ショウジョウトンボ

猩々蜻蛉 (トンボ科)


2001/7/27 木更津市中尾 / NIKON NewFM2T + AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 中型のトンボ。真夏の日中に池の上などを敏捷に飛び回る真っ赤なトンボがいたらほとんどの場合は本種で、夏を代表するトンボのひとつである。和名は、♂が古代中国の伝説 に出てくる大猿の「猩々」のように真っ赤に成熟することに由来する。
 写真は、木更津市中尾で7月下旬の正午過ぎ、水田のため池脇に突き出た棒の先にとまって♀を待つ成熟♂である。羽化したての個体は♂♀共に全身が淡い黄色で柔らかい感じがするが、♂は成熟するにつれて赤みを増し、成熟すると顔面や脚まで含めて全身が真っ赤になる。また、♀はややくすんだ褐色になるので区別は簡単である。なお、県内にこれと似た種はいないので見間違えることはない。一見すると赤トンボの仲間(アカネ亜科)のように見えるが、 成熟する時期が早く、腹部が扁平であるため、簡単に区別できる。
 ♂は池などの上を盛んに飛び回り、♂同士で激しい空中戦を行うことも多いが♀は比較的不活発で、水域のほとりの抽水植物の茎にとまっていることが多い。♂は♀を見つけると直ちに飛びながら交尾するが、ほんの数秒で分かれて♀は打水産卵し、♂はその上空で♀を警護する。産卵が終わるとまた数秒交尾したあと♀が産卵する、という行動を繰り返す。幼虫は水底の藻の中などに潜んでいるため、池の掃除で藻を取り去ってしまうと簡単に絶滅してしまうようだ。



ショウジョウトンボ 日本亜種 (トンボ科 アカネ亜科)
Crocothemis servilia mariannae  Kiauta, 1983
分布 国内: 本州、四国、九州。島嶼では佐渡~南西諸島北部。
県内: 一部の市街地を除きほぼ全域に分布するが、やや局地的な傾向を示す。
国外: 原名亜種が台湾、中国南部~インドシナ、マレー、フィリピン、ボルネオ、スマトラなど東洋熱帯に汎く分布。本亜種は日本固有。
変異 形態: 南西諸島以南には原名亜種(ssp. servilia  (Drury, 1770))が分布する。
季節: 知られていない。
性差: 未成熟個体は同型。成熟個体は異型。♂は成熟すると全身が強く赤化する。
生態 環境: 止水性および緩流性。平地~丘陵地。水辺に抽水植物の多い池沼や水田、用水路。底質は砂泥、水質はやや濁ったあるいは濁った陸水。開けた明るい環境を好む。
発生: 年1回。4月~10月上旬に見られる。
越冬: 幼虫。水底の藻などの隙間に潜む。
行動: 昼行性。静止時は翅を開いて平らにとまる。飛翔は敏速だが移動性は弱く、羽化水域を遠く離れることはない。羽化直後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、付近の雑木林などの林縁で栄養飛翔を行う 。成熟した♂は水辺に戻り、水域の上を盛んに飛び回って♀を探す。♀を見つけると直ちに交尾するが、交尾時間は数秒と、きわめて短い。♀は単独で打水産卵するが、♂はその際上空でホバリングし、♀を警護する。
食性 幼虫: 捕食性。若齢幼虫はミジンコ類、中齢以降はユスリカ類やハナアブ類 、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類などの幼虫、両生類幼生(オタマジャクシ)、小型魚類(メダカなど)。
成虫: 捕食性。小型~中型の鱗翅目、ハエ、ユスリカ、アブ、小型のトンボ類などの飛翔性昆虫のほか、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類など。
類似種: ♀はオオキトンボに似るが、大きさと翅脈が異なる。
保 護: 千葉市:、東京都:(区部)
その他:
天敵 捕獲: ヤンマ類や大型のサナエトンボ類、ハエトリグモ類、造網性クモ類。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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