ショウリョウバッタ

精霊飛蝗 (バッタ科)


 2001/8/22 千葉市緑区 / NIKON New FM2-T + AF MicroNikkor 105mm F208D /Kodak Kodachrome PKL200

 中型~大型のバッタ。盛夏から初秋にかけて、乾いた草原をあるいていると、足元から「チキチキ・・」と軽い音を立てて飛ぶバッタを多く見かけるが、それが本種。それゆえ俗に「チキチキバッタ」などと呼ばれることもある。また、捕まえて長い後脚をそろえて持った時の仕草から「米搗きバッタ」とも呼ばれている。和名は「精霊バッタ」で、旧暦のお盆(精霊会)前後に羽化し、数多く見られるようになることに由来する。
 写真は千葉市緑区で、8月下旬の午後、地上にとまって様子を覗う緑色型の♂である。一般にバッタ類は♀が♂より大型の種が多いが、本種は特にその差が大きく、♀は♂の倍程もあり、国内のバッタ類で最大である。また、通常はこの写真のように全身が緑色の個体だが、別に示すように全身が褐色になるものや、様々な程度で中間的な色調を示すものなど、色調の個体変異が非常に大きいことが知られている。
 通常8月頃に姿を現し、9月いっぱいまで見られるが、10月中旬頃まで生き残りの個体を見かけることがある。♂は日中の暑い時間に軽快に飛び回るが、体の重い♀は動きも鈍く、あまり好んでは飛ばない。飛ぶときもばたばたと音を立て、いかにも億劫そうである。幼虫成虫共に食植性で、ススキやエノコログサ、チカラシバなど、乾燥した草原性のイネ科雑草類を好んで食べる。このような環境があれば市街地にも棲息するので、県内で最も普通に見かけるバッタ類のひとつである。



ショウリョウバッタ (バッタ科 ショウリョウバッタ亜科)
Acrida cinerea  (Thunberg, 1815)
分布 国内: 本州、四国、九州。 平地~山地まで汎く分布する。島嶼では伊豆諸島、対馬、種子島、屋久島、トカラ列島、奄美大島、沖永良部島、沖縄本島久米島、慶良間諸島、宮古島、石垣島、西表島、与那国島で記録されている。
県内: 市街地を含め、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、中国大陸、蒙古、台湾、東南アジア~インド、豪州、欧州南部、アフリカ大陸に汎く分布する。
変異 形態: 亜種区分は認められていない。♂♀共に緑色型が通常だが、全身褐色の型のほか、その 様々な段階の中間型など顕著な色彩変異型が知られる。また温暖な地域の個体は小型化する傾向がある。すべて長翅型で、短翅型は知られていない。
季節:
性差: 異型。外見上の形質の差はないが、♀は♂よりはるかに大きく、バッタ科では国内最大種となる。
生態 環境: 草上性地上性。イネ科草本の繁茂する草原、林縁、荒蕪地など。明るくやや乾燥した、開けた環境を好む。
発生: 年1回。7月下旬~10月上旬に見られる。 南西諸島では多化性で、周年発生する。
越冬:
行動: 昼行性。♂は日中盛んに「チキチキ・・・」と発音しながら飛翔し、♀を探す。♀は比較的不活発であまり動かず、飛翔する場合にも発音しない。♀は土中に腹端を挿し込んで産卵する。
食 性 食植性/イネ科雑草類を中心に多くの草本につく。特にススキ、エノコログサ類、チガヤ、オヒシバ、メヒシバ、チカラシバなど。
類似種: 幼虫はオンブバッタに似る。
保 護: 指定されていない。
その他: 普通種。個体数も多い。
天敵 捕獲: カマキリ類、スズメバチ類、アシナガバチ類、サシガメ類のほか、大型の徘徊性クモ類、造網性クモ類など。
寄生: アナバチ科のキアシハナダカバチモドキ(Stizus pulcherrimus  (F.Smith1856))、ジガバチ科のヌカダカバチ(Tachysphex nigricolor nigricolor  (Dalla Torre))が知られる。

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