ヒグラシ

日暮 (セミ科)


2002/8/11 15:20 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のセミ。夏の夕暮れ時、長調の陽気な鳴き声が多いセミの中で、短調の哀愁を誘う鳴き声で、古来から様々な形で記録されてきた種であるが、夜明け前の早朝にも鳴いていることはあまり知られていない。和名はその夕方に鳴く性質に由来し、鳴き声からカナカナゼミとも呼ばれる。
 写真は千葉市緑区で8月中旬の午後、薄暗いスギ植林地の中のヒノキにとまる♂である。雌雄は基本的に同型だが、♂の腹部は♀よりはるかに大きいので雌雄の区別は容易である。ハルゼミやツクツクボウシと似るが、前者とは発生時期が異なり、後者とは色調が異なるので区別はそれほど難しくない。ただ、本種は色彩変異が大きく、黒化した個体はツクツクボウシと区別しがたいことがある。
 ニイニイゼミに次いで、7月初頭ごろから姿を見せ、8月中旬ごろまでが最盛期。アブラゼミが減り始める9月上旬には姿を消す。都市部にも多いが、湿った薄暗い林内を好み、植林による杉林などは格好の生息場所となる。活動は早朝と日没前後が基本だが、曇天時や薄暗い林内では一日中鳴いていることもある。また市街地では夕立の直前によく鳴き、かつて本種が日中に鳴くとすぐ雨が降ると言われていたが、感覚的に確率は5割程度である。



ヒグラシ 原名亜種 (セミ科 セミ亜科)
Tanna japonensis japonensis  (Distant, 1892)
分布 国内: 北海道(南部)、本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では屋久島、トカラ列島(宝島)、奄美大島、沖縄本島、石垣、西表で記録されている。
県内: 都市部を含め、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、中国大陸に分布する。
変異 形態: 八重山諸島産は別亜種(ssp. ishigakiana )とされる。 色彩の個体変異が大きく、山地ではまれに全体が黒色化したもの(山地型)が現れる。
季節:
性差: 異型。♂腹部は♀より大きい。♂腹部腹面には大きな発音器官があるが、♀は小さい。
生態 環境: 樹上性。各種樹林、社寺境内、公園など。針葉樹林~広葉樹林まで幅広いが、特に薄暗いスギ植林地を好む。都市部にも多い。幼虫は地中性
発生: 年1回。7月初頭~9月上旬に見られるが、7月上旬~8月中旬に多い。卵期は40日型。秋の長雨頃に孵化し、すぐに地中に潜る。幼虫期間ははっきりしていない。
越冬: 幼虫。最初の冬を幼虫で越す。
行動: 薄暮性。主に早朝(未明~夜明け)と夕方(午後4時~日没前後)に活動するが、曇天時や、薄暗い林内などでは一日中活動する。鳴き声は「カナカナカナ・・・」という金属音で、連続的に鳴く。
食 性 食植性/汁液。多くの樹種を利用するが、スギヒノキマツ科マツ類などの針葉樹を好む傾向がある。幼虫は土中で根から、成虫は幹や枝から吸汁する。
類似種: ツクツクボウシに似るが斑紋と鳴声が異なり、ハルゼミに似るが発生時期が異なる。
保 護: 千葉市:
その他: 普通種。個体数も多い。和名は夕方に鳴くことに由来する。また鳴き声から「カナカナゼミ」とも呼ばれる。
天敵 捕獲: 成虫はハラビロカマキリ、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどのカマキリ類 、ヤブキリなどの捕食性キリギリス類、造網性クモ類、徘徊性クモ類。卵はウシカメムシなどのカメムシ類。
寄生: セミヤドリガ科のセミヤドリガ(成虫)が知られるが、寄生個体の生存に関しては特に影響はないらしい。昆虫ではないが、幼虫には冬虫夏草の一種、バッカクキン科のウメムラセミタケ(Cordyceps paradoxa)、オオセミタケ(Cordyceps heteropoda)、トビシマセミタケ(Cordyceps ramosopulvinata  Kobayasi et Shimizu)、ツブノセミタケ(Cordyceps prolifica)などがつく。

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