花咲く大陸―『スクァイア』

      春夏秋冬どの季節に訪れても種々様々な花々が迎えてくれる大陸、それがスクァイアの花咲く大陸と呼ばれるが所以である。

      この大陸では冬に咲く花も多く、氷を割って咲く氷串花(ヒョウセンカ)の透き通るような青い花や、

      霜が降りやすい地面に咲く霜叉花(シモサシバナ)の美しい桃色の花は、寒暖の差が激しい故の深い雪の季節にすら一目見ようとやってくる人間が居るほどである。
      (補足だが、この世界において物見遊山の旅をするような人間は殆どいない。山賊や魔物や時には戦争の余波に遭う危険が有るからである)

      色取り取りの自然が有りその恵みも多いのだが、寒暖の差と言う自然の猛威も有るのがこの国の特徴である。

      どのようにして寒さを凌ぐか、どのようにして暑さを凌ぐか、どのようにしてより多くの収穫を得るか、どのようにして天災を防ぐか、どのようにこの自然を祭るか…。

      人々は様々な技術や知恵を生み出していった。 

      知識ではなく、知恵である。 この国では魔法よりも『狩猟・農作・陶芸・建築』などの様々な技術が重宝されており、“生きる技術”においては他国に引けを取る事は無い。

      意外にも不遇の死を除いて計算した平均寿命はファーネルを僅差で抜いてスクァイアの方が高く、ファーネルの70歳に対してスクァイア人の平均寿命は71歳前後である。

      栄養値の高い農作物と、恐らく厳しい自然に耐えてきた人々の体力がその僅かな差の決め手となっているのだろう。

      この大陸の名物と言えばやはりドワーフ族の技術によって齎された地下住宅街と、その結晶である迷宮城である。

      大陸の中心部に存在する長さ100Kmを超える巨大な大地の断層を自然の驚異として見るのではなく、寒暖の差が少ない快適な住処として利用してしまっているのだ。

      流石は職人の町として有名な同名の首都スクァイアと言えよう。

      この大陸の人々は“花を愛で風を撫ぜ大地を感じ海を慈しみ生きよ”と唱えるミュイ・セトの教えに従う人々が殆どであり、風情を楽しむと言う心が深く浸透している。

      先代のウルリケ女王はその自然の美しさを体現して居るかのように慈愛に満ちた美女として名高く、

      その愛娘である現女王のルーネ・ゼストフル・ジニアル・スクァイア(25)女王に至っては、美し過ぎる故にどんな彫刻家も誰一人としてその姿を彫刻に出来なかったと言う。      (もう一つ補足、この世界では男神を崇拝する国では男が王位に就き、女神の場合は女が王位に就くのが伝統になっている。しかしラクナスなどには例外もある)

      自然の溢れる国スクァイア。 だた、その自然と生きる為に生み出された技術が現在では強力な武器作りにも使われている。