マユタテアカネ

眉立茜蜻蛉 (トンボ科)


2002/9/27 館山市大神宮(県立館山野鳥の森) / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4 /Kodak Kodachrome PKR64

 やや小型のアカトンボ。和名は前額に太い眉毛のような黒斑(眉斑)を持つことに因む。前額に眉斑をもつ種は県内に4種いるが、その中で最も眉が太く、濃い。
 写真は、県立館山野鳥の森で9月下旬の正午過ぎ、水辺に突き出した棒の先にとまり♀を待つ成熟♂である。未成熟時は雌雄同型もしくは異型。成熟した♂は腹部が赤唐辛子のように赤く、翅胸部は灰褐色に変わるが♀はあまり色が変わらない。♀は多型でノシメトンボのように翅端に褐色帯を持つ「端斑型」のほか、無斑のものもいる。 ただし♂は全て無斑型のみである。ヒメアカネに似るが、やや大型で翅胸部の斑紋が異なるので区別はそれほど難しくない。
 本種も盛夏の日中には、とまるときに腹部を太陽のほうに向けて避暑の姿勢をとる。主に丘陵地に棲息し、周囲に木立が多く、水面の開けた抽水植物や浮葉植物が豊富な明るい池沼を好み、リスアカネと混生することが多いが本種のほうがはるかに個体数が多い。羽化後の未成熟個体は、羽化水域に近い雑木林などの薄暗い林縁などで栄養飛翔を行う。成熟すると水辺に戻り、♂は水辺に突き出た杭や抽水植物の先端などにとまって縄張りを確保し、♀を待つ。産卵は♂♀連結して行う。基本的には普通種で県内全域に分布するが、個体数はそれほど多くないようだ。



マユタテアカネ 原名亜種 (トンボ科 アカネ亜科)
Sympetrum eroticum eroticum  (Selys, 1883)
分布 国内: 本土全域。島嶼では対馬、種子島、屋久島。
県内: 市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。
国外: 沿海州(ウスリー)、中国(東北部~華南)に分布する。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。♀は無斑型(♀f.-eroticum)のほか端斑型(♀f.-fastigiata)が知られる。
季節:
性差: 未成熟個体は異型もしくは同型。成熟個体は異型。成熟した♂は腹部が赤くなるが、♀は褐色となる。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵。水辺に抽水植物などの水生植物の多い池沼。底質は砂泥。水質はやや濁った陸水。樹林に囲まれた薄暗い環境を好む。
発生: 年1回。6月上旬~11月中旬にみられる。
越冬:
行動: 昼行性。静止時は翅を開いて平らにとまる。飛翔は比較的緩やかで移動性はあまりない。羽化後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、付近の林縁などで栄養飛翔を行う。成熟した♂は水辺に戻り、抽水植物先端などにとまって♀を待ち、♀を 見つけると直ちに交尾する。産卵方法は連続打水産卵で♂♀連結して行う場合が多い。
食性 幼虫: 捕食性。若齢幼虫はミジンコ類、中齢以降はユスリカ類やハナアブ類 、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類などの幼虫、両生類幼生(オタマジャクシ)など。
成虫: 捕食性。小型~中型の鱗翅目、ハエ、ユスリカ、アブ、小型のトンボ類などの飛翔性昆虫のほか、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類など。
類似種: ヒメアカネに似るが、翅胸部の斑紋が異なる。
保 護: 千葉市:、東京都:(区部)
その他: 普通種ではあるがナツアカネやノシメトンボに比べると個体数はそれほど多くない。
天敵 捕獲: カマキリ類、ヤンマ類やサナエトンボ類 など大型のトンボ類のほか、造網性クモ類など。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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