クワカミキリ

桑髪切虫 (カミキリムシ科)


2001/8/9 袖ケ浦市野里 / NIKON New F\M2-T + AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 中型のカミキリムシ。体はビロード状の弱い光沢をもつ真鍮が錆びたような渋い色合いだが、肩に黒い粒を散らし、長い触角は白黒斑で、よく見るとおしゃれなカミキリである。和名は食樹に由来し、養蚕が盛んだった頃は、クワの大害虫として著名であったが、近年の養蚕の衰退により著しく個体数を減らしている。
 写真は袖ケ浦市野里で8月上旬の正午過ぎ、食樹のクワの幹を齧って産卵しようとする♀である。♂は♀より体が細いうえ一回り小さく、触角が♀よりはるかに長いので区別は簡単。県内にこれと似た種は分布しないので見間違えることはない。
 6月頃に姿をあらわし、9月上旬まで見ることができる。通常は日中に活動するが、夜間に燈火に飛来することもある。食樹はクワ科の樹木に限られるが、暗い林縁で太い幹をまっすぐ伸ばした立派な樹より、明るい畑の縁にぽつんと生えた株立ち状の小さな樹で見かけることが多い。庭に植栽された無花果などにつくこともある。地理的変異は知られていないが南西諸島を中心に近似の別種が複数知られていることからあまり移動性の強い種ではないのかもしれない。ここ数年どんどん北に分布を拡げているキボシカミキリと食樹が競合しており、減少傾向に拍車がかかっているようである。



クワカミキリ (カミキリムシ科 フトカミキリ亜科 シロスジカミキリ族)
Apriona japonica  Thomson, 1878
分布 国内: 本州、四国、九州。平地~低山地に汎く棲息する。島嶼では伊豆諸島、対馬、五島列島で記録されている。
県内: 市街地を除き、汎く全域に棲息する。
国外: 現在のところ日本特産種。国外では記録されていない。標式産地は「日本」とのみ記される。
変異 形態: 地理的変異は知られていないが、奄美大島と沖縄本島にはオキナワクワカミキリ(A. nobuoi Breuning et Ohbayashi, 1966)、石垣島と西表島にはイシガキクワカミキリ(A. yayeyamai Breuning, 1976)が分布しており、代置関係にあるものと考えられる。
季節:
性差: ほぼ同型。♂は♀より一回り小さく、♂の触角は♀よりはるかに長い。
生態 環境: 樹上性。里山、二次林など広葉樹を中心とした各種樹林とその林縁のほか、畑地、公園など。比較的明るい環境を好む。幼虫は潜材性
発生: 年1回。6月~9月上旬に見られる。
越冬: 幼虫(非休眠)。材内で摂食しながら冬を越す。
行動: 昼行性。夜間燈火に飛来することもある。飛翔は緩やかで、あまり活発でない。産卵の際には樹皮を齧りとり、材内に産卵管を突き立てて1個~数個産付する。幼虫は食樹の幹内部をトンネル状にくりぬき、しばしば樹を枯らすことがある。
食性 幼虫: 食植性/(生木)。クワ科ヤマグワイチジクなど。主幹あるいは太い枝に穿孔する。
成虫: 食植性/樹皮(若枝)。クワ科ヤマグワイチジクなど。
類似種:
保 護: 群馬:VU
その他: かつてはクワの大害虫として有名であったが、養蚕の衰退と同じくクワ類を食樹とするキボシカミキリの台頭に伴って個体数は減少している。
天敵 捕獲: 成虫は大型の造網性クモ類。幼虫は捕食性コメツキムシ類の幼虫、カッコウムシ類、ヒラタムシ類。
寄生:

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