チョウセンカマキリ

朝鮮蟷螂 (カマキリ科)


2001/9/12 13:25 山武郡芝山町小池 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 大型種。和名からすると外来種のように感じられるが、れっきとした在来種。ただ単に「カマキリ」とも呼ばれ、県内でもっとも普通に見られる種のひとつ。オオカマキリと同様に花や足場のしっかりした場所でじっと獲物を待つ姿をよく見かける。
 写真は山武郡芝山町で9月中旬の午後、林縁で獲物を待つ褐色型の♂である。雌雄同型だが、♂は♀より細身でやや小ぶりなので、区別はそれほど難しくない。オオカマキリに酷似するが、本種の前脚と後翅に褐色の斑紋はなく、前胸部がオオカマキリよりやや短いので、慣れれば簡単に見分けがつく。
 オオカマキリと混生することが多いが、これより若干暗い環境を好み、日当たりのよい草原より林縁で多くみつかる。ただ、晩秋になると日当たりのよい草原に出てくることが多い。♂はよく、交尾中に♀に食べられてしまうことから、「毒婦」の象徴として「カマキリ夫人」などという表現がよく用いられるが、実際にはすべての♀が♂を食べてしまうわけではなく、空腹時の♀に限られるという。観察した ところでは食べられてしまう♂は5割以下という印象である。卵嚢はしっかりした草や木の枝などでよく見つかる。オオカマキリと違って扁平で、これよりはむしろコカマキリの卵嚢に似ている。



チョウセンカマキリ (カマキリ科 カマキリ亜科)
Tenodera augustipennis  Saussure, 1869
分布 国内: 本州、四国、九州。 平地~山地まで汎く分布する。島嶼では佐渡、三宅、八丈、隠岐、対馬、屋久島、奄美大島、徳之島、沖永良部、久米島、沖縄本 島、宮古、伊良部、石垣、西表、波照間、与那国、大東諸島で記録されている。
県内: 一部の市街地を除き、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、中国大陸に分布する。
変異 形態: 亜種区分は認められていないが、沖縄諸島産は濃色で、体型がやや幅広いため、ムナビロカマキリと呼ばれ区別されたことがある。緑色型・褐色型の2型がある。
季節:
性差: ほぼ同型。♀は♂より幅広でやや大きく、腹部が大きい。
生態 環境: 草上性地上性。樹林周辺の草地、草原など比較的開けた明るい環境を好み、市街地にも出現する。樹液に集まる昆虫を狙って、樹上に上ることもある。
発生: 年1回。晩夏~晩秋に出現する。
越冬:
行動: 全日性。夜間は複眼が黒化する。行動は敏捷だが、活動はあまり活発でなく、基本的には待ち伏せ型。外敵に出遭うと前脚と翅を立てて威嚇する。その際に、後翅と腹部側縁をこすり合わせて発音することがある。
食 性 捕食性/生体。体に見合った大きさの昆虫すべて。ときにアマガエルやトカゲなども対象となる。
類似種: オオカマキリに似るが、前胸部がやや短 く、前脚基部の斑紋の色が異なる。
保 護: 指定されていない。
その他: ただ単にカマキリとも呼ばれる。普通種で、県内で最もよく見かける種のひとつ。
天敵 捕獲: 大型スズメバチ類のほか、造網性クモ類、徘徊性クモ類など。幼虫はこれらに加えてサシガメ類など。
寄生: カマキリタマゴカツオブシムシ(卵)、オナガアシブトコバチ科の各種(卵)、ヤセバチ科の一種(卵)、ネジレバネ科の一部(幼虫)など。

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