ナツアカネ

夏茜蜻蛉 (トンボ科)


2002/9/29 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4 /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のアカトンボ。アカトンボの中で最もポピュラーな種のひとつ。♂は成熟すると頭部~腹端まで真っ赤になり、まさに唐辛子に翅が生えたようになる。♀は成熟してもあまり赤くならず、褐色系の色となる。
 写真は、千葉市緑区で10月下旬の午後、水田の脇に張り出したサクラの枝にとまって♀を待つ成熟♂である。未成熟個体はアキアカネに酷似していて、翅胸部の斑紋と腹部側縁の黒色部の形状が異なるのだが、じっくり観察しないと区別は結構難しい。またコノシメトンボに似るが、本種は翅の端部に褐色斑がないので区別は簡単。アキアカネと 似た生態を持つが、本種のほうが成熟は若干早く、9月上旬にはもう真っ赤に成熟した♂を見かけることがある。
 日当たりのよい明るい湿地や池沼、特に水田などを好み、アキアカネと混生することが多い。初夏に平地の水田などで羽化したあと水辺を離れて栄養飛翔を行うが、あまり遠くまでは移動せず、県内にとどまっている。真夏の日中には、腹部をまっすぐに太陽に向けて避暑の姿勢をとる個体を多く見かける。産卵は連結したまま行うことが多いが、♀が単独で行うこともある。その場合は♂は産卵する♀の周囲を飛びながら警護し、他の♂に♀をとられないように監視する。本種も 圃場整備などによる水田の乾田化に適応したが、アキアカネと同様に品種の早稲化や水路の護岸化などには対応しきれず、近年やや数が減ったようである。



ナツアカネ (トンボ科 アカネ亜科)
Sympetrum darwinianum (Selys, 1883)
分布 国内: 本土全域。島嶼では佐渡、伊豆諸島、屋久島、種子島。
県内: 一部の市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。
国外: 朝鮮、台湾、中国(華中)に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。
季節:
性差: 未成熟個体は同型。成熟個体は異型。成熟すると♂は頭部~腹端まで赤化するが、♀は褐色で腹部のみ若干赤化する。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵。水辺に抽水植物などの水生植物の多い池沼や水田、湿地。底質は泥。水質はやや濁った陸水。開けた明るい環境を好む。
発生: 年1回。6月~12月上旬まで見られる。
越冬:
行動: 昼行性。静止時は翅を開いて平らにとまる。飛翔は比較的敏速。移動性はやや強く、季節的に発生地の平地と山地を往復飛翔することが知られるがアキアカネのような著しい移動は見られない。羽化後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、山地などに移動して栄養飛翔を行う。成熟した♂は平地の水辺に戻り、抽水植物先端などにとまって♀を待ち、♀を見つけると直ちに交尾する。産卵方法は連続打空産卵で♂♀連結して行う場合が多い。
食性 幼虫: 捕食性。若齢幼虫はミジンコ類、中齢以降はユスリカ類やハナアブ類 、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類などの幼虫、両生類幼生(オタマジャクシ)など。
成虫: 捕食性。小型~中型の鱗翅目、ハエ、ユスリカ、アブ、小型のトンボ類などの飛翔性昆虫のほか、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類など。
類似種: アキアカネに似るが、翅胸部の斑紋が異なる。
保 護: 東京都:C(区部)
その他: アカネ属のなかではアキアカネと共に最普通種のひとつだが、近年若干の減少傾向にある。
天敵 捕獲: カマキリ類、ヤンマ類やサナエトンボ類 など大型のトンボ類のほか、造網性クモ類など。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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