シロスジカミキリ

白条髪切虫 (カミキリムシ科)


2003/6/24 富津市東大和田 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 わが国に分布するカミキリムシで、ミヤマカミキリと並ぶ最大種。和名は中胸背面や前翅、胸部~腹部側縁に白色条斑紋があることによるが、生きているときはこの部分は黄白色であることから、標本によって命名されたものと考えられている。捕まえると胸部をこすり合わせてギイギイと発音する。体が大きい分、その音も大きいが、天敵の鳥類などにはあまり効果がないようで、カブトムシなどと一緒に腹部をかじりとられた無残な本種の死体を見かけることも多い。これはほとんどの場合街中ではカラス、郊外ではフクロウの仲間のアオバズクの仕業であるという。
 写真は富津市東大和田で、6月下旬の正午過ぎ、アラカシの枝にとまる♀である。色調や斑紋には性差はないが、♂は♀より一回り小さく、触角が♀よりはるかに長いので区別は難しくない。また、国内にこれと似た種はいないので見間違えることはないだろう。
 年1回、5月中旬~8月中旬にかけて姿を見せる。ほぼ完全な夜行性で、日中は食樹の樹上で休息していることが多い。交尾産卵は夜間に行われ、♀は産卵の際に食樹の樹皮を直径3㎝ほどの大きさにかじりとり、その中に産卵管を差し込んで産み付ける。幹をかじり始めてから産卵するまでおよそ7分~8分を要し、一晩で10個程度の卵を産む。孵化した幼虫は幹の内部をトンネル状に食い進み、2回越冬する。その後蛹室内で蛹化し、秋に羽化、そのまま蛹室内で1回冬を越して、ようやく翌年の晩春に野外に出るという。



シロスジカミキリ (カミキリムシ科 フトカミキリ亜科 シロスジカミキリ族)
Batocera lineolata  Chevrolat, 1852
分布 国内: 本州、四国、九州。平地~低山地に汎く分布する。島嶼では佐渡、壱岐、対馬、五島列島、種子島、屋久島、奄美大島、徳之島などで記録されている。
県内: 市街地を除き、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、済州島、中国大陸、台湾に分布する。標式産地は上海。
変異 形態: 地理的変異、個体変異共に知られていない。
季節:
性差: ほぼ同型。♂は♀より一回り小さく、♂の触角は♀よりはるかに長い。
生態 環境: 樹上性。里山、二次林など広葉樹を中心とした各種樹林とその林縁のほか、社寺境内、果樹園など。幼虫は潜材性
発生: 年1回。5月~8月に見られる。幼虫期間は2年で、サイクルは2年1越型
越冬: 幼虫(非休眠)・成虫。幼虫は材内で摂食しながら2回冬を越し、秋に羽化した成虫は蛹室内でそのまま1回越冬する。
行動: 夜行性。飛翔は緩やかで、あまり活発でないが、夜間燈火に飛来することがある。産卵の際には顕著な産卵痕跡を残す。幼虫は食樹の幹内部をトンネル状にくりぬき、しばしば樹を枯らすことがある。
食性 幼虫: 食植性/(生木)。ブナ科コナラクヌギ、ミズナラ、クリアラカシアカガシシラカシマテバシイスダジイが主。ほかにカバノキ科ヤシャブシ類、ヤナギ科ヤナギ類、ツバキ科のヤブツバキ、ノウゼンカズラ科のキリなどが知られる。主幹に穿孔する。
成虫: 食植性/樹皮(若枝)。ブナ科コナラクヌギ、ミズナラ、クリアラカシアカガシシラカシマテバシイスダジイなど。
類似種:
保 護: 千葉市:、群馬:NT
その他: 県北部では減少傾向が強い。クリの大害虫として有名。
天敵 捕獲: 成虫は大型の造網性クモ類。幼虫は捕食性コメツキムシ類の幼虫、カッコウムシ類、ヒラタムシ類。
寄生:

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