ニホンミツバチ

日本蜜蜂 (ミツバチ科)


タチツボスミレで吸蜜する働き蜂
2006/3/20 館山市大神宮(県立館山野鳥の森)
ニホンミツバチ 日本亜種 (ミツバチ科 ミツバチ亜科 ミツバチ族)
Apis cerana japonica  Radoszkowski, 1877
分布 国内: 本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では対馬、屋久島で記録されている。
県内: 一部の市街地を除き、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、中国大陸、インドシナなどアジアの全域に汎く分布する。本亜種は日本固有。
変異 形態: 国内での地理的変異や個体変異は知られていない。
季節:
性差: 異型。♀(女王)は♂よりはるかに大型で、腹部が大きく発達する。
生態 環境: 各種樹林とその林縁、公園、社寺境内など。巣は樹洞、岩や崖の隙間、家屋の床下などに作られる。
発生: 年1回。厳冬期を除き、ほぼ通年見られる。
越冬: 成虫。女王と複数の働き蜂が巣内で集団越冬する。
行動: 昼行性。活動は非常に活発で、飛翔は敏速。性質はおとなしいが、巣を刺激すると集団で刺しに来る。真社会生活花蜂で、巣は1頭の女王と多数の働き蜂、秋季にのみ羽化する♂からなる。一般にひとつの巣には数千から数万の働き蜂がいるが、数が増えすぎると分封(蜂)とよばれる巣分かれ行動を行う。巣は、枯死した植物質を用いる他の真社会性ハチ類とは異なり、腹部の蝋腺から分泌した蜜蝋を噛み砕いたものを材料とする。構造は中空の六角形が数千個連続したもので、巣板と呼ばれ、スズメバチ類の巣のような外壁を欠く。巣板は通常縦方向に延びるが、巣として使用する空間の状態によってはやや斜めになることもある。花粉や花蜜の採集を主とする外役と、巣内の清掃や幼虫の世話を主とする内役はすべて働き蜂が行っており、スズメバチ類のように一時的ではあっても女王がこれを行うことはなく、女王は完全に産卵に専念する。時折オオスズメバチ等の襲撃を受けるが、その際はまず見張り役の数頭がスズメバチに取り付き、すかさず数十頭の働き蜂がいっせいに集まって蜂球とよばれる状態になる。この状態でいっせいに体を震わせて体温を45℃程度まで上げ、スズメバチを蒸し殺すという対抗手段を持っているという。ただ、多数のスズメバチに襲われ対抗しきれないような場合には、巣を放棄し、女王や働き蜂だけで逃亡することもある。
食性 幼虫: 食植性(養育)。働き蜂の♀と♂の幼虫には花粉と花蜜の混合物、新女王となる♀には働き蜂の咽頭腺から分泌するローヤルゼリーが与えられる。
成虫: 食植性/花蜜。多くの花を訪れる。
類似種: 同属のセイヨウミツバチに似るが、本種はやや黒味が強い。
保 護: 指定されていない。
その他: 普通種で個体数も多い。近世の紀州藩では本種を養蜂に用いていたが、1877年にセイヨウミツバチが導入されると全国的にこれに切り替わった。ただ、現在も一部の地域では本種を用いた養蜂が行われている。近年の養蜂業の衰退とスズメバチの駆除により、本種は特に都市部で増加傾向にあるという。
天敵 捕獲: 成虫はカマキリ類、トンボ類、ムシヒキアブ類などの捕食性昆虫のほか、造網性クモ類やハナグモ類など。
寄生: ハチノスツヅリガコハチノスツヅリガの幼虫が巣板を食い荒らし、多数の幼虫が付いた場合、巣が壊滅することがある。また、寄生ではないが、スズメガ科のメンガタスズメが巣内の蜜を吸いにくることもあるという。


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