ハンミョウ

斑猫 (ハンミョウ科)


2004/8/8 11:30 館山市大神宮(県立館山野鳥の森) / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 やや大型。晴天時、日当たりのよい林道などを歩いているとき、鮮やかな翅を煌かせて前へ前へとちょっとずつ飛ぶ虫がいたら、ほぼ間違いなく本種である。この習性があたかも道案内をしているように見えることから、古人は「ミチオシエ」、または「ミチシルベ」などと呼んだ。また、本種の幼虫は、巣穴にニラの葉などを差込むとこれに食いついて釣り上げられることから、「ニラ虫」などと呼ぶ地方もある。
 写真は、県立館山野鳥の森で8月上旬の正午前、陽だまりで獲物を待ち構える♂である。性差は斑紋などに表れず、♀が♂より若干大型になる程度なので区別はやや難しい。県内に分布するハンミョウ類ではもっとも鮮やかな種で、他はすべて地味な色調なので見間違えることはないだろう。
 獰猛で貪欲な捕食性の甲虫であり、アリやイモムシなど地上性の昆虫や、ダンゴムシ、ミミズなどの小動物のほか、地上にとまったアブやハチなども巧みに捕らえ、発達した大顎で噛み砕いてしまう。本種を含めハンミョウ類はすべて地上性で、樹上などに上ることはほとんどない。幼虫は普段は堅い地面に竪穴を掘ってその中に潜み、魚眼レンズを具えた顔だけを出して周囲をうかがっているが、近くを昆虫や小動物が通りかかると一瞬のうちに伸び上がって捕らえてしまうという離れ業の持ち主である。かつては平地~低山地の林道などでは必ずといっていいほど見かけた普通種であった。県南部ではまだ個体数も多いようであるが、特に県北部では林道の舗装化や都市化などによってめっきり数が減ってしまったようだ。



ハンミョウ 日本亜種 (ハンミョウ科 ハンミョウ亜科)
Cicindela (Sophiodela) chinensis japonica  Thunberg, 1781
分布 国内: 本州、四国、九州。平地~低山地を中心に汎く分布する。島嶼では対馬、種子島、屋久島、沖縄本島。
県内: 市街地を除き全域に汎く棲息するが、北部では減少中。
国外: 朝鮮半島、中国大陸に分布する。原名亜種は大陸産。本亜種は日本固有。
変異 形態: 沖縄本島産は別亜種(ssp. okinawana Nakane, 1957)とされる。対馬産は体型と斑紋が若干異なっているが、亜種区分には至っていない。このほか色彩の個体変異が知られる。
季節:
性差: ほぼ同型。♀は♂より若干大型。
生態 環境: 地上性。下草の少ない疎林の林床や林道など。日当たりのよい乾燥した環境を好む。幼虫は半地下性
発生: 年1回。7月~9月及び翌5月に見られる。
越冬: 成虫。日当たりのよい砂混じりの崖地の露頭に坑道を掘り、集団で越冬する。
行動: 昼行性。飛翔は比較的敏速で、活動は活発。人の気配には敏感で、なかなか近寄れない。♂は♀を見かけると、♀の胸部を大顎ではさんで押さえつけ、そのままの姿勢で交尾する。ほぼ完全な地上性で、樹上などに上ることはない。幼虫は半地下性。地表に縦穴を掘り、顔面だけを出してその中に潜む。個眼は魚眼レンズで、周囲を通過する小動物を、伸び上がって捕獲する。老熟すると土中に土窩をつくり、その中で蛹化する。
食性 幼虫: 捕食性。地上性の小昆虫や小動物を食べる。
成虫: 捕食性。地上性あるいは飛翔性の小昆虫や小動物を食べる。体外消化を行うため、ミミズやイモムシなど体液の多い獲物を好む傾向がある。
類似種:
保 護: 千葉市:、栃木:、群馬:VU
その他: 都市化に伴い、県北部では個体数が激減している。
天敵 捕獲:
寄生:

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