ、レベル確認するの忘れてた。  大地から見渡せばそこに有るのは一色の緑のみ映える草原、同じく小高い丘の上から見 渡しても草原があり。また上空から見下ろしても果てしない草原が広がっている事だろう。  そう、ここは一面緑の場所。  一心不乱に続く大草原のエリアだった。  そこには少数の小さな虫しか居らず、辺りは変わることの無い昼間のさなか、穏やかな 無音が響き渡っている。そして立ち止まって静かに瞑想しなければ分からぬ程の微風が漂 っている。  柔らかに降り注ぐ微笑みかけるような陽光は、草原の全てを祝福し、それを受け止めて いる大地の姿に人は必ず感嘆を漏らすことだろう。  ここの永遠を壊す者は居ない、………かに思われた。  だがそれは大きな間違いであるようだ。 「ショウ!! ここって広――い花畑なんじゃなかったの!?」  凛とした幼い少女の声、それはキチンとした発音さえすれば聞き惚れる様な声なのだろ うが。残念ながら、今は攻撃の為なのか鋭く、しかも相手と十分囁く事が出来る距離にも 関わらず耳を引き裂かんばかりに巨大である。  それは相手の双剣士の反論はおろか、周りに居る虫たちでさえ飲み込んでしまいそうだ。 「み、見たんだよ! 攻略BBSにスッゴイ花畑が有るって!」  少女の気迫に、危うく倒されそうではあったが、何とか持ちこたえる事が出来た少年は 辛うじて反論を試みる。 だがその声は少女の遠吠えのような声に比べると、蟻の口笛の如く弱々しい。リアルで 耳を押さえている辺りを考えれば、恐らく少女の声に多大な被害を被ったのが原因なのだ ろう。 「無いじゃない! まったく、デマに流されるのが得意なんだから……」 「そんな事言ったってLunaも僕の話聞いた瞬間から乗り気だったじゃんか!」 「私は晶と違って最初から怪しいと思ってたわよ!」 「いーーっや、絶対斎も騙されてたね!」  激流のような論争、……もとい大っぴらな口喧嘩が、ついさっきまで平和だった草原の ど真ん中で始まった。思わずリアルの名前を呼び合っている辺りからして、二人とも本気 で言い合っているのだろう。  二人は、ただただ広い草原の中に生えた二つの点に過ぎないのだが、その存在感はなに やら草原すら飲み込む勢いがある。  最初は口だけだった口論が身振り手振りを加えた物になり、事有るごとにエスカレート する。このままではPVP(プレイヤーヴァーサスプレイヤー)に発展しそうな勢いだが、 幸いにも二人は賢明であり其処に至る事は無かった。  ……が、やはり直ぐには収まらないようだ。  既にこの戦いが切って落とされてから30分近く経つと言うのに。 「あーもう馬鹿なんだから! 頭ぶつけないと治らないのそれは!?」  ショウの頭上に金色の輪が現れる。  そしてそれは人の形をした物ををうっすらと映し出し、やがては実体化させていく。  勿論実体化すれば重力によって落ちる。そしてその落下地点は間違いなくショウの頭の 上だった。 「なんだよ、頭なんて………、フギャンッ」  私は始めての感覚に襲われた、いや感覚は無いんだけど何だかエリア転送がいつもと違 う感じなのだ。  何だか少し高い場所から落ちた感覚がするし、しかも一人称視点が『何か』に乗って少 し高くなっているような感じがするし……。  私は一人称視点を操作して、足元を覗き込んでみた。  ………鉢巻をしたPCを踏んづけていた。(しかも頭を) 「ご、御免なさいぃっ!!」 「いい、から……、退いてくれない?」  私は直ぐに言われるがまま足を退かす、そして嵐の如く『お辞儀』コマンドを連発する。  そして自分のPCに釣られながらリアルでも頭を下げて平謝りを繰り返す。これも慣れて しまったのか、既に1秒一回はお辞儀できてしまう。  偶然的にエリアへの転送地点が重なってしまったからだろうか? 兎に角物凄く失礼な 事をしてしまい、私は無我夢中に謝るのだった。 「いいよそんなに謝らなくても。ダメージ食らったけど痛い訳じゃ無いから……」  だけど余程ダメージが大きかったのか、怪我してるし凄く痛そうだ。  私はリプスを使うと、最後にもう一度だけ『御免なさい』と深く頭を下げて謝った。  それで少し落ち着いたので辺りを見渡してみると、ここは物凄く広い草原だという事が 分かった。30歩程先に尖った塔みたいなダンジョンが有る以外、まったく何も見当たら ないのが印象的だ。  