オオアオイトトンボ

大青糸蜻蛉 (アオイトトンボ科)


2001/10/10 千葉市緑区 / NIKON FM2-T + AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 和名のとおり大型のイトトンボ。翅胸部と腹部の背面が金緑色に輝くイトトンボのうち、最も数多く見られる種。初夏から初秋にかけて池や沼の周囲の、ヤブカがうようよいるような薄暗い樹林内で栄養飛翔する個体を多く見かける。
 写真は、千葉市緑区で10月上旬の午後、林縁にとまる成熟♂である。成熟しても雌雄同型、大きさなどにも差がないので、見分けるには腹端の生殖器を観察する必要があるが、その形状で簡単に区別できる。アオイトトンボ、コバネアオイトトンボと酷似するが、このいずれよりも大きく、翅胸部の金緑色部の形が異なるので近寄ってみることができれば、見分けるのはそれほど難しくない。またこの両種よりもはるかに個体数が多く、群生しているように見えることがある。
 県内に汎く普遍的に棲息し、個体数も多い。卵は♂♀がつながったまま池や沼に張り出した樹木の枝に産み付けられることが多いことから、そのような環境に果樹が植えられていた場合に影響が出るという理由で、トンボでは珍しく果樹の害虫と言われることもある。が、実害があったという話は聞いたことがなく濡れ衣であろう。晩春から初夏に羽化してしばらくは付近の薄暗い林内や林縁などで栄養飛翔を行い、晩夏~秋に成熟し、晩秋に産卵する。10月下旬には連結して飛ぶカップルを多く見かける。イトトンボ類の中では比較的成虫での寿命が長い種である。



オオアオイトトンボ (アオイトトンボ科 アオイトトンボ亜科)
Lestes temporalis Selys, 1883
分布 国内: 本州、四国、九州。島嶼では壱岐。
県内: 一部の市街地を除き、汎く全域に分布する。
国外: 沿海州(ウスリー)に分布する。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節: 知られていない。
性差: 同型。翅形や斑紋に差がないので、腹端の尾部付属器を観察する必要があるが、容易。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵地。抽水植物や挺水植物の多い池沼で、底質は砂泥、水質はやや濁った陸水。樹林に囲まれた薄暗い環境を好む。 県北部では特に台地の斜面林に多い。
発生: 年1回。7月下旬~11月上旬まで見られる。 卵期は220日~230日。終齢幼虫は10齢で、孵化から50日~66日で羽化する。
越冬: 幼虫
行動: 昼行性。静止時は翅を半開きにして平らにとまる。移動性は弱いが、成虫は水辺を離れて樹林内や林縁にいることが多い。♀は産卵時には水辺に戻り、♂と連結したまま池沼にはりだした樹冠や枝などの植物組織内に産卵する。一般に産卵は夕刻から始まり、深夜に及ぶこともある。
食性 幼虫: 捕食性。ミジンコ類、ユスリカ類やハナアブ類の幼虫。
成虫: 捕食性。小蛾類、ハエ、ユスリカなど小型の飛翔性昆虫。ときにアジアイトトンボなど小型のイトトンボ類も捕食する。
類似種: アオイトトンボ、コバネアオイトトンボと酷似するが、大型で翅胸の斑紋が相違する。
保 護: 千葉市:、東京都:B(区部)
その他: 県内での個体数は多い。
天敵 捕獲: ヤンマ類やサナエトンボ類、大型~中型のトンボ類、ハエトリグモ類、造網性クモ類。
寄生: 不明。

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