アキアカネ

秋茜蜻蛉 (トンボ科)


2002/4/14 山武郡芝山町小池 / NIKON NewFM2T + AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 中型のアカトンボ。アカトンボの中でナツアカネと共に最もポピュラーな種のひとつ。季節的に発生地の平地と高地の間を大移動することが知られているが、これは本種の体温が40℃前後と高く、外気温が30℃を超えると生存できないためである。
 写真は、山武郡芝山町小池で10月下旬の午後、生垣の枝先にとまって休む成熟♂である。未成熟個体は雌雄同型だが、成熟すると♂は腹部が真っ赤になるので♂♀の区別は簡単。ナツアカネに似るが 、これよりやや小型で翅胸部の斑紋が若干異なり、成熟した本種の♂は腹部のみが赤くなる。また、♀は腹部側縁の黒色部の形状が異なるのだが、 特に未成熟の個体などはじっくり観察しないと区別が難しい。また、成熟♂はコノシメトンボに似るが、本種は翅端に褐色の帯を持たないので簡単に見分けられる。
 初夏に平地の水田などで羽化した個体は盛夏を高原などの涼しい場所で過ごし、また秋に生まれた田んぼに帰ってくる。ただ県内では避暑に適した高原がないため、夏の盛りに本種の姿を見ることはほとんどない。水田の乾田化にも適応したが、稲作品種の早稲化や水路の護岸化などは対応しきれず、近年はやや数が減ったようである。黄金色に色づいた稲穂の海を本種が群れ飛ぶ姿はまさに秋の風物詩。大切にしたいものである。



アキアカネ (トンボ科 アカネ亜科)
Sympetrum frequens (Selys, 1883)
分布 国内: 本土全域。島嶼では佐渡、対馬。九州では稀。
県内: 一部の市街地を除き、汎く全域に棲息する。
国外: 朝鮮、中国東北部、沿海州(ウスリー・アムール)、樺太、カムチャツカに分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。
季節:
性差: 未成熟個体は同型。成熟個体は異型。成熟すると♂は腹部が赤化するが、♀は褐色。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵。水辺に抽水植物などの水生植物の多い池沼や水田、湿地。底質は泥。水質はやや濁った陸水。開けた明るい環境を好む。
発生: 年1回。6月~12月上旬まで見られるが、県内では夏季にほとんど姿を消す。
越冬:
行動: 昼行性。静止時は翅を開いて平らにとまる。飛翔は比較的敏速。移動性は強く、季節的に発生地の平地と山地を往復飛翔することが知られる。羽化後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、山地などに移動して栄養飛翔を行う。成熟した♂は平地の水辺に戻り、抽水植物先端などにとまって♀を待ち、♀を見つけると直ちに交尾する。産卵方法は連続打空産卵で♂♀連結して行う場合が多い。
食性 幼虫: 捕食性。若齢幼虫はミジンコ類、中齢以降はユスリカ類やハナアブ類 、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類などの幼虫、両生類幼生(オタマジャクシ)など。
成虫: 捕食性。小型~中型の鱗翅目、ハエ、ユスリカ、アブ、小型のトンボ類などの飛翔性昆虫のほか、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類など。
類似種: ナツアカネに似るが、翅胸部の斑紋が異なる。
保 護: 指定されていない。
その他: アカネ属のなかではナツアカネと共に最普通種のひとつだが、近年若干の減少傾向にある。
天敵 捕獲: カマキリ類、ヤンマ類やサナエトンボ類 など大型のトンボ類のほか、造網性クモ類など。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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