ウチワヤンマ

団扇蜻蜒 (サナエトンボ科)


2007/6/30 長生郡長柄町桜谷

 大型種。ヤンマの和名をもつが、両複眼間が離れており、サナエトンボの仲間である。♂の腹部先端付近には両側に広がる扇状の突起があり、これが和名の由来になっている。
 写真は、6月末に長生郡長柄町の農業用ため池のほとりで、枯れた蘆の茎上にとまって縄張りを占有する♂である。同種の他の♂のみならず、別種のトンボが周囲に近づくと、さっと飛び立って追い払い、また同じ場所にとまって♀の来訪を待つ姿を多く見かける。県内には類似する種は知られておいないが、雌雄ともに外見上よく似ているので、野外での識別はやや難しい。
 一般に開放水面の面積が大きい池や沼、湖などの止水域に棲息し、大河川の下流域などで見られることもある。羽化した個体は周囲の草むらや雑木林などで栄養飛翔を行うが、羽化水域からかなり遠くまで拡散することが知られる。成熟すると水域に戻る。産卵は♀が単独で行い、水面の浮遊物に腹端を打ちつけるようにして産卵する。かつてはどこでも比較的多くみられた種であったが、大きな池沼の水質汚濁により、近年、関東地方の市街地周辺では減少傾向が著しく、すでに絶滅した場所も少なくないという。



ウチワヤンマ (サナエトンボ科 ウチワヤンマ亜科)
Sinictinogomphus clavatus (Fabricius, 1775)
分布 国内: 本州、四国、九州。平地を中心に、低山地まで分布する。島嶼では佐渡、壱岐、五島列島(福江)で記録されている。東北北部と九州南部では局地的。
県内: 市街地を除き、汎く全域に棲息するが、近年はやや局地的。
国外: 朝鮮半島、中国大陸(華北・華中)、台湾、トンキンに分布する。
変異 形態: 地理的変異・個体変異共に知られていない。
季節:
性差: ほぼ同型。♀は一般に♂よりやや大きい。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵地。浮葉植物が豊富な池沼で、底質は泥、水質はやや濁った陸水。周囲の草丈が低く、比較的開けた明るい環境を好む。
発生: 年1回。5月下旬~9月に見られる。
越冬: 幼虫
行動: 昼行性。活動はあまり活発でないが、飛翔は敏速。♂は水辺の見晴らしの良い場所に陣取って縄張りを占有し、♀を待つ。産卵は♀が単独で行うが、♂はそのすぐ上空を旋回し、他の♂が近づかないよう警護する。
食性 幼虫: 捕食性。オタマジャクシ等の両生類幼生、メダカなどの小型魚類が中心。
成虫: 捕食性。小蛾類、アブやハエなどの小型~中型飛翔性昆虫。
類似種:
保 護: 千葉県:,千葉市:
その他: 特に県北部を中心に産地は減少しつつある。江戸時代の『蜻蛉譜』に、「グンバイカハサミ」の名で記載されているほか、各地でクルマヤンマ、クルマトンボ、オクルマなどと呼ばれている。
天敵 捕獲: 造網性クモ類。
寄生:

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