コオニヤンマ

小鬼蜻蜒 (サナエトンボ科)


2001/7/15 木更津市菅生 / NIKON NewFM2T + AF MicroNikkor 105mm F2.8 /Kodak Kodachrome PKL200

 体の割に極端に頭部が小さく、後脚が非常に長い、ちょっとスタイルの悪い大型のサナエトンボ。サナエトンボの中では日本最大、世界的にみても横綱クラスで五指に入る大きさだという。和名は体が大きく、やや小ぶりのオニヤンマを思わせることに因む。ヤンマの名がついているが、複眼が左右共に離れ、止まるときにはぶら下がらないのでサナエトンボの仲間であることがわかる。斑紋や大きさから一見すると、コヤマトンボに似るが、頭部がはるかに小さいので簡単に区別できる。初夏に雑木林などで栄養飛翔を行う個体を見かけることが多い。
 写真は、木更津市菅生で7月中旬の正午過ぎ、林縁の低木上にとまる未成熟の♀である。雌雄同型で、斑紋などには差がないが腹端を観察すれば区別は容易。複眼は、未成熟の個体では写真のとおり汚緑色だが、成熟すると、♂♀共に鮮やかな緑色に変わる。飛んでいるときはヤマサナエやキイロサナエなどの大型のサナエトンボに似ていて紛らわしいが、とまってくれれば簡単に見分けられる。
 市街地を除く県内全域に記録されているが、房総丘陵の河川中流域に多く生息している。棲息地での個体数は決して少なくないが、利根川や江戸川流域ではかなり個体数が減少しており、すでに姿を消した地域も多いようである。現在のところ県内に棲息するサナエトンボの中で唯一保護指定を受けていない種だが、いずれ指定を受けることになるのかもしれない。



コオニヤンマ (サナエトンボ科 コオニヤンマ亜科)
Sieboldius albardae Selys, 1886
分布 国内: 本土全域。島嶼では対馬、種子島など。
県内: 市街地を除きほぼ全域に棲息するが、北部では稀。房総丘陵地域には個体数が多い。
国外: 朝鮮、沿海州(ウスリー)、中国(華中)に分布する。
変異 形態: 地理的変異は知られていない。
季節:
性差: 同型。腹端の尾部付属器を観察する必要がある。
生態 環境: 流水性。平地~丘陵地。やや大きな河川渓流域~中流域で、底質は砂泥、水質はやや濁った陸水。開けた明るい環境を好む。
発生: 年1回。5月~9月に見られる。
越冬: 幼虫
行動: 昼行性。静止時は翅を開いて平らにとまる。飛翔は敏速だが移動性は弱い。羽化直後の未熟な個体は♂♀共に、水辺付近の林縁で栄養飛翔を行う。成熟した♂は水辺に戻り、川岸の岩や堤防の上などにとまって縄張りをつくり♀を待つ。♀は空中をホバリングしながら卵塊を排出し、単独で打水産卵する。
食性 幼虫: 捕食性。若齢幼虫はミジンコ類、中齢以降はユスリカ類やハナアブ類 、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類などの幼虫、両生類幼生(オタマジャクシ)、小型魚類(メダカ、クチボソなど)。
成虫: 捕食性。鱗翅目、ハエ、ユスリカ、アブ、小型~中型のトンボ類などの飛翔性昆虫のほか、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類など。
類似種:
保 護: 東京都:A(区部)/B(南多摩・西多摩)
その他: 近年著しい減少傾向が見られる。
天敵 捕獲: 大型の造網性クモ類。
寄生: 不明。

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