オオカマキリ

大蟷螂 (カマキリ科)


2001/9/10 13:25 山武郡芝山町小池 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 和名の通り大型で、結構がっちりした体型のカマキリ。わが国のカマキリ類の最大種。そして熱帯地域に分布の中心があるカマキリ類の中で、もっとも高緯度地帯に生息する種のひとつである。日当たりのよい草原や林縁などで、花に来る虫を待ち伏せている個体をよく見かける。大型種だけあって、アゲハチョウやアブラゼミ、キリギリスなどかなり大型の昆虫から、ときにアマガエルやトカゲ、ヒタキなどの小型鳥類も捕らえて獲物にしてしまう。
 写真は山武郡芝山町で9月下旬の正午過ぎ、人家の生垣で獲物を待つ褐色型の♂である。♂♀共に褐色型、緑色型の顕著な色彩変異が知られる。雌雄同型だが♀は♂よりやや大きいので区別はそれほど難しくない。チョウセンカマキリと酷似し、混生することも多いが、本種は後翅に紫褐色、前脚に暗褐色の斑紋を持ち、前胸部がチョウセンカマキリよりやや長いので慣れれば簡単に見分けられる。
 日当たりのよい環境を好み、低木や草のうえなどの低い位置にいることが多く、地上を歩行することも少なくないが、樹の高い位置に上ることはあまりない。外敵が近づくと上体を起こし、前足と翅を広げて威嚇する。人間相手でもひるむことなく鋭い眼光でにらみつけ、こちらの動きにあわせて、必ず上体を正面に向ける。そしてちょっとでも隙を見せると、脱兎のごとく逃げ出すのである。「螳螂枯る」とは俳句の季語としてよく使われた言葉であり、古人は夏に緑色だった個体が秋に褐色に変わると考えていたようだが、実際に晩秋の緑色型の個体がわずかに錆びたような色合いを示す程度で、緑色型から褐色型へ変化することはない。卵嚢は球形に近く、北日本などの豪雪地帯では、必ずその冬の積雪より高い位置に産み付けられることが知られる。



オオカマキリ (カマキリ科 カマキリ亜科)
Tenodera aridifolia  (Stoll, 1813)
分布 国内: 本土全域。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では奥尻、佐渡、伊豆諸島、小笠原諸島、隠岐、対馬、屋久島から記録されている。
県内: 一部の市街地を除き、汎く全域に棲息する。
国外: 台湾、中国大陸(華中~華南)、東南アジア全域に分布する。 本目中、もっとも分布する緯度の幅広い種のひとつ。
変異 形態: 地理的変異は知られていないが、徳之島以南の南西諸島にはオキナワオオカマキリ(T. fasciata Olivier, )が分布する。顕著な色彩変異が知られ、緑色型・褐色型の2型がある。
季節:
性差: ほぼ同型。♀は♂より幅広でやや大きく、腹部が大きい。
生態 環境: 草上性地上性。樹林周辺の草地、草原など比較的開けた明るい環境を好み、市街地にも出現する。樹液に集まる昆虫を狙って樹上に上ることもある。
発生: 年1回。晩夏~晩秋に出現する。
越冬:
行動: 全日性。夜間には複眼が黒化する。動きは比較的すばやいが、活動はあまり活発でなく、基本的には待ち伏せ型。外敵に出遭うと前脚と翅を立てて威嚇する。その際に、後翅と腹部側縁をこすり合わせて発音することがある。
食 性 捕食性/生体。体に見合った大きさの昆虫すべて。成虫になるとアブラゼミ程度の大きさの獲物であれば容易に捕獲する。ときにアマガエルやトカゲなども対象となる。
類似種: チョウセンカマキリに似るが、前胸部がやや長く、後翅と前脚に褐色の斑紋を持つ。
保 護: 指定されていない。
その他: わが国のカマキリで最大種。和名は大型種であることに由来する。普通種で、県内で最もよく見かける種のひとつ。
天敵 捕獲: 大型スズメバチ類、成虫は造網性クモ類、大型の徘徊性クモ類。幼虫はこれに加えてサシガメ類など。
寄生: カマキリタマゴカツオブシムシ(卵)、オナガアシブトコバチ科の各種(卵)、ヤセバチ科の一種(卵)、ネジレバネ科の一部(幼虫)など。

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