アブラゼミ

油蝉 (セミ科)


2002/9/28 11:20 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 ニイニイゼミと並び、世界的には珍しい翅に色がついた大型のセミ。しかしわが国では普通種中の普通種で、西日本でこそクマゼミにその座を譲るかもしれないが、東日本では圧倒的に本種のほうが多い。また、わが国のセミの中で鳴き声がもっとも大きい種のひとつで、1㎞ 以上先からでもその鳴き声が聞こえるという。和名は、鳴き声が揚げ物をしているときの音に似ていることと、翅が油に濡れたような色をしていることに由来するという。
 写真は千葉市緑区で9月下旬の午前中、ケヤキの幹にとまる♀である。雌雄同型で大きさも変わらないので、鳴いていない個体を区別するには腹部の腹面を見るしかない。地理的変異も知られておらず、県内にはこれに似た種は他にいないので、見間違えることはないだろう。
 ヒグラシ、ニイニイゼミに続き、7月下旬頃から姿を見せ始め、8月が最盛期、ツクツクホウシが最盛期を迎える頃には数を減らし始め、9月中旬には姿を消す。活動時間は日中だが、正午ごろにはほとんど鳴かず、午前と午後によく 鳴いている。ただ、街中では街灯などの影響で夜間に鳴き声を聞くことも多い。,平地~山地に汎く分布し、都市部でも多く見られるが、ニイニイゼミのようにあまり高標高地にはいないようだ。時々柑橘類やナシの畑で大発生し、果実から吸汁することもあるので害虫として扱われることもある。幼虫の生活史が判明している数少ない種で、飼育の結果、産卵から羽化まで6年~7年かかるという。



アブラゼミ (セミ科 セミ亜科)
Graptopsaltria nigrofuscata  (Motschulsky, 1866)
分布 国内: 北海道、本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では対馬、屋久島から記録されている。
県内: 都市部を含め、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、中国大陸に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていないが、奄美群島、与論、沖縄本島、久米島には近似の別種リュウキュウアブラゼミ(G. nigrofuscata (Motschulsky, 1866))が分布する。色調等は比較的安定しているが、稀に体が褐色を帯びる個体が現れる。
季節:
性差: 異型。♂腹部は♀より大きい。♂腹部腹面には大きな発音器官があるが、♀は小さい。
生態 環境: 樹上性。各種樹林、社寺境内、公園など。針葉樹林(植林地)~照葉樹林まで幅広く、果樹園や市街地にも多い。幼虫は地中性
発生: 年1回。7月中旬~9月上旬。卵期は300日型。翌年の梅雨時に孵化する。幼虫期間は6年~7年。
越冬: 幼虫。最初の冬を卵で越し、その後6回~7回を幼虫で越冬する。
行動: 昼行性。一日中活動するわけではなく、特に晴天時には朝~午前11時ごろまでと午後3時以降によく鳴き、正午前後にはほとんど鳴かない。市街地など街灯の多い場所では夜間でも鳴いている場合があり、時に燈火に飛来することがある。
食性 幼虫: 食植性/汁液サクラ類ナシビワなどのバラ科木本のほか、ミカン科栽培ミカン類を好む傾向がある。土中で根から吸汁する。
成虫: 食植性/汁液広食性。針葉樹~広葉樹まで各種木本を利用する。幹や枝から吸汁する。
類似種:
保 護: 指定されていない。
その他: 本土地域でのセミ科の最普通種。個体数も多い。
天敵 捕獲: 成虫はハラビロカマキリ、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどのカマキリ類 、ヤブキリなどの捕食性キリギリス類、造網性クモ類、徘徊性クモ類。卵はウシカメムシなどのカメムシ類。
寄生: セミヤドリガ科のセミヤドリガ(成虫)が知られるが、寄生個体の生存に関しては特に影響はないらしい。昆虫ではないが、幼虫には冬虫夏草の一種、バッカクキン科のオオセミタケ(Cordyceps heteropoda)、ツブノセミタケ(Cordyceps prolifica)、トビシマセミタケ(Cordyceps ramosopulvinata  Kobayasi et Shimizu)、ツクツクボウシタケ(Isaria sinclairii)などがつく。

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