トラフカミキリ

虎斑髪切虫 (カミキリムシ科)


2002/8/9 館山市国分 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のカミキリムシ。スズメバチ類への擬態例としてきわめて著名な種。色や斑紋のみならず、動きもすばやく、飛び方や羽音までそっくりという徹底ぶりである。和名はその斑紋に由来する。
 写真は館山市国分で8月上旬の正午過ぎ、畑の境に植えられたクワに産卵する♀である。♂は♀よりやや細身で小さく、触角が♀より長いので区別は難しくない。オオトラカミキリに酷似するが、本種のほうが一回り小さく、前翅の黒褐色条斑紋が少ないので区別は簡単である。また本種のほうがはるかに個体数が多い。
 年1回、6月~8月に姿を見せる。完全な昼行性で、クリやイボタノキ、ヤブガラシなど多くの花に集まり吸蜜するが、その頻度はあまり多くないという。幼虫はヤマグワやリンゴなどの生木に寄生し、根を好んで食べるため、寄生した樹を枯死させてしまうことがある。古くからクワの害虫として知られ、別名クワトラムシとも呼ばれている。



トラフカミキリ (カミキリムシ科 カミキリ亜科 トラカミキリ族)
Xylotrechus chinensis  Chevrolat, 1852
分布 国内: 北海道、本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では種子島、屋久島以南の南西諸島で記録されている。
県内: 市街地を除き、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、中国大陸(東北部~華中)、台湾に分布する。 標式産地は中国。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。個体変異も軽微。
季節:
性差: ほぼ同型。一般に♀は♂よりやや大型で、♂の触角は♀よりはるかに長い。
生態 環境: 樹上性。広葉樹を中心とする各種樹林とその林縁、畑地、桑畑、水田周辺など。幼虫は潜材性
発生: 年1回。6月~8月に見られる。
越冬: 幼虫(非休眠)。材内で摂食しながら冬を越す。
行動: 昼行性。活動は活発で、行動は敏捷。飛翔の際には前翅をほとんど開かずに後翅のみで飛ぶ。日中盛んに飛翔し、多くの花を訪れる。
食性 幼虫: 食植性/(生木)。クワ科ヤマグワヒメコウゾのほか、バラ科のリンゴなど。主幹に穿孔する。
成虫: 食植性/花蜜。クリ、イボタノキ、スイカズラ、ガマズミ、ノリウツギ、ヤブガラシ、セリ、シシウドなど多くの花に集まるが頻度はあまり多くない。
類似種: オオトラカミキリに似る。
保 護: 群馬:NT
その他: 普通種だが個体数はそれほど多くない。
天敵 捕獲: 成虫はムシヒキアブ類、カマキリ類のほか、造網性クモ類。幼虫は捕食性コメツキムシ類の幼虫、ヒラタムシ類、カッコウムシ類など。
寄生:

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