ハラビロカマキリ

腹広蟷螂 (カマキリ科)


2003/10/10 12:20 袖ケ浦市上宮田 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 和名の通り腹部の幅が広く、結構がっちりした体型の中型カマキリ。ただ、幅が広いのは腹部だけでなく、脚から胸部、頭部までほとんど全身の幅が広め。夏にはクヌギやヤナギ類などの樹液のそば、秋には柿など熟した果実の周辺で、獲物を待つ個体を見かける。
 写真は袖ケ浦市上宮田で10月上旬の正午過ぎ、切り株の上でこちらの様子を窺う♂である。雌雄はほぼ同型だが♀は♂よりやや大型で、腹部が幅広く大きいので区別はそれほど難しくない。ほとんどが褐色型のコカマキリとは逆に、ほとんどの場合本種は緑色型で、ごく稀に紫色を帯びた褐色型やその両方の色合いが混ざった両色型がでるという。
 個体数はそれほど少ないわけではないが、普通種の割には少なく、広葉樹林などの林縁の低木上にいることが多いので、見かけることはあまり多くない。日本産のカマキリ類でもっとも樹上性の傾向が強く、木から木へ移るときも枝先を移動するので、地上に下りることはほとんどない。幼虫も同様に樹上性で、木の幹に下向きにとまり、腹部が反り返った姿勢をとっていることが多い。卵嚢も幅広くやや扁平で、一般にめくれた樹皮の裏などに産み付けられる。



ハラビロカマキリ (カマキリ科 カマキリ亜科)
Hierodula patellifera  (Serville, 1839)
分布 国内: 本州、四国、九州。 平地~山地まで汎く分布する。島嶼では伊豆大島、対馬、五島列島、屋久島、奄美大島、徳之島、沖永良部、沖縄本島 、久米島、宮古、石垣、西表、竹富、大東諸島で記録されている。
県内: 市街地を除き、汎く全域に棲息するが、北総地域ではやや個体数が少ない。
国外: 台湾、中国大陸(華中~華南)、東南アジア全域に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。ほとんどは緑色型だが、稀に紫がかった褐色型、前翅が緑色で体が紫褐色の両色型が出ることがある。
季節:
性差: ほぼ同型。♀は♂よりやや大型で腹部がさらに幅広く、♂は翅が半透明。
生態 環境: 樹上性。主に広葉樹林。林縁の低木上にいることが多く、林縁の草上で活動することもあるが、地上に下りることはほとんどない。
発生: 年1回。盛夏~晩秋に出現する。ただし、南西諸島では年2回、4月~5月と9月~10月に見られる。
越冬:
行動: 通常は昼行性。夜間に活動することもある。動きは比較的すばやいが活動はあまり活発でなく、基本的には待ち伏せ型。威嚇姿勢をとることはあまり多くない。
食 性 捕食性/生体。体に見合った大きさの樹上性の昆虫すべて。中型の昆虫がほとんど。
類似種: 幼虫はコカマキリなどに似るが、本種のほうが明らかに体の幅が広く、後脚の斑紋が異なる。成虫はウスバカマキリに似るが、本種の前翅中央側縁には黄白色斑紋がある。
保 護: 和名は腹部が幅広いことに由来する。普通種だが個体数はそれほど多くない。樹上性であるため、結構探すのが難しい。
その他: 普通種。個体数も多い。
天敵 捕獲: 成虫はオオカマキリやチョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、徘徊性クモ類。幼虫はサシガメ類。
寄生: ヤセバチ科の一種(卵)

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