ウバタマムシ

姥玉虫 (タマムシ科)


 2002/10/31 館山市滝川 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 大型のタマムシ。タマムシと比べると地味な色調だが、胴金色に輝く翅は渋い趣きがある。知らない人は本種をタマムシの♀と勘違いすることがあるが、完全な別種である。かつてはタマムシと同様に本種も、着物が増えるという縁起をかついで、長持や箪笥に入れる習俗があった。
 写真は、館山市滝川で10月下旬の正午過ぎ、アカマツの幼木の梢にとまる♂である。外見上は♂♀がほぼ同型だが、タマムシと同じように腹端の形状が異なるので、手にとって見れば区別は難しくない。また、本種は通常小楯板を欠くが、稀に点状に出現することがある。
 マツを中心とする針葉樹林の普通種だが、色調が保護色となって結構見つけにくい。幼虫はアカマツやクロマツの新鮮な枯死木や伐採木の材部を食害するため、本種によって樹が枯れることはない。ただ、近年山林の荒廃により間伐が行われなくなってから、本種もやや個体数の減少傾向が見られる。産卵から羽化まで2年~3年を要するといわれる。



ウバタマムシ 原名亜種 (タマムシ科 タマムシ亜科 タマムシ族)
Chrysochroa japonica japonica  (Gory, 1840)
分布 国内: 本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では佐渡、伊豆諸島(八丈島)、小笠原、隠岐、対馬、屋久島、種子島、南西諸島。
県内: 市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。
国外: 朝鮮、中国大陸に分布する。
変異 形態: 奄美大島以南の南西諸島(ssp. oshinmana Nonfried, 1890)のほか、、トカラ宝島(ssp. takarajimana Y.Kurosawa, 1974)、久米島(ssp. kumejimana Y.Kurosawa, 1974)、八重山諸島(ssp. miwai Y.Kurosawa, 1974)が別亜種とされる。また、近畿地方、佐渡、四国、九州以南の南西諸島には近似の別種サツマウバタマムシ(C. yunnana satzumae Lewis)が分布する。このほか東京(高尾山)と鹿児島では、通常では欠けている小楯板が点状に表れる型(ab.scutellata Thery)が稀に出現し、県内では市原市域から記録されている。
季節:
性差: ほぼ同型。腹端の形状が♀は円弧状、♂は楔形にくぼむ。
生態 環境: 針葉樹林、食樹の多く自生する樹林。二次林(里山)や海岸の防風林などに多い。
発生: 年1回。6月~10月下旬頃まで見られる。卵~成虫まで2年~3年かかる。
越冬: 成虫幼虫。幼虫は非休眠。
行動: 昼行性。飛翔はやや敏速だが、歩行は緩やか。♂♀共にあまり活発に活動することはなく、マツ類の樹幹でじっとしていることが多い。
食性 幼虫: 食植性/朽木マツ科マツ属アカマツクロマツのほか、ゴヨウマツ類。衰弱木もしくは新鮮な倒木の材部。
成虫: 不明。
類似種:
保 護: 神奈川県:
その他: タマムシの♀ではない。
天敵 捕獲: 幼虫は捕食性コメツキムシ類の幼虫やヒラタムシ類、成虫は造網性クモ類。
寄生:


メイン