ナナホシテントウ

七星天道虫 (テントウムシ科)


2002/11/10 館山市国分 / NIKON FM2-T + AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 中型のテントウムシ。 和名はその斑紋に由来し、テントウムシといえば、メルヘンチックな斑紋を持つ本種を思い浮かべる人が多い程の普通種。ナミテントウと共にわが国でもっとも普通に見られるテントウムシだが、街中では本種のほうがはるかに多い。これもナミテントウと同様、非常に旺盛な食欲を示し、葉裏に群がるアブラムシを瞬く間に平らげてしまう。
 写真は館山市国分で11月上旬の正午過ぎ、越冬前に日光浴する個体である。♀は♂よりやや大型だが、個体差も大きく斑紋に差がないので、結構区別は難しい。ナミテントウと異なり斑紋は安定していてほとんど差はないが、地色がオレンジ色に近いものと、赤みの強い個体がいる。ただ、地域的な差はないようだ。
 活動は非常に活発で、アブラムシ類を求めて草の上をちょこまかと歩き回ったり、草原の上を飛翔する個体をよく見かける。また、幼虫と成虫が一緒になって一心不乱にアブラムシを食べ続けていることも多い。本種もナミテントウと同様に集団で越冬するが、暖かいに日には活動することもある。また、暖かい地方では幼虫や蛹の状態で越冬するものもいるという。一般に盛夏にはアブラムシが減るが、本種はその時期に草原のススキの根元やササ藪の落葉下などで小さな集団を作って休眠する習性がある。餌が少なく過酷な暑さを乗り切る知恵だが、そのような心配のない北海道や東北北部では真夏でも姿を見ることができる。



ナナホシテントウ (テントウムシ科 テントウムシ亜科 テントウムシ族)
Coccinella septempunctata  Linnaeus, 1758
分布 国内: 本土全域、平地~山地まで汎く分布する。島嶼では小笠原、硫黄諸島、トカラ列島、奄美大島、沖縄本島、宮古、石垣、西表。
県内: 汎く全域に棲息する。市街地にも普通。
国外: 千島、朝鮮半島、中国大陸、台湾~欧州までのユーラシア大陸とその周辺島嶼のほぼ全域、アフリカ大陸北部に分布する。
変異 形態: 亜種区分は認められていない。斑紋はきわめて安定しているが、地色に若干の個体変異がある。
季節: 知られていない。
性差: ほぼ同型。♀は♂よりやや大型だが、斑紋などには差がなく、個体差も大きいので、腹端を精査する必要がある。
生態 環境: 草上性。林縁、草原、畑地、都市公園、人家の庭、河川敷。日当たりのよい開けた草原性の環境を好む。
発生: 多化性。発生回数は不明。3月中旬~11月中旬まで見られるが、暖地では盛夏に一時姿を消す。
越冬: 通常は成虫。暖地では幼虫でも越冬する。岩の隙間やめくれた樹皮下、樹木の根際に積もった落葉裏のほか、家屋の隙間や屋根裏などで集団越冬するが、他の成虫越冬性種と混在することも多い。暖かい日には活動することもある。
行動: 昼行性。飛翔は比較的緩やかだが、活動は非常に活発。盛夏には草原のススキやササ類の根元に集まり、集団で休眠する。♀は主にアブラムシのコロニーの側に20個~40個程度の卵塊を産付する。幼虫期間は3週間程度で、4齢が終齢となる。蛹化は通常植物の葉上などで行われ、1週間程度で羽化する。
食 性 捕食性アブラムシ類各種。特に嗜好性はなく、様々な種を食べる。
類似種:
保 護: 指定されていない。
その他: 種小名と和名は前翅の斑紋に由来する。普通種で個体数も多く、ナミテントウと並び、家庭菜園の強い味方。一頭の本種が生涯に食べるアブラムシの数は、実に5000頭を超えるという。
天敵 捕獲: 成虫はムシヒキアブ類、クチブトカメムシ類のほか、造網性クモ類など。体液に苦い物質を含むため、鳥類は食べてもすぐに吐き出すことが多く、カマキリ類も好んでは捕食しない。幼虫はアブラムシを護るアリ類に襲われることがある。
寄生: テントウムシヤドリコバチ、テントウムシヤドリコマユバチ、トビコバチ科(幼虫)、テントウムシヤドリバエ(卵)

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