コシアキトンボ

腰空蜻蛉 (トンボ科)


2004/6/5 館山市大神宮(県立館山野鳥の森) / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4 /Kodak Kodachrome PKR64

 やや小型のトンボ。腹部は短く、体の割に翅が大きい。和名は♂の腹部第3・4節の白色部が、飛んでいる本種を下から見上げるとそこだけ空いているように見えることに因む。初夏の午後から夕方に、ため池などの上で♀を求めて飛び回る♂や日中に群れをなして漂うように栄養飛翔する個体を見かけることが多い。県内ではほぼ全域に棲息し、産地はやや局地的な傾向を示すが、環境さえ整えば市街地でも見かけることがある。
 写真は、県立館山野鳥の森で6月上旬の午前中、公園内の池脇の植え込みにとまって休む成熟♂である。未成熟時は雌雄同型だが、♂は成熟すると腹部第3・4節の黄色部が白色に変わるので区別は簡単。また、国内ではこれに似た種はいないので見間違えることはない。
 トンボ科の仲間では珍しく一旦飛び立つと長い間飛び続けてなかなかとまらない習性を持つ。平地~丘陵地の周囲に常緑樹が繁り、抽水植物や浮葉植物の多いやや暗い池や沼を好む。栄養飛翔は風のあまりこない場所に多数の個体が集まって日中に行うことが多く、このときはかなり緩やかに、漂うように飛び続ける。成熟した個体は弱い黄昏飛翔性を示し、夕方に水域の上を敏速に飛び回って♀を探す。縄張り意識はやや強く、他の♂が侵入すると激しく追飛し攻撃する。♀は単独で、水面に浮いている枯れ枝などに腹部を打ち付けて産卵する ことが知られている。



コシアキトンボ (トンボ科 ベニトンボ亜科)
Pseudothemis zonata (Burmeister, 1839)
分布 国内: 本州、四国、九州。島嶼では南西諸島各地に分布が広がっている。
県内: 一部の市街地を除き、ほぼ全域に生息する。
国外: 台湾、中国(華南)~ベトナムに分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。
季節: 知られていない。
性差: 未成熟個体は同型。成熟個体は異型。♂は成熟すると腹部第2・3節が白くなる。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵地。周囲に樹林があり、水面に張り出した場所のある池沼やよどんだ河川、公園の池など。底質は砂泥、水質はやや濁ったあるいは濁った陸水。やや暗い環境を好む。
発生: 年1回。6月~9月中旬に見られる。
越冬: 幼虫
行動: 昼行性。静止時は翅を開きぶら下がってとまることが多い。飛翔はゆるやかだが一旦飛び立つとほとんどとまらずに漂うように飛び続ける。羽化直後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、主に日中に付近の雑木林の林縁などあまり風のない場所で栄養飛翔を行う。栄養飛翔中の個体は群生することが多い。成熟した♂は水辺に戻り、植物などにとまって縄張りを確保して♀を待つ。産卵は主として♀が単独で水面の枯れ枝などに腹端を打ち付けて行うが、♂はその際上空でホバリングし、♀を警護する。
食性 幼虫: 捕食性。若齢幼虫はミジンコ類、中齢以降はユスリカ類やハナアブ類 、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類などの幼虫、両生類幼生(オタマジャクシ)、小型魚類(メダカなど)。
成虫: 捕食性。小型~中型の鱗翅目、ハエ、ユスリカ、アブ、小型のトンボ類などの飛翔性昆虫のほか、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類など。
類似種:
保 護: 千葉市:
その他:
天敵 捕獲: ヤンマ類や大型のサナエトンボ類、ハエトリグモ類、造網性クモ類。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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