カブトムシ

兜虫 (コガネムシ科)


2003/8/12 千葉市緑区 / NIKON F100+AF MicroNikkor ED200mm F4 /Kodak Kodachrome PKR64

 子どもたち(最近は大人も?)の愛玩昆虫のナンバーワンにして、クワガタムシ類と並び、わが国の雑木林を代表する甲虫。和名は♂の頭部が武士の兜に似ていることに因む。♂は樹液に集まる昆虫の中では最強で、時により人間にすら襲いかかる暴れ者のオオスズメバチをも追い払う。力も強く、脚がかかる場所であれば自分の体重の10倍以上のものも引っ張ることができる。けんかをするときは、頭部の角を相手の腹の下に差しこみ、その自慢の力で軽くすくい投げてしまう。まさに雑木林の王者といえよう。
 写真は、千葉市緑区で8月上旬の正午過ぎ、湿地のネコヤナギの樹液を吸う比較的大型の♂である。♂は大きさに著しい個体変異があり、小さな個体では頭部の角状突起が小さく先端の分枝がなくなるものもいる。♀は頭部と前胸部の角状突起がなく、全身に微毛を密生するので区別は簡単。また国内にこれと似た種はいないので見間違えることはない。
 県内では6月の終わりから7月始めごろに姿を現し、8月下旬まで見られるが、一般に成虫の寿命は短く2週間~3週間程。セミ類とほとんど変わらないその短い期間に交尾産卵して子孫を残さねばならないので大変である。一般には夜行性で♂♀ともに街灯や家の明かりによく集まる。そのため「かたつむり」が子供だった頃は、特に蒸し暑い夜が明けると、たいてい網戸に本種が張りついていたものだったが、開発などによってかなり数が減ってしまい、ここ15年程そんなこともなくなってしまった。最近、カブトムシやクワガタムシは店で買うものだと思っている子供たちも多いようだが、とても残念なことだと思う。



カブトムシ 日本本土亜種 (コガネムシ科 カブトムシ亜科 カブトムシ族)
Trypoxylus dichotomus septentrionalis  Kono et Y.Kurosawa, 1985
分布 国内: 本州、四国、九州。平地~山地まで汎く分布する。島嶼では佐渡、隠岐、壱岐、対馬、五島列島、甑島、屋久島、奄美大島。平地~山地に汎く分布する。近年北海道と沖縄本島に人為的に放流され定着した。
県内: 一部の市街地を除き、全域に汎く棲息する。
国外: 朝鮮半島、済州島、中国(華北・華中)に分布する。原名亜種は中国大陸産。本亜種は日本固有。
変異 形態: 沖縄本島(伊平屋・久米島などを含む)産は別亜種(ssp. takarai (Kusui, 1976))とされる。♂は大きさによって著しい個体変異を示す。また、体色は赤褐色~黒褐色まで変異が大きい。
季節:
性差: 異型。♂は頭部と前胸の角状突起が発達する。また、♀は全身に微毛を密生する。
生態 環境: 樹上性。クヌギ、コナラ、ミズナラなどを中心とした二次林、遷移林。ヤナギ類の多く自生する湿地など。幼虫は地中性で、林床の腐葉土もしくは畑地周辺などの堆肥中に棲息する。
発生: 年1回。6月中旬~9月上旬に見られ、7月中旬~8月中旬が盛期。
越冬: 幼虫(2齢~3齢)。落葉樹林の腐植土層中や堆肥中などで、休眠せずにすごすが、他の時期と比較してかなり深い場所に潜っている。
行動: 基本的には夜行性で、日中は樹液の出る広葉樹の根際の落ち葉下や周囲の樹上の高い位置で休息しているが、日中も活動している場合も少なくない。樹液に集まる昆虫の中での序列は最も高い。♂は性質が荒く、別の♂が側に来るとすぐにけんかを始める。交尾産卵は主に夜間に行われるが日中の場合もある。♂♀共に燈火によく集まる。
食性 幼虫: 食植性/腐植土朽木。落葉樹の腐植土や堆肥、十分に腐朽した広葉樹の埋れ木のほか、醗酵した牛糞なども食べる。
成虫: 食植性/樹液。クヌギやコナラ、ミズナラなどのナラ類、ヤナギ類が主で、他にカシ類、シイ類、 稀にアカメガシワ、エノキの樹液にも集まる。
類似種:
保 護: 指定されていない。
その他: 子どもたちの愛玩昆虫の代表格で、飼育や繁殖も容易。近年は大量に養殖されたものが安く販売されているが、その安易な放流により、従来生息していなかった北海道や、固有の別亜種が生息する沖縄地方などで勢力を広げており、問題になっている。
天敵 捕獲: 弱った幼虫はハサミムシ類、オサムシ類などに狩られることがある。成虫の野外での最大の天敵は、人間を除くとカラスとアオバズクで、腹部をかじりとられた無残な個体を見ることも多い。
寄生:


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