コカマキリ

小蟷螂 (カマキリ科)


2001/10/5 13:40 山武郡芝山町小池 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 和名の通り、細身で小型のカマキリで、県内では最も姿をよく見かける種のひとつ。オオカマキリやハラビロカマキリと違って、丈の低い草や潅木に登る程度で地表から離れることは少ない。
 写真は山武郡芝山町で10月上旬の午後、地上でこちらの様子を覗う褐色型の♀である。ほとんどが褐色の型だが色の濃淡の変異が大きく、暗褐色のものと淡褐色のものがいる。また、樹林に近い場所では、ごく稀に淡緑色の個体や両者の色が混ざった両色型が現れることがある。♂♀で斑紋などに差はないが、♀のほうが♂より大きく全体的にやや太めなので区別は難しくない。また、褐色型の個体はヒメカマキリに似るが本種のほうがはるかに大きく、緑色型の個体はウスバカマキリに似るが、本種は前胸腹板に黒と赤紫、前脚の脛節内面に黒・白・赤紫の斑紋があるので簡単に見分けられる。
 盛夏から初秋に羽化し、県内では11月末頃まで姿を見かける。秋深くなると日当たりのよい場所で日光浴していることも多い。外敵に出遭ってもオオカマキリのような威嚇姿勢をとることは多くないが、前脚を広げて前胸部と前脚脛節の裏側にあるカラフルな斑紋をさっと見せ、敵が驚いている隙にさっさと逃げ出す。卵嚢は木の幹の低い位置のほか、家の壁や塀などに産み付けられ、形はチョウセンカマキリの卵嚢に似るがはるかに小さい。



コカマキリ (カマキリ科 カマキリ亜科)
Statilia maculata  (Thunberg, 1784)
分布 国内: 本州、四国、九州。平地~山地に汎く分布する。島嶼では伊豆大島、三宅、隠岐、対馬、屋久島から記録されている。
県内: 市街地を含め、汎く全域に棲息する。
国外: 台湾、中国大陸~東南アジア全域に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていないが、沖縄本島、石垣、西表、与那国には近似の別種であるスジイリコカマキリS. sp.)のほか、石垣、西表にはヤサガタコカマキリS. parva Yang, )が分布する。通常は褐色型で、色調の濃淡、翅の色調や斑紋、前脚内面の斑紋に個体変異が大きい。稀に全体が緑色の型や、体が緑色で前翅が褐色の両色型が知られる。
季節:
性差: ほぼ同型。♂は♀よりやや細身で、♀は♂よりやや大きい。
生態 環境: 地上性草上性。樹林やその周辺の草原、荒蕪地 、河川敷など。都市部にも出現する。地上性の傾向が強く樹上に登ることは稀。
発生: 年1回。晩夏~晩秋に出現する。
越冬:
行動: 通常は昼行性。夜間に活動することも多く、燈火に飛来することもある。地上を盛んに徘徊して獲物を探し、見つけると静かに近づいて獲物を捕獲する。外敵に出遭うと、前脚を広げて前胸部と前脚脛節の裏側の斑紋をさっと見せ、敵が驚いている隙に逃げ出す。また、翅を広げ後翅と腹部側縁をこすり合わせて発音することがある。
食 性 捕食性/生体。体に見合った大きさの地上性および飛翔性の昆虫すべて。
類似種: 幼虫はヒメカマキリとハラビロカマキリに似るが、後脚の斑紋が異なる。緑色型の成虫はウスバカマキリに似るが、前脚内面の斑紋と前脚脛節の色調が異なる。
保 護: 指定されていない。
その他: 和名は小型種であることに由来する。普通種。個体数も多いが、緑色型や両色型は極めて稀。
天敵 捕獲: 成虫はオオカマキリやチョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、徘徊性クモ類。幼虫はサシガメ類。
寄生: オナガアシブトコバチ科の各種(卵)、ヤセバチ科の一種(卵)、ネジレバネ科の一部(幼虫)など。

メイン