ニイニイゼミ

にいにい蝉 (セミ科)


2003/7/27 10:15 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 体がやや扁平な小型のセミ。アブラゼミと同様、世界的に見ると数少ない翅に色がついた種のひとつ。遠くで聞くと、江戸中期の俳聖、松尾芭蕉の立石寺での名句に詠み込まれた「岩に染入る」ような鳴き声をもつセミであるが、近くで聴く それどころではなく耳鳴りがする程である。
 写真は千葉市緑区で7月下旬の午後、ケヤキの幹にとまる♀である。羽化からあまり時間の経っていない個体で、体背面前面に銀色の微毛を密生している。雌雄同型で大きさも変わらないので、鳴いていない個体を区別するには腹部の腹面を見るしかない。県内にこれと似た種はいないので見間違えることはないが、翅の斑紋や体の色調には個体変異が大きい。
 各地で梅雨明け前後から姿を現し、7月中旬~8月上旬が最盛期。ツクツクホウシが鳴き始める頃に数を減らし、その最盛期には姿を消す。活動時間は主に日中で、早朝から夕方まで特にピークを作ることなく一日中鳴いている。また、基本的には天気を問わず、小雨がぱらついていても元気に鳴いている。幼虫成虫共に各種のサクラ類やナシ、柑橘類を好み、果樹園などで大発生して害虫扱いされることもあるが、果実から吸汁することはないので、実際には濡れ衣といってもよい。平地~低山地に多く、都市部でも普通に見られる種であるが、中部山岳などかなりの高標高地でも鳴き声を耳にすることがあり、垂直分布はかなり広いようだ。ただ、幼虫が比較的湿度の高い土壌を好むため、都市部ではやや減少傾向にあるという。



ニイニイゼミ (セミ科 セミ亜科)
Platypleura kaempferi  (Fabricius, 1794)
分布 国内: 本土全域。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では 屋久島、種子島、奄美大島、徳之島、沖縄本島(北部)から記録されている。
県内: 都市部を含め、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、中国大陸、台湾に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていないが、前翅の斑紋や体の色調に個体差がある。また、石垣・西表にはヤエヤマニイニイ(P. yayeyamana  Matsumura, 1917)、宮古島にはミヤコニイニイ(P. miyakona (Matsumura, 1917))、石垣島にはイシガキニイニイ(P. albivannata Hayashi, 1974)、奄美群島.沖縄本島、久米島にはクロイワニイニイ(P. kuroiwae Matsumura, 1917)という近似の別種が分布する。
季節:
性差: 異型。♂腹部は♀より大きい。♂腹部腹面には大きな発音器官があるが、♀は小さい。
生態 環境: 樹上性。各種樹林、社寺境内、公園など。針葉樹林(植林地)~広葉樹林まで幅広く、都市部にも出現する。ナシやミカン類などの果樹園に大発生することも多い。幼虫は地中性。土壌湿度の高い環境を好む。
発生: 年1回。6月下旬~8月上旬。卵期は40日型で、秋の長雨の頃に孵化して地中に潜る。幼虫期間は飼育によると1年~2年程度であるが、野外ではもう少し長く2年~3年程度と考えられる。
越冬: 幼虫。最初の冬を幼虫で越し、その後1回~2回程度各齢の幼虫で越冬する。
行動: 昼行性。早朝から夕方まで特にピークを作らず、また、やや強い雨の時以外は天候に左右されることなく、一日中鳴く。 鳴き声は「チィー・・・」あるいは「ジー・・」と聞こえる連続音。
食 性 食植性/汁液サクラ類ナシビワなどのバラ科木本のほか、ミカン科栽培ミカン類マツ類を好む傾向がある。幼虫は土中で根から、成虫は幹や枝から吸汁する。
類似種:
保 護: 群馬:注目
その他: 和名は鳴き声に由来する。個体数は多いが、都市部では減少傾向が強い。
天敵 捕獲: 成虫はハラビロカマキリ、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどのカマキリ類 、ヤブキリなどの捕食性キリギリス類、造網性クモ類、徘徊性クモ類。卵はウシカメムシなどのカメムシ類。
寄生: セミヤドリガ科のセミヤドリガ(成虫)が知られるが、寄生個体の生存に関しては特に影響はないらしい。昆虫ではないが、幼虫には冬虫夏草の一種、バッカクキン科のセミタケ(Cordyceps sobolifera  (Hillmann) Berkeley et Broome)などがつく。

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