ヒナカマキリ

雛蟷螂 (カマキリ科)


2004/10/3 12:15 館山市大神宮(県立館山野鳥の森) / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 和名の通り小さなカマキリで、日本産のカマキリ類では最も小型種。薄暗い照葉樹林の林床を、獲物を探してすばしこく歩き回っている。
 写真は、県立館山野鳥の森で10月上旬の正午過ぎ、マテバシイ林の林床で活動する♀である。既に腹部がかなり大きくなっていて、卵をたくさん持っているものと思われる。わが国では雌雄同型だが、♀は♂よりやや大型で腹部が幅広なので区別は難しくない。これまでのところ、わが国では未知だが、台湾産の個体は♂には翅が膜質で発達するものがいるという 。他のカマキリ類は褐色型と緑色型の色彩変異があるが、本種は褐色型のみが知られる。ただ、その中での色調や斑紋の変化の幅は広い。体型だけ見ると結構恰幅がよく、ハラビロカマキリに似るが、大きさがまるで違い、ハラビロカマキリはほとんどが緑色型なので見まごうことはない。
 県内ではかなり発達した照葉樹林の林床にのみ棲息しているため、北総地域では極めて稀。南部では海岸付近のマテバシイ林などにも比較的個体数が多いが、本種の生息地には必ずカクレミノとイヌビワが生育しているという。県内では♀の個体数に比して♂が極端に少なく、単為生殖をしている可能性が指摘されている。卵嚢には棘状の突起があり、大木の剥がれた樹皮下などに産み付けられるという。



ヒナカマキリ (カマキリ科 ヒナカマキリ亜科)
Amantis nawai  Shiraki, 1911
分布 国内: 本州(関東以南)、四国、九州。 低山地~山地を中心に分布するがやや局地的。島嶼では佐渡、隠岐、対馬、五島列島、屋久島、奄美大島 、徳之島、沖永良部、沖縄本島、久米島、石垣、西表、波照間、与那国で記録されている。
県内: 房総丘陵地域を中心に棲息し、県央以北では極めて稀。
国外: 台湾に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。色調と斑紋に個体変異が大きいが、褐色型のみ。日本産は♂♀共にすべて短翅型だが、台湾産には長翅型♂が知られる。
季節:
性差: ほぼ同型。♀は♂よりやや大きく、腹部が幅広い。県内では♂は極端に個体数が少なく、単為生殖を行っている可能性が指摘されている。
生態 環境: 地上性(林床)。主に照葉樹林。落ち葉が厚く堆積した林床部に棲息する。他にはよく繁った竹林や松林などにも棲息することがある。ただ、本種の生息地には、必ずイヌビワ(クワ科)とカクレミノ(ウコギ科)が生育することが知られている。
発生: 年1回。晩夏~秋に出現する。
越冬: 。ただ、本州でも2月に♀が休眠した状態で見つかった例があり、卵のほかに成虫越冬の可能性もある。
行動: 昼行性。活動は活発で、動きはかなりすばやい。地上性の小昆虫を追いかけて捕獲することも多い。
食 性 捕食性/生体。体に見合った大きさの地上性の昆虫すべて。トビムシ類や小型の地上性カメムシ類、小蛾類、ショウジョウバエ類などが多い。
類似種: コカマキリの幼虫に似る。
保 護: 千葉県:、群馬:注目
その他: 日本産のカマキリ類で最も小型種で、和名もそれに由来する 。個体数はそれほど多くないが、場所によっては多産することもあるという。
天敵 捕獲: 成虫は造網性クモ類、徘徊性クモ類。幼虫はサシガメ類。
寄生: ヤセバチ科の一種(卵)

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