ナミテントウ

凡天道虫 (テントウムシ科)


2002/5/14 12:25 富津市花輪 / NIKON FM-2T + AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 中型のテントウムシ。 ただ単にテントウムシとも呼ばれ、わが国でもっとも普通に見られるテントウムシのひとつだが、街中ではむしろナナホシテントウの方が多い。晩秋の暖かい日、団地の白い壁や電柱などに多数の本種が群れ集まることがあるが、これから越冬地に向けて旅立つ集団である。
 写真は、富津市花輪で5月中旬の正午過ぎ、道端でアブラムシを捕食する個体である。♀は♂よりやや大型だが、個体差も大きい上に斑紋や色調に差はなく、区別はきわめて難しい。地理的変異はないようだが、顕著な色彩変異が知られる。黒地に赤い斑紋を左右に一対もつ二紋型、黒字に赤い斑紋を左右各2個もつ四紋型、黒字に赤い斑紋を多数持つ斑紋型、赤地に無紋もしくは黒い斑紋を多数もつ紅型という4つに分けられ、そのほかにも様々な中間的な変異がある。色彩変異の発現に遺伝的要素のほか周囲の気温が関係していて、紅型は寒冷地に、二紋型は温暖な地域に多く出現するという。かつて関東地方では両者はほぼ同じくらいの出現率であったというが、近年の温暖化の影響で、二紋型の比率が増えているようだ。
 活動は非常に活発で、餌となるアブラムシ類をもとめて日中に草の上を常に忙しそうに歩き回っている。草原の上を飛翔する個体も多い。アブラムシのコロニーを見つけると通常は早速食事に入るが、交尾済みの♀はその周囲に多数の卵を産みつけることも多い。卵は通常20個~40個程度の卵塊で産付される。幼虫はアブラムシを盛んに食べながら3週間程度で蛹化し、その後1週間ほどして羽化する。越冬はめくれた樹皮下や朽木、岩の隙間、根際の落葉の裏などのほか、雨戸の戸袋や屋根裏など家屋内に入り込んで行うこと も多いので、年末の大掃除の時にびっくりすることがある。ナナホシテントウと違って春まで活動することもなく、もちろん悪さをするわけでもないのだから、掃除機で一網打尽にしたりせず春までそっとしておいてあげてほしい。



ナミテントウ (テントウムシ科 テントウムシ亜科 テントウムシ族)
Harmonia axyridis  (Pallas, 1773)
分布 国内: 北海道、本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では壱岐、対馬、五島列島で記録されている。
県内: 汎く全域に棲息する。市街地にも普通。
国外: 朝鮮半島、中国大陸、シベリア、樺太に分布する。
変異 形態: 亜種区分は認められていない。顕著な色彩変異が知られ、メンデル型の遺伝型式を示す。基本的には二紋型四紋型斑紋型紅型の4型があるが、そのほかにも様々な変異が知られる。
季節: 知られていない。
性差: ほぼ同型。♀は♂よりやや大型だが、斑紋などには差がなく、個体差も大きいので、腹端を精査する必要がある。
生態 環境: 草上性樹上性。林縁、草原、畑地、都市公園、人家の庭。比較的開けた環境を好む。
発生: 多化性。発生回数は不明。3月下旬~11月中旬まで見られる。
越冬: 成虫。岩の隙間やめくれた樹皮下、樹木の根際に積もった落葉裏のほか、家屋の隙間や屋根裏などで集団越冬するが、他の成虫越冬性種と混在することも多い。
行動: 昼行性。飛翔は緩やかだが、活動は非常に活発。♀は主にアブラムシのコロニーの側に20個~40個程度の卵塊を産付する。幼虫期間は3週間程度で、4齢が終齢。蛹化は通常植物などの葉上で行われ、1週間程度で羽化する。
食 性 捕食性アブラムシ類各種。特に嗜好性はなく、様々な種を食べる。
類似種:
保 護: 指定されていない。
その他: 和名は普通種であることに由来する。個体数も多く、ナナホシテントウと並び、家庭菜園の強い味方。
天敵 捕獲: 成虫はムシヒキアブ類、クチブトカメムシ類のほか、造網性クモ類など。体液に苦い物質を含むため、鳥類は食べてもすぐに吐き出すことが多く、カマキリ類も好んでは捕食しない。幼虫はアブラムシを護るアリ類に襲われることがある。
寄生: テントウムシヤドリコバチ、テントウムシヤドリコマユバチ、トビコバチ科(幼虫)、 ヤドリバエ科のテントウムシヤドリバエ(卵)、Medina separata (Meigen)が知られる。

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