アオイトトンボ

青糸蜻蛉 (アオイトトンボ科)


2001/8/14 木更津市中尾 / NIKON FM2-T + AF MicroNikkor 105mm F2.8D /Kodak Kodachrome PKL200

 やや大型のイトトンボ。翅胸部と腹部の背面が金緑色に輝くイトトンボのひとつ。 初夏に池のそばの雑木林でオオアオイトトンボに混じって栄養飛翔する個体を見かけることがあるが、個体数はこれよりはるかに少ない。
 写真は、木更津市中尾で8月中旬の正午過ぎ、林縁でとまる亜成熟♀である。成熟しても雌雄同型で、大きさなどにも差がないので、 区別するには腹端の生殖器を観察しなければならない。オオアオイトトンボ、コバネアオイトトンボと酷似するが、翅胸部の金緑色部の形が異なるので、近づいて観察すれば簡単に区別できる 。また、本種は成熟すると♂♀共に翅胸部と腹部が薄く白粉に覆われるが、この性質を持つのは県内に分布するアオイトトンボの中では本種のみである。
 主に平地の抽水植物の多い、開けた明るい池や沼を好み、似た環境に棲むアオモンイトトンボ、キイトトンボ、ムスジイトトンボなどと混生することがある。未成熟な個体は発生地周辺の薄暗い林縁などで栄養飛翔を行い、発生地から遠く離れることはない。飛翔は緩やかで、とまるときは翅を半開することが多い。もともと分布は局地的であったが、環境改変により個体数の減少が著しい種であり、特に北総地域でその傾向が著しい。アオモンイトトンボやアジアイトトンボと似た環境に棲息するもののそれほど環境変化に適応しておらず、すでに姿を消してしまった産地も多いようだ。



アオイトトンボ (アオイトトンボ科 アオイトトンボ亜科)
Lestes sponsa (Hansemann, 1823)
分布 国内: 北海道、本州、四国、九州。島嶼での記録はない。西日本では産地は局限される。
県内: 市街地を除く全域に棲息するが、北部では稀。
国外: 朝鮮、中国大陸東北部、樺太、シベリア~欧州に分布する。
変異 形態: 若干の地理的変異があり、中部山岳地域産は小型で青みが強く、西日本産は大型で黒味が強い。個体変異は知られていない。
季節: 知られていない。
性差: 同型。翅形や斑紋に差がないので、腹端の尾部付属器を観察する必要がある。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵地。抽水植物や挺水植物の多い池沼で、底質は砂泥、水質はやや濁った陸水。樹林に囲まれた薄暗い環境を好む。
発生: 年1回。7月下旬~10月中旬に見られる。
越冬:
行動: 昼行性。静止時は翅を半開きにして平らにとまる。移動性は弱いが、成虫は水辺を離れて樹林内や林縁にいることが多い。♀は産卵時には水辺に戻り、♂と連結したまま 、池沼に生じる植物の組織内に産付する。水面上、水面下を問わず、完全に潜水して産卵することもある。産卵は日中に行われる。
食性 幼虫: 捕食性。ミジンコ類、ユスリカ類やハナアブ類の幼虫。
成虫: 捕食性。小蛾類、ハエ、ユスリカなど小型の飛翔性昆虫。ときにアジアイトトンボなど小型のイトトンボ類も捕食する。
類似種: オオアオイトトンボ、コバネアオイトトンボと酷似するが、大型で翅胸の斑紋が相違する。 また本種は成熟すると翅胸部と腹部に白粉を吹く。
保 護: 千葉県:、千葉市:、東京都:(区部)/(北多摩・南多摩・西多摩)、神奈川県:
その他: 県内での分布は局地的で個体数は少ない。
天敵 捕獲: ヤンマ類やサナエトンボ類、大型~中型のトンボ類、ハエトリグモ類、造網性クモ類。
寄生: 不明。

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