ラミーカミキリ

南蛮唐蒸髪切虫 (カミキリムシ科)


2003/6/25 富津市東大和田 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 本邦産では数少ない草本につくカミキリムシ。艶消しの黒色と薄緑色の斑紋が鮮やかな美麗種である。南方系の種で、わが国へは江戸時代の末期に繊維原料として長崎へ輸入されたラミー(ナンバンカラムシ)と一緒に入ってきた外来種と考えられている。その後、太平洋戦争中にラミーの栽培が盛んになったのに伴い分布を拡げた。
 写真は左が富津市東大和田で6月下旬の正午過ぎ、カラムシの葉上にとまる♂である。♀は♂よりやや体が太く、触角がはるかに短いので区別は簡単である。また、県内でこれに似た種はいないので見間違えることはないだろう。
 年1回、5月下旬~8月上旬に姿を見せる。普段はじっとしているが、人の気配には結構敏感で、すぐに飛び立ったり葉裏に隠れたりするのでなかなか近寄れない。♀は食草の茎などをかじって傷をつけ、そこに卵を産む。孵化した幼虫は、秋までは茎の内部をトンネル状に食い進み、晩秋には根に入り、休眠せずに越冬する。翌春4月末には地下で蛹化し、5月には羽化して野外に出るという。



ラミーカミキリ (カミキリムシ科 フトカミキリ亜科 トホシカミキリ族)
Palagrenea frotunei  (Saunders, 1853)
分布 国内: 本州(関東南部以南)、四国、九州。平地~低山地に汎く分布する。島嶼での記録はない。
県内: 南部を中心に、市街地を除くほぼ全域に棲息する。
国外: 台湾、中国大陸、ベトナム北部に分布する。標式産地は中国北部。
変異 形態: 地理的変異は知られていないが、前翅の斑紋には変異が多い。
季節:
性差: ほぼ同型。一般に♂は♀より小型で、♂の触角は♀よりはるかに長い。
生態 環境: 草上性。各種樹林とその林縁、水田周辺の土手、路傍など。幼虫は潜茎性
発生: 年1回。5月~8月上旬に見られる。
越冬: 幼虫(非休眠)。根の内部で摂食しながら冬を越す。
行動: 昼行性。活動はあまり活発ではないが、動きは敏捷。人の気配には結構敏感である。孵化した幼虫は秋までは茎を食べ、冬には根に入りそのまま休眠せずに越冬。春に蛹化し、晩春に羽化する。
食性 幼虫: 食植性/イラクサ科カラムシナンバンカラムシヤブマオが主。ほかにアオイ科のムクゲ、フヨウ、シナノキ科のシナノキなど。
成虫: 食植性/イラクサ科カラムシナンバンカラムシヤブマオが主。ほかにアオイ科のムクゲ、フヨウ、シナノキ科のシナノキなど。特に葉裏の葉脈を好む。
類似種:
保 護: 指定されていない。
その他: キクスイカミキリ類などと共に数少ない草本につくカミキリムシ。県内には近年定着した。現時点ではやや局地的だが、個体数は少なくない。
天敵 捕獲: 成虫は大型のムシヒキアブ類、カマキリ類のほか大型造網性クモ類。幼虫は捕食性コメツキムシ類の幼虫、ヒラタムシ類、カッコウムシ類など。
寄生:

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