リアルでは北海道に行っても見られるかどうか分からないような光景だけに、都心生ま れ都心育ちの私は全身に響き渡るような感動に襲われた。  一瞬状況を忘れてまで、この風景に見入ってしまったのだ。 「今のは効いたなー……、こんな事って有るんだね……。ってあれ、Lunaは?」 「あ、さっき居た呪紋使いの女の子は先にダンジョンへ行っちゃいましたけど……」  そう、私が謝っている間に、さっさとあの尖った塔みたいなダンジョンへ入って行って しまっていた。しかも何となく怒っていたような気がする。  もしかしてこの双剣士さんと喧嘩でもしていたのだろうか?  私は双剣士さんの表情や言葉に注意を向けてみたけど、全然怒っている様な印象は受け なかった。   因みにこの双剣士さんの名前はショウ、青い硬そうなショートの髪に腰まで有る切れ目 (?)の入った変わった形の長い上着。そしてやっぱり青くて白い紋の入ったズボンを履 いていると言った格好だ。長い鉢巻が印象的で、違和感無く似合っている。 「ならLunaを追わないと……。まったく、呪紋使いがソロでダンジョンなんて無理だって 言ってるのに」  ……う、そうなんだ。  私は少しだけ、心の中で冷や汗をかく。 「あ、あの私も一緒に言っていいですか? お詫びと言っては難ですけど……」 「うん、それは構わないよ。だたチョッとLunaの怒鳴り声が我慢できるならね」 「?? ……はい、頑張ります」  私達はパーティを組んで軽く自己紹介をし、さっきのLunaと言う人に追いつく為に塔の 攻略を始めた。 ランダムで来たから強いエリアに来て無いか心配だったけど………、案の定このエリア はレベルが48も有った。 ショウさんの話だと、Δサーバーにはイベントエリアが多いから極稀にこの様な高レベ ルエリアが有るのだと言う。……成る程、だからマク・アヌは初心者だけじゃなくて上級 者さんも多いのか。 私はショウさんのレベルが低かったらどうしようかと焦ってしまったが、ステータス画 面を見ても戦いぶりを見ても中級者以上みたいだったので、心配は要らないみたいだった。 と言うかむしろ私が足手纏いにならないか物凄く心配でしょうがない。 そんな心配を背に、私は古臭い乾いた石で出来ているダンジョンを進んでいく。ゲーム だから崩れる事は無いと思うけど……。 この世界は凄くリアルなのだ。もしかしたら乾燥してボロボロになった階段が崩れるか もしれない。 このダンジョンはそんな心配を連想させるほどに今にも崩れ落ちそうな雰囲気だった。  私はアイテム要員を引き受けて、二人でドンドンとダンジョンの中を進んでいく。でも それだけじゃ退屈でも有るので(私はアイテム使ってるだけだし)ショウさんに色々と話 をして貰った。やはり初心者は先輩の話を聞いて勉強しないとね♪  ショウさんは……じゃなくてショウは(呼び捨てで呼んでくれと言われた)、14歳の中三 で私より二つ年上。さっきのLunaと言う人も同級生で同じクラスだと言う。  さっきまで喧嘩していたけど、何だかんだ言っても仲は良いみたいだ。自然に話してい るつもりでも、直ぐにLunaさんを気にしているような言葉が聞こえて来たし。  勿論、話してくれた事はそれだけじゃ無い、他にもショウは色々な事を話してくれた。  『漢の拳!』とか叫んで素手で戦いを挑む変な弓使いの話や………    銀髪の放浪AIが猫みたいな放浪AIと一緒に歩いている所を見かけた話………   超巨大な重斧使いが怪しげな自伝を売り歩いていると言う話………     色んな話を聞かせてくれた、どれも凄く面白くて絶対忘れないような話ばっかりだった。  でも、やっぱり一番印象に残ったのは…… 『.hackersの伝説』  勇者カイトがネットを救ったという話……、皆は都市伝説だと言ってるらしいけど、シ ョウは世界の伝説を信じていた。  私も、信じてみたいと思った。  黄昏が有ったのは事実だし、私は作り話なんかじゃ無いと思う。  何一つ証拠が無くて信じれない事だとしても、私は信じたいな。……その方が面白いし、 何より夢が有って楽しいしね♪  そんな事を話している内に、私達はかなりの数のモンスターを倒していた。いや、実際 に倒してるのはショウだけど……。  兎に角数え切れない程いっぱい倒したのだ。もう面倒臭くなるくらい沢山。  全てのフロアを回って魔法陣を開放しているのが原因だと思う。  ………私達って、二人とも相当なレベルの方向音痴みたいだった。 「……なんで妖精さんが頑張ってるのに間違えるんだろうね」 「さぁ………。 あ、Luna……?」  今度は同じ道を通らないように注意して歩いていたら、誰かが魔法スキルを使っている らしい声が微かに聞こえた。  今度こそ確りと間違えないようにマップを確認すると、どうやらアイテム神像前の通路 で戦っているようだ。声が心なしか焦っているように聞こえるから、もしかしたら苦戦し ているのかも知れない。  ……と、私がこんな事を考えている間にショウは居なくなっていた。どうやら声を聞い た瞬間に駆け出していた様だ。 「やっぱり仲いいんだね」  そう言って私も二人が戦っているであろう通路へ向う。  そこは灰色の大きな柱がアイテム神像の扉を囲むように二本立っている場所で、その扉 の前にはいかにも強そうで頑丈そうなコマみたいな形をした巨大な土偶、『コマドグー』が HPを3分の1くらい削られながらもがっしりと立ちはばかっていた。  いつもなら名前に一つ二つ突っ込みを入れたい所だけど、Lunaさんがピンチみたいなの でそれは遠慮する事にした。  私はコマドグーの攻撃範囲に入らないように少し離れた場所に立つ。多分攻撃されたら 二つ返事で幽霊状態に突入決定だろう。 「Luna、大丈夫?」 「SPが殆ど0な事以外はね」  え、じゃあ、実質的にショウ一人で戦うって事じゃないの!  ショウもさっきまで戦闘ばっかりしていたからSPの残量後ちょっとしか無いし……。  あ、そうだ。  私の頭に本当に珍しく閃きが走った、……と言っても説明書の内用思い出しただけだけ で閃きと言うほどでも無いけど。  確かSPを回復するアイテムも有ったんだよね……、私剣士だからあんまり使わななくて、 確かまだ持っていた筈だ。  私は慣れない手付きでアイテム欄を開くと、その一覧に目を通していく。幸いにも種類 数が少ないので直ぐに目的の物は見つかった。 「……あった、『気魂』だよね、……Lunaさん!」  私はジッとしながら悔しそうにショウの戦っているコマドグーを睨んでいるLunaさん に、今見つけたばかりの気魂を使った。  直ぐにそれに気付いたLunaさんは、魔法スキルが確実に当るよう少しコマドグーに近付 く。幸いコマドグーは目の前のショウしか狙っていないらしく、Lunaさんには目もくれて いない。  コマドグーは名前は変だけど見た目通りに厄介な敵らしく、ショウはHPを半分近く削 られて苦戦していた。 「ショウ、いつものヤツ!」 「分かった!」  そう返事をすると、ショウは牽制を一つ繰り出して。コマドグーの得意技らしい体を高 速回転させる技を、あっさり身軽に3歩引いて避けてみせる。  私は思わず、上手いな〜〜と感心してしまった。 「アプアンダ!」  Lunaさんが叫び、私達の周りに闇属性の力場が発生する。  初めての経験だけど、これは能力アップ型の魔法スキルみたいだ。画面の下にあるアイ コンの隣に、三人分の闇マークが浮かび上がった。 「双邪鬼斬っ!」  属性強化を確認して、ショウは一気にコマドグーに走りこみ詰め寄る。 素早く連続して、そして力強く双剣を振るい。一太刀、また一太刀と次々にコマドグー の至る所を斬り裂く。 エレメンタルヒット――って出てるから、多分大ダメージを食らってるみたいだ。コマ ドグーの頭に(芯?)あるHPバーがグイグイと減っている。 あと一歩、あと少しで無くなりそうな所までそのHP表示は減少した。 「オルメアンゾット!」  これで止めとばかりにLunaさんが大振りな仕草で魔法スキルを放つ。 これも闇属性の技みたいで。何だか黒くておっきい結晶が次々と激しく隆起し、大ダメ ージと共にコマドクーを木っ端微塵に砕いてしまう。  そしてそのままコマドグーはチリチリと消えてしまう………、因みに私はレベルアップ した。 「Luna………」 「何やってるの、前みたいに忘れないでさっさとアイテム神像行こうよ?」  私達はその言葉に従って、………確かウルカヌスだったかな?  そんな名前の像が有るアイテム神像部屋に入った。そして像の前に有る宝箱を開けた。  小気味良い効果音と共にアイテム入手音が聞こえる。どうやら一つだけアイテムが出て きたみたいだ。 「………『虹色の種』?」 「何ですか、それ?」 「さぁ………」  謎なアイテムだった。  効果も何も書いて無いし、高額換金アイテムでも無いみたいだ。(Lunaさんがレアアイ テムの改定虫眼鏡を使って調べた)  一体何のアイテムなんだろう……?  私は不思議に思って首を傾げながらも、それが心地良い、その不可思議が面白いと感じ た。  仲間と冒険して、仲直りして、頭捻って……。それが凄く楽しい事なんだと、改めて思 った。確認した。  リアルではこんな会話は出来ないし、こんな経験も出来ない。  そう思うと、今この時間が物凄く大切な時間なんだと、私は心に染みてそう感じた。 「使い道無いしって言ったら聞こえ悪いけど……、アーサにこのアイテムあげるよ」 「え、いいの? マジッすか?」 「ちょ……っと迷惑掛けちゃったし、お礼もしたいし、ね」  私は例の如く、有難うを激しく連発しながらその種を受け取った。……頭下げるのが癖 なのだろうか?  見てみると、本当に綺麗な種だった。  自然がギュッと詰まってるみたいで、春がそのまま入ってるみたいに光ってて……。  幻想的だけど親しみやすい。……って言うのかな?  兎に角凄く綺麗だった。   「じゃ、帰ろうか」  私が種から目を戻したのを確認して、ショウは精霊のオカリナを使った。  種は、まだ手に持ったままだった。  大自然の広大さを身を持って感じるような、見晴らしのいい小高い丘。  柔らかくて溶けてしまいそうなくらい気持ち良さそうな太陽の光が当たる場所に、私達 は何故か其処場所へ転送された。  ダンジョンの前、……じゃなくてだ。 「あれ、何でだろう……?」  ショウがまたも首を傾げている……、そしてその目線の先には私が転送された場所、つ まりさっき二人が喧嘩していた場所が遠くに見えた。  確かあそこで『花畑が有る――』と言う話で喧嘩してたって、ショウが言ってたね。  二人とも仲直り出来たみたいだし、良かった良かった……。   あれ、花畑……? 虹色の種………?    ふとした思い付きだけど、私はこの二つが何か関連が有るんじゃないかと思った。  今日は本当に珍しい日なのか、又もや閃きが走りそうだった。  しかし麗らかな日差しと、ささやかな微風の音が私の頭をのほほんと浸食して中々思考 が回転しない。   花畑……、種………。    もう一つ、もう一つ何か鍵があれば繋がる気がするのに〜〜。 あーーー、悔しいーーー、出てこないーーーっ!! 何だったかなーー、重い出せ、思い出せ私の腐った脳みそよーー……。 「あ、そう言えばそのレアな剣、使う機会が無かったね。それけっこ……」 「それだーーーーっ!!」 「へっ??」  確かこの剣「Coronal」には偉大なる森の力が宿ってるんだよね……。  だったらこれで………。  私は種を取り出して、不自然に転送された小高い丘の頂上にそっと置いた。案の定少し だけ草の生えていない『鍵』になる場所があった。  そこだけが不自然に草が生えていなくて、少し黄色み掛かった茶色い地面が顔を覗かせ ている。   そして……… 私は一思いに「Coronal」の切っ先を虹色の種の中心へ突き立てた!  すると、種はデータにそって重ならない様に反発するのではなく。吸い込まれるように この淡い緑の刀身を受け入れた。  其処から種の色、虹色がこの時を待っていたとばかりに溢れ出していく。それは留まる 事を知らずについには太陽の光にまで打ち勝った。  そう、辺りは一瞬だけ全て虹色の世界になる。  だけど、やっぱりそんな時間が長く続く訳も無く、次第に太陽がその偉大な力で一面の 虹色を綺麗に拭い去った。  基礎データが不可思議な不安定なデータを一掃してしまったのかもしれない。  ………しかし。完全には拭い切れなかった様だ。  いや、もしかしたら拭い去りたく無かったのかもしれない。 一面に、虹色を超えた花畑が広がっていた。 それはあたかも少女に祝福されたような、一面の幸せ そして、私の「Coronal」を持つ方の腕に、小さな花冠が掛かっていた。 見えざる想い 時に、それは心の中に花開く それは絆が咲かせた花 ――――――――――――――――――――――――――――― 少し修正しました。 それと永久さん、勝手にキャラを出してしまって申し訳ない。 黒斗さんの月光も微妙に出してしまいました。(汗) 不都合が有りましたら言って下さいね。