タマムシ

玉虫、吉丁虫 (タマムシ科)


2001/8/22 木更津市菅生 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 大型のタマムシ。日本の昆虫の中で最も美しいものを挙げるとすれば、半数以上の人は本種を推薦するだろう。美麗昆虫の代名詞ともいえる種である。奈良法隆寺の国宝、玉虫厨子に本種の前翅が多量に用いられていることは非常に有名。また、昔から本種を長持や箪笥に入れる習俗があるが、これは着物が増えるという縁起を担いだものである。「かたつむり」が子供の頃は結構数が少なかったような気がするが、ここ2年程やや大きな発生が見られた。
 写真は、木更津市菅生で8月下旬の正午過ぎ、林縁の生垣にとまる♂である。外見は概ね雌雄同型で、背面からだと区別が難しいが、♂は♀よりやや細身で複眼が大きいこと、また腹端の形状が異なるので、手に取ってみれば区別はそれほど難しくない。
 盛夏の日中最も暑い時間帯に限り、太陽光に金緑色の翅をきらめかせ、十字形になってエノキの梢上を飛ぶ。これはほぼ全て♀を探す♂だが、この翅の光が鳥などの外敵に対する警戒色になっているようで、群れを成して飛び回ること も少なくない。♀はあまり移動せずエノキの葉の上でじっとしていることが多い。幼虫は枯れたばかりのエノキの材部を食べるため、本種の食害によって樹が枯れることはない。また産卵から羽化まで3年~4年を要するといわれている。前胸背板の後側縁がやや尖っており、 知らずにここを持つと挟まれて痛い思いをする。



タマムシ 原名亜種 (タマムシ科 タマムシ亜科 タマムシ族)
Chrysochroa fulgidissima fulgidissima  (Schonherr, 1817)
分布 国内: 本州、四国、九州。平地~低山地に汎く分布する。島嶼では佐渡、対馬、屋久島、種子島。
県内: 一部の市街地を除き、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島(南部)、中国大陸(華中・華南)、台湾に分布する。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていないが、奄美大島以南の南西諸島には別亜種(ssp. alternans Waterhouse, 1888)を産する。
季節:
性差: ほぼ同型。腹端の形状が♀は円弧状、♂は楔形にくぼむ。
生態 環境: 食樹の多く自生する広葉樹林。二次林(里山)に多く、原生林には少ない。
発生: 年1回。6月~9月に見られ、7月下旬~8月に多い。卵~成虫まで3年~4年かかる。サイクルは2年1越型と考えられる。
越冬: 幼虫(非休眠)。
行動: 昼行性。飛翔は敏速だが、歩行はそれほど速くない。♂は晴天時の正午前後に、集団で活発に食樹の樹冠付近を飛翔して♀を探す。♀はあまり活動せず、食樹の葉上などでじっとしていることが多い。
食性 幼虫: 食植性/ニレ科のエノキエゾエノキケヤキムクノキが主。ほかにバラ科のサクラ類、カキノキ科のカキノキなどの衰弱木や倒木の材部。比較的生木に近い材を好む。
成虫: 食植性/ニレ科エノキを食べることがあるが、稀。
類似種:
保 護: 千葉県:、千葉市:、東京都:(南多摩)、神奈川県:、栃木県:注目、群馬県:VU
その他: 長持に入れると着物が増えるという言い伝えがあり、おめでたい昆虫として古来より意識されてきた種。ヤマトタマムシとも呼ばれる。
天敵 捕獲: 幼虫は捕食性コメツキムシ類の幼虫やヒラタムシ類、成虫は造網性クモ類。
寄生:


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