ハンノキ

榛の木

(カバノキ科 ハンノキ属)


 雌雄同株落葉高木。高さ20m程度になる。湿性の平地林を代表する樹種で、常緑広葉樹林帯および落葉広葉樹林帯にかけての低湿環境に優占林をつくるが、ハルニレなどと混交林を形成することもある。ただ、本種の発芽と成長には強い日照が必要であるため、すでに成立したハンノキ林には稚樹が生育しないことが多い。かつて立ち木を水田の「稲架木」として利用していたため、水田の側などに植栽された個体を見ることも多い。花粉は春先に飛ぶが、多産地ではスギなど共に花粉症の原因になることもあるという。湿地のような貧栄養環境で高木になれるのは、根粒に放線菌を共生させていて空中窒素の固定能力があるためである。


分布:北海道、本州、四国、九州。国外では中国東北部、沿海州に分布する。低地~平地や山間部谷奥の湿地に自生する。県内では北総~南総地域を中心に谷津田や休耕田及びその周辺に生育するが、北総地域の群落は開発により消滅したものも多い。自然林状態のものはほとんど認められないが、花粉分析などの結果から県北部地域にはかつて広範囲に本種の優占林が存在したものと考えられている。

樹幹:灰褐色~紫褐色。樹皮は不規則に浅く小さく剥がれる。幹は直立するが、寒冷地の湿原などでは株立ちする傾向がある。
枝葉:若枝は灰褐色。単葉。葉柄は明瞭で葉は互生する。長さ13㎝程度の長楕円状卵形、基部は広く楔形で先端は鋭く尖る 。比較的明瞭な羽状脈を持ち、側脈は葉縁に達し7対~9対。葉縁には浅い鋸歯がある。薄い革質で、表面には鈍い光沢を有し、裏面主脈基部には赤褐色の細毛を密生する。晩秋に黄葉する。
単性風媒花。花期は2月下旬~3月上旬で萌芽よりはるかに早い。雄花序は長さ4㎝~7㎝の柄を有する尾状花序で、はじめは黒褐色で開花すると暗赤褐色になる。枝先に2本~5本つき、はじめは直立するが開花後ぶら下がる。雌花序は雄花序下部の葉腋に1個~5個つき、上を向く。
果実小堅果が多数集まったストロビルと呼ばれる集合果。果穂は長さ3㎝程度のマツボックリ状で木質。
増殖法実生挿し木が可能。本種は耐陰性が弱く、十分な日照がないと枯死してしまう。
保護:種としては指定されていないが、純林は千葉県レッドデータブックで保護上重要な植物群落に指定されている。
その他:材は建築材や器具材、種子は染料として利用される。

壮年木 壮年木の樹皮 若葉 若い花序

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