キイロヤマトンボ

黄色山蜻蛉 (エゾトンボ科)


2002/7/29 木更津市菅生 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4 /Kodak Kodachrome PKR64

 細身で均整の取れたやや大型のヤマトンボ。成熟した♂が川の上空を悠々とパトロールする姿を稀に見かける。姿形からオニヤンマと間違えることがあるが、翅胸部の地色が金緑色であることからエゾトンボの仲間であることがわかる。
 写真は、木更津市菅生で7月下旬の正午過ぎ、林縁の墓地に植えられた潅木の下枝に止まって休息する亜成熟♂である。雌雄同型で、♂♀共に未成熟個体は複眼がややくすんだ緑色だが、成熟すると鮮やかなエメラルドグリーンになる。同属のコヤマトンボに酷似するが、これより腹部が細長く、腹部第7節の黄色斑が大きく後ろに伸び、第3節の黄色斑が側縁で切れているので区別はそれほど難しくない。
 日中は林内などの薄暗い場所で下枝などにぶら下がって休息し、主に早朝と夕方に活発に飛び回る。ヤンマ類と同様に強い黄昏飛翔性を示す。コヤマトンボと似たような環境に棲息するが、山地性の傾向を示し、写真の個体のように人里近いところに出てくることは極めて稀である。また、全国的に見ても分布は局地的で個体数も少な いことから、環境省レッドデータブックでVU(絶滅危惧Ⅱ類)に指定されている。また、県内ではもともと個体数が少ない上に開発によって特に減少傾向が著しい種であることから、千葉県レッドデータブックにおいてA(最重要保護生物種)に指定されている。



キイロヤマトンボ (エゾトンボ科 ヤマトンボ亜科)
Macromia daimoji  Okumura, 1949
分布 国内: 本州(茨城・埼玉以南)、九州(福岡・宮崎・鹿児島)。島嶼での記録はない。
県内: 房総丘陵地域にのみ棲息する。
国外: 朝鮮(南部)に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。
季節: 知られていない。
性差: 同型。腹端の尾部付属器を観察する必要がある。
生態 環境: 流水性。低山地~丘陵。河川上流域~中流域。底質は砂礫。水質はきれいな水。周囲に樹林の多いやや薄暗い環境を好む。
発生: 年1回。6月~9月に見られる。幼虫期間は2年~3年程度。
越冬: 幼虫
行動: 昼行性(黄昏)。静止時は翅を開き、枝などにぶら下がってとまる。飛翔は敏速。羽化直後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、付近の樹林などで栄養飛翔を行う。成熟した♂は水辺に戻り、水域の上を盛んに飛び回って♀を探す。♀を見つけると付近の樹林に♀をつれてゆき、樹上の高い位置で交尾することが多い。♀は単独で産卵する。
食性 幼虫: 捕食性。若齢幼虫はミジンコ類、中齢以降はユスリカ類やハナアブ類 、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類などの幼虫、両生類幼生(オタマジャクシ)、小型魚類(メダカ、クチボソなど)。
成虫: 捕食性。小型~中型の鱗翅目、ハエ、ユスリカ、アブ、小型のトンボ類などの飛翔性昆虫のほか、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類など。
類似種: コヤマトンボに酷似するが、体型と腹部の斑紋が若干異なる。
保 護: 環境省:VU、千葉県:A、埼玉県:CR(大宮台地・中川・加須低地/EX)、栃木:DD
その他: 全国的にみても分布は局地的で個体数も少ない。
天敵 捕獲: 大型のヤンマ類のほか、大型の造網性クモ類。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